頭上の数字
(苦しい…助けて…)
「--------ッ!!!!」
ガバッと起き上がると、肩で息をするほど呼吸が苦しくなっていた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
酸素を取り入れるために、思いっきり空気を吸い込む。
呼吸も落ち着いてきたと同時に、忘れていた身体の痛みが追ってやってくる。
「いたたたた…。
私…夢を見ていたの?それとも助かったの?」
いつの間にかベッドで寝ていたらしい、という事はわかったけど、夢を見ていたのか現実なのか、記憶があやふやになりルシャーナは混乱していた。
12歳の自分なのか、16歳の自分なのか、訳が分からなくなっていた。
口元を押さえていた手を見ると、幼い手をしていて12歳である事に気付く。
確認のため周りを見渡すと、ジョージナス公爵家の別荘の一室で間違いなかった。
(夢で見たのは過去の記憶なんだわ。私の過去であり、私の未来でもある…)
溺れた事によって、ルシャーナは全てを思い出した。
(フレデリック様の策略で4年後に婚約破棄されて殺されてしまう)
16歳のルシャーナが最後に感じた悲しみが、胸にじわじわと広がってきて涙がぽたぽたと落ちる。
今の自分が受けた仕打ちではないと分かっていても、溢れる涙は止まらなかった。
フレデリックと同じ部屋に一緒に居たくないと感じた、感情の違和感が過去のせいだった。
何も知らなかった頃のようには戻れない。
フレデリックに抱いていた恋心はルシャーナの中から消えていた。
4年後に起きる事でいつまでも泣いてるわけにはいかないと思い、袖口で涙を拭き手のひらで一度頬を叩く。
まずはじっくり対策を練るためにも、自分の屋敷に帰って落ち着きたかった。
それに、フレデリックとは同じ別荘内に居たくなかった。
ルシャーナはメイドを呼んで、アルバートを呼んできて欲しいと頼んだ。
すぐやってきたアルバートに、フレデリックへの伝言をお願いする。
『体調がすぐれず記憶も混乱していて、屋敷に帰って療養したい。お迎えの馬車が来るのはまだ先なので、帰りの馬車の手配をお願いしても良いですか?』と訴えれば、馬車の手配は了承してくれるだろう。
アルバートを経由すれば、お迎えの馬車が来るまで待てば良いとは言わないはずだ。
暫くして、アルバートがメイドを数人連れて、ルシャーナの部屋に戻ってきた。
フレデリックから馬車の手配の了承が得られたので、帰宅の準備に取り掛かってくれるそうだ。
ベッドの中からぼーっと、アルバートとメイドが働く姿を眺めながら、先ほどフレデリックの頭上に現れた数字について考えた。
(それにしても、あの数字はなんだったのかしら?何かの数値?)
試しにアルバートを見ながら数字が表れるように念じたが、何も現れなった。
(うーん…寿命とかなのかな?)
寿命が表れるように念じても何も現れない。
ただ、何かの数値というのは間違ってはいない気がした。
(ホクロの数、宝物の数、足の大きさ、結婚する年齢…)
ルシャーナは思い付くまま念じたが、どれにも反応しなかった。
フレデリックの頭上に数字が表れた時、自分が何を思っていたか記憶を辿る。
(確か…私の事をどう思っているかって考えてた)
私の事をどう思っているかアルバートを見て念じると、今度はゆらゆらと数字が現れた。
アルバートの頭上には68と出ていた。
(で、でた!!!)
今はまだ何の数値か分からないが、数字が表れる条件が分かっただけでもルシャーナは嬉しくなった。
(私を思って出る数値ならば、好感度とかの感情の類だろうとは思うのだけども…
上限値も分からないし、まだまだ謎だらけだわ…)
上限確認をするために、部屋に居たメイドたちの数値を確認する。
メイドたちからは48、23、52と出ていた。
(100を超えないどころが、100に近い数値が少ない…。
上限値は100と考えても良さそうね。
好感度にしたら、アルバートの68は高すぎる気がする。
ほとんど接点がなかったもの)
ルシャーナは無意識に唸っていたらしく、アルバートが心配そうに声をかけてくれた。
「ルシャーナ様、体調がよろしくないのでしょうか?
そろそろ準備が終わりますが、体調次第では明朝の出発に調整致しますよ。」
「あ、いえ、ごめんなさい。今日、出発でよろしくおねがいします。」
「承知致しました。では、ルシャーナ様はお召替えをお願い致します。
また後程お伺い致します。」
アルバートはメイドに指示を出して、部屋から出ていった。
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