表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹色の扉  作者: ひめみや
PR
45/68

驚愕

マキとーマークが恋人同士になって幾月か経過した頃、


「麻紀~!」


「どしたん?そんな情けない声出して・・・」


「もうダメかも~・・・」


「なんがよ?」


麻姫は東京にいる妹分、麻紀に電話した。


「マークよ、マーク!」


「え?こないだ話した時、ぶちラブラブやったじゃろう?」


「うん、最初の三ヶ月はラブラブやったんやけど、この一ヶ月くらい、なんか彼の様子がおかしい。勇気を振り絞って聞いてみたけど、ちゃんとした答えはくれん。なんでかわからんし、あたしも疲れてきた」


「なんで、そんないきなり??他に気になる人ができたとか?」


ずーんと、麻姫は落ち込む。


「やっぱ、それしかないよねぇ・・・。理由を教えてくれんの」


「しっかりしんさい!そんなハッキリせん男はさっさと見切り付けて、ハイ、次~!」


「でも、でもさぁ、事の真相はちゃんと知ってからやないと、次に進めんくない?」


「そやったら、ビシっと聞きんさいよ!麻姫らしくない」


「うん、わかった・・・。なんかさ、もう駆け引きとかしたくないんよね。そんな疲れることにエネルギー費やせる二十代初めの時のような若さもないし。離婚がトラウマになっとるのもあるけど、次に進まんといかんのなら、スッキリしてから行きたい、ホント」


「じゃけん尚更よ、もう麻姫は自分でしたいこと、ちゃんと解っとるじゃろ。サッサとスッキリしんさい。麻姫にはもっとええ人がおるけぇ」


涙目になった麻姫は、


「わかった。けど、知るの、やっぱ怖い~~~!!!!」


あーあ、と、首を振る麻紀であった。





◆◇◆◇◆





麻紀との電話から一週間が経過し、意を決したマキは、マークと会うことにした。彼は仕事が詰まっているだの、急用ができただのと、のらりくらり躱していたのだが、


「大事な話があるから」


と、電話でメッセージを残すと、


「わかった」


と、たった一言、返事がメールで来た。



そのデートとはいえない、緊張のあまり胃から何か出て来そうなくらいの会合に選んだのは、そこまで人気のない店で、客も多くないので静かに話ができるだろうと思った場所だ。


マークは先に来ていた。


「ハイ」


と、手を挙げて挨拶したものの、彼の方も緊張が隠せない表情だ。強張っているのが遠くからでも分かった。


ウェイターが水を運んでくるのを待ってから、それまで一文字に口を閉じていたマキは静かに言葉を振り絞った。


「もう解ってると思うけど、あたし、このところのあなたの態度にはもう我慢が出来ない。もし、あたしが何かしたのなら、それを教えて欲しいし、それ以外の理由があるのなら、ちゃんと知りたい」


彼女の真剣なまなざしから一旦目をそらしたマークは、息をついて、しばらく沈黙していたが、一口グラスの水を飲んだ。そして、マキに向き合ってから、


「ごめん。オレも正直、何と言ったらいいのかわからないんだけど、なんていうか、その・・・」


マキは辛抱強く彼の言葉を待つ。


「あの、さ」


「・・・・・・」


彼の視線はあちこちに泳いでいる。落ち着きがない。よっぽど言えないことなのだろうか。


(他に好きな女ができた、と言うのがそんなに難しいことなの?)


「・・・・・・」


マキの無言の鉄仮面攻撃に根負けしたマークが絞り出した言葉は、


「不安なんだ・・・」


そう言って、肩をがっくりと落とした。


「どういう意味?」


(え?女じゃないの?)


マキの鉄仮面に表情が加わる。マークは続ける。


「うまく説明できないと思うけど、なんかオレ、キミと付き合い始めて、舞い上がりまくって、このところようやく地上に降りてきて、正気を取り戻してきたというか・・・。で、その、今度はなんか、キミみたいな魅力的な女性と一緒にいるのが恐れ多い、みたいな・・・」


「恐れ多い?」


マキが目を見開いて、彼の言葉を反復した。


「そう、なんだか、オレ自身もホントによくわからないんだけど、そう感じるのと同時に、キミがどっかに行ってしまうんじゃないかと・・・」


(何、それ?この人は、一体、何を言っているの?)


「たまらなく、不安になるんだ・・・」


その言葉を言い終えたマークが視線をマキに戻して、また、息をついた。とりあえず懸念していた答えとは違ったので、安堵したマキであったが、想像もしていなかった答えが返ってきて、困惑していた。


「それが、あたしを避けてた理由?」


「避けてたつもりはないよ。ただ、気まずかったから・・・」


(思いっきり避けてたじゃない)


と、言い返したいのをぐっと堪えて、


「あたし、どこにも行かないわよ。永住権だって取ってるし、この街にはもう十年以上住んでるほど気に入ってる。転職するつもりも今のところないわ」


「うん、とは思ってたよ。転勤なんてないって、前に言ってたし。でも、なんでだろうな。どうしても、キミが遠いところへ行ってしまう不安感が払拭できない」


マキ、しばし沈思。そして、これが多分、最後の質問になろうとは自分でわかったのだが、これを言わないと先に進めないと思ったので、勇気をまた振り絞った。


「マークはあたしと、どうなりたいの?」


二人の視線が合わさる。


「キミとは一緒にいられない・・・。マキ、すまない」


マークのその謝罪の言葉に胸を抉られた。


すぐ目の前にいるのに、たった数フィートかのテーブル越しにいるだけであったのに、マークとの間に埋めようのない隔たりを感じたマキは、何も言わずに立ち上がり、ハンドバッグを取って足早に店を出た。


(追いかけて来て、ねえ、追いかけて来てよ!)


流れる涙をそのままに、マキは歩いて家を目指した。


マークは追いかけて来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ