寂しそうな笑顔
「……---ナお嬢様、ルシャーナお嬢様。おはようございます。」
ルシャーナは自分を呼ぶ声に気付き、目を覚ました。
のそのそとベッドから起き上がると、メイドのライアが側に立っていた。
まだ意識がまどろんでいる中、ぼーっとライアを見つめる。
「ライア…おは…、え?おはよう??」
ルシャーナは驚いて窓を見ると、眩しい朝日が差し込んでいた。
どうやら昨日疲れて寝てしまって、そのまま朝になってしまったようだ。
「ルシャーナお嬢様。昨夜、お声がけしたのですが、ぐっすりと寝ていましたので…。
旦那様にご相談し、そのまま寝かせておこうとなりました。」
「そうだったのね。さすがに寝過ぎね、私。」
ルシャーナはエヘヘと笑うと、ライアの目にはどんどんと涙が溜まっていき、ポロリと一粒零れた。
「ルシャーナお嬢様…、本当にご無事で良かったです。」
「ライア…。」
「失礼致しました。さぁ、お着替えを致しましょう。」
ライアは手の甲で涙を拭き、笑顔でルシャーナの身支度を整え始めた。
髪を結ってもらいながら、鏡に映るあどけなさが残る12歳の自分を見る。
別荘に行く前と今とでは、顔つきが変わったようにも感じる。
(私の事を心配して泣いてくれる人たちがいる…
自分のためだけじゃなく、心配してくれる人たちのためにも頑張る!
まずは法律の勉強をして、婚約破棄と相続について対策を練らなきゃね)
4年後も無事に屋敷に帰ってこないといけないと、ルシャーナは強く思った。
身支度を整えて、両親が待つ食堂にライアと一緒に向かう。
「ルシャーナ、おはよう。よく眠れたようだね。」
「お父様、お母様、おはようございます。寝すぎてしまいました。」
「お腹が空いただろう?まずは朝食を食べよう。」
父親のルーカスが合図すると、朝食が運ばれてきた。
目の前にルシャーナの好きな物が並び、お腹がぐぅっと鳴った。
ほぼ丸一日何も食べていない状態だったため、すごくお腹が空いていたんだと気付いた。
「料理長にルシャーナの好きな物を頼んでおきました。」
ルシャーナを見て、母親のシエナがほほ笑んだ。
「お母様…嬉しいです!」
ゆっくりとスープを飲むと、少しずつ空腹が満たされていくのを感じる。
朝食を半分ほど食べたあたりで、ルーカスに別荘で起きた事故について聞かれた。
「ルシャーナ、別荘で何があったんだい?
大体の事はフレデリック様からの一報に書かれていたが、ルシャーナから話を聞きたい。」
「お父様…。」
これ以上、両親に心配をかけたくなかったが、ボートから湖に落ちた事故の事を話す。
公爵家にフレデリックの言い分で話が伝わっていると、こちらの対応次第では関係が悪化するかもしれないからだ。
本当はフレデリックから誘われて手を取って立ち上がったが、私が勝手に立ち上がったためボートが揺れて落ちた事になっているとも伝えた。
確証がないので、フレデリックに手を押すように振りほどかれた事は言わなかった。
「ルシャーナ…。つらい思いをしたんだね。
別荘に行く前とどことなく雰囲気が変わったと、シエナとも話していたんだ。
急に大人になったような…。」
昨日は少ししか話せなかったが、ルシャーナの些細な変化に気付いていた事に驚いた。
シエナの顔を見ると、寂しそうな笑顔でルシャーナを見ていた。
急いで大人にならなくていいんだよと、言っているようだった。
その後は誰も会話する事がなく静かに食事が進み、食後の紅茶が出てきた。
ルシャーナの話を聞いてから、ずっと難しい顔をしていたルーカスが口を開いた。
「ルシャーナ、この婚約が提案された時、伯爵家には断る事が出来なかった。
だが、今の話を聞いて婚約破棄の申し出ようと思う。」
ルーカスがルシャーナの事を第一に考えて、行動に移そうとしてくれている事は嬉しい。
でも、今ここで公爵家に婚約破棄を申し出て、伯爵家が不利になるような事は避けたい。
「お父様、婚約が決まった時は嬉しかったです。毎日夢見ているような気持ちでした。
フレデリック様と上手くやりますので、こちらから婚約破棄の申し出はしないでください。
お願いします。」
(4年後に『フレデリック様と上手く婚約破棄します』…の方なんですけどね。
俄然やる気が出てきたわ!)
ルシャーナは両親に向けてにっこりとほほ笑んだ。
読んでくださってありがとうございます。
コメント、評価、ブックマーク、ありがとうございます。
とても嬉しく思っています。感謝です。
これからも頑張ります。




