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虹色の扉  作者: ひめみや
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恋の力

「麻姫ちゃーん!もう帰るのー?」


職場のビルの外階段の上に麻姫の姿を見つけた蕗子が階下から声をかけた。


本日は金曜日。時計が午後五時を回り、誰もがそわそわする時間帯だ。


「うーん!今からね、ちょっとねー。蕗ちゃんは出かけてたんだね、お帰りー」


えへへ、と笑う麻姫の頬が色付いているのが下からでもわかる。


「彼によろしくねー」


「はーい。お疲れ様でーす」


そう返事して蕗子へ手を振り、麻姫は駆けるようにビルを出ていった。




◆◇◆◇◆




「ミリアムお嬢様」


厩へと続く道を急いでいる様のミリアムに、教育係のオブライエン女史が階段の踊り場から声をかけた。


「これからお出かけになるのですか?」


女史は長衣の裾を手操し上げ、階段を降りて来ようとしていた。


「先生、はい、そうなのです。町まで行って参ります」


ミリアムは歩を緩めただけで、止まろうとはしなかった。


「お一人でですか?」


「はい。急いでおりますので、ごめんあそばせ。先生、無礼をお許し下さい」


「わかりました。お気を付けて」


「ありがとうございます」


馬車を使わずに、一体何事かと女史は不思議に思ったものの、急いでいるというミリアムを見て詮索はしなかった。





◆◇◆◇◆





「ハロー?」


「やーっと、つかまった。あたしだよ」


クリスティンからの電話に出たマキは、風呂上りにマニキュアを施している最中だった。


「ごめん、忙しくなっちゃって」


「もしや、例の『石畳の君』と、付き合うようになっちゃったとか?」


「正解」


「うわっ!やっぱり、そうだったんだ。おめでとう!いつ、そういうことになったの?」


「二ケ月くらい前かな」


「そっか。それは忙しいよね。だからマキにしては珍しくメールの返事が来ないわけだ」


「週末は食事とか、ドライブ旅行にも行ったし、職場が同じビル内だから、毎日ランチもしてるの」


「それはそれは何よりの朗報。どうもごちそうさま。付きあいたての今、この時を充分に楽しみなよ」


「うん、ありがと。落ち着いたらまた連絡するわ」


「してこなくってもいいよ!とりあえず、楽しめ!」


ニヤニヤ顔が治まらないクリスティンの表情が見えるかのようだったが、電話を切ってから、マキはきれいなピンク色に塗られた爪にふーっと、息を吹きかけた。


頬が同じような色に染まっているのは、風呂上がりのせいだけではないだろう。



◆◇◆◇◆




『親愛なるクリストル様


いつもは姉さまが書くふみですが、たまにはわたくしが書くのもよいかと思いました。でもなんだか、久しぶりなので緊張しますわね。


というのも、姉さまはこのところとても忙しくなってしまい、従兄に手紙を書く暇さえない、と実に目を見張るものがございますのよ。


その原因は、貴方ならきっとおわかりのはず。なので、これまでの無沙汰をお許し下さいね。


姉さまはとてもお幸せそうにしていらっしゃいますわ。わたくしも微力なれど、協力もしておりますし。


しかしながら、親愛なる君よ、恋というものは、人を変えますのね。


わたくしも、そのように変わる時が来るのでしょうか。楽しみなような、怖いような・・・。



愛を込めて

マウラ』




『我が愛しの姫君マウラ


君からの久方振りの文を嬉しく拝読したよ。


遂に我らがミリアムの恋が実ったのだと推測する。素晴らしい報せだ。


恋というものはね、姫よ、人を山の頂へと登らせるような代物であり、且つ谷底へも突き落すようなものでもあるんだ。


谷底は地獄だ。苦しくて、辛くて、それなのに、人は恋を求めてしまう。


人間のさがなのだろうね。


願わくは、我々の恋が成就するよう。


何の制約も課されずに・・・。



多大なる愛を込めて

クリストル』


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