帰りの馬車
帰りの馬車の中でルシャーナは反省していた。
(私ってば…報酬の次は新作デザートとは…)
皇宮の応接室でのやり取りを思い出す。
次の夜会での鑑定について、報酬三倍を提示されても断れたのに、『デザートのお土産付き(新作デザートあり)』につられ、うっかり承諾してしまった。
大臣たちの策略に嵌ったとはいえ、依頼を引き受けたからには、ちゃんと鑑定して報酬と土産を頂くつもりだ。
(まぁ…お土産に新作デザートは悪くないわね)
お土産でもらったデザートの箱を見ながら、まだ見ぬ新作デザートに思いを馳せ、ルシャーナはうっとりする。
デザートの事を考えているのに、頭の片隅に追いやったセフィラスとの事をなぜか思い出してしまう。
セフィラスと運命の糸が結びついて七色に光り輝いたのは、とても衝撃的な光景だったという事だ。
応接室でセフィラスがくくっと笑った顔が浮かび、ルシャーナは慌てて頭をふるふると振る。
セフィラスとの事を頭の片隅に追いやるために別の事を考える。
(そういえば…フレデリック様の今のお相手はエミリア様だったわ。
もしかしたら、このままエミリア様が『真実の愛』で結婚したい令嬢になるのかも?)
あと約一年でルシャーナはフレデリックから婚約破棄を突き付けられる。
婚約破棄後の生活のため、相性鑑定での依頼料を個人名義の資産として貯めていた。
今回の皇室からの報酬は資産の倍額以上だったため、資産がかなり潤った。
(次の夜会では報酬が三倍で頂けるから…暫く相性鑑定をお休みしようかな~)
この三年でいろいろ勉強はしたが、まだまだ知識が足りないのは自覚している。
相続に関しては早い段階で譲渡が絡んでくるため優先して勉強したが、婚約破棄の部分については難しくて打開策がない。
鑑定を休止して、まとまった時間を取るのもいいかもとルシャーナは思った。
領地の譲渡については、既に契約が締結している。
譲渡を先延ばしに出来ればよかったのだが、何度かフレデリックから催促があり、昨年ついにジョージナス公爵家から譲渡について契約を結びたいと言われてしまったのだ。
やむを得ず領地の一部を譲渡することになったが、譲渡される領地は婚約時はルシャーナ名義で仮譲渡状態、婚姻成立時にルシャーナとフレデリックの共同名義として正式に譲渡されるようにしてある。
婚姻までの間にルシャーナに何かあった場合は、譲渡契約は破棄されルーカスに権利が戻るようにもした。
契約内容に異議を唱えられる事が心配だったが、ジョージナス公爵家からの署名と捺印が貰えた。
(譲渡契約の内容に異議が出なくて、本当に良かった~。
万が一、私に何かあっても領地を取られなくて済むものね)
ふと、窓の外を見ると、例の分岐の近くまで来ていた。
今でもまだ苦手な分岐に、ルシャーナは目をぎゅっと閉じて通り過ぎるのを待つ。
声に出さずゆっくりと20数えてから、目を開けて窓の外を見ると、遠くに屋敷の光が見えてホッとした。
(屋敷に帰ったら、お父様に舞踏会での事を報告しなくちゃ!
皇族からお土産貰ったなんて言ったら驚くかしら)
ルーカスの驚いた顔を想像して、ルシャーナはフフッと笑いが零れた。
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これからも頑張ります。




