Thank You
伯爵家執務補佐オスカル
「わたくしが、感謝しているもの、ですか?そうですね。たくさんございます。
先ずは、この城にて領主であられる旦那様の元でお仕えできておりますことですね。
それから姫君様たちのお世話をさせていただけていること。
それから、あとは、わたくしを生み、育ててくれた両親への感謝はいつでも忘れないようにしたいと思っております。
もちろん、神への感謝も」
伯爵令嬢マウラ
「まあ、真面目で堅物な執事であるオスカルの言うことは模範回答そのものね。
わたし?そうね、子供のわたし達からみても仲の良い父さま母さまには感謝しているわ。
大抵のことは聞いて下さるし、ただもう少し長衣や帽子を買って下さったらいいのにな、と思うことはありますわね。あら、だって、そうしたものはいくつ持っていてもよろしいのではなくて?
それと、我が麗しの君、クリストルに感謝ですわね。あの方の存在自体がもう既にわたしには希有なものと言っても過言ではありませんから。
あ、砂糖菓子をはじめに作った人へもお礼申し上げたいですわ。
そして、オスカルと同じく神への感謝は忘れておりませんのよ」
伯爵令息クリストル
「おやおや、僕の可愛い姫君マウラ、お褒めに預かり光栄の極みだよ。君も僕にとって、かけがえのない人なんだからね。
うーん、そうだね、良い質問だね。こういうのって、日々の暮らしの中ではついつい忘れてしまうんだよね。
あるのが当たり前だと思っているもの。
家族、僕らにとっては身分や財産。
本当は有すことが当たり前ではないんだよね。
一夜にして失くすこともある。
えてして、人は失う時に初めてその大切さに気付いたり、感謝したりするものなんだよ。
だから、そうだね、今僕の手の中にある全てのこと、かな。
あれ?これも、オスカルの模範回答みたく聞こえてしまうかなぁ」
とある村の一青年マルク
「おい、なんだ、その、村の一青年って?俺が平民だからって、それはあんまりじゃないのか?
もっとこう、ほら、あれだ、姫さんの想い人とか・・・?
却下?へん、まあ、いい。今の俺は何を言われようと、どうだっていいんだ、なんせ天にも上る気持ちだからな。
俺の感謝しているものは、
姫さんだ。
これに尽きる。
なんでって、いや、その、手習いをしてくれるし、いつも笑いかけてくれるし、この俺に恋文なんて書いてくれるしさ、他にもいろいろだ、いろいろ。ごにょごにょ・・・。
あー、顔が熱くなってきた。
もういいよな、俺はおやっさんに頼まれた仕事があるんだ。勘弁してくれ」
伯爵令嬢ミリアム
「ああ、我が君マルク、貴方の口からそのようなお言葉を聞けますなんて、わたくしこそ天にも昇るような気持ちですわ。
貴方となら、天へも何処へでも、ご一緒致します。
そんなわたくしも、貴方への感謝は海よりも深いのです。
そういえば、貴方なような方をもっと後の時代では、『つんでれ』というのですって。ある書物で知りましたの」
「つんでれ?どういう意味なんだ、その言葉は?」
「わたくしもよく存じ上げないので、次までに調べておきますわね」
「え?なに、なに?ミリアムと想い人君は、遂に恋仲になったの?」
「そうなのよ、クリストル。だから、目も当てられない感じになってるのよ、姉さまは」
「それはめでたいな。ミリアムの想いが通じて、僕も我がことのように嬉しいよ」
「どなたとどなたが、恋仲になられたのですか、クリストル様?」
「ああー!!オスカル、ねぇっ!お茶の時間にしない?喉が渇いたし、クリストルがいるのに、なにも出さないなんて、一体全体どうしたことなの?」
「そうでございました。わたくしとしたことが、なんという失態を、いや、しかし、ただ今の状況がいまいちわたくしには飲み込めていないと言いましょうか。
あのミリアム様に寄り添うようにしておられる方は・・・」
「ほら!状況なんて、そんなのどうでもいいから、早くお茶にして、オスカル!」
「かしこまりました。しばしお待ちを。直ちにご用意致します」
「はい、姉さま、オスカルはいなくなったわ。続けて」
「ありがとう、マウラ。
改めまして、わたくしもそれはそれは数えきれないほど天の恵みだと受け止めているものがございます。周りにいる家族や使用人はもちろんのこと、声を大にして申し上げたいのは、人類が発明、造形してきた文字ですわ。
文字のおかげで、先人の考えや歴史、物語などの様々な読み物を後世へと受け継いでいくことができるのですもの。
それから、自然の美しさ、生き物の愛らしさ、最近は殊更綺麗に見えますの。
きっと恋の力が為せる技なのでしょうね。
そして、もっと声を大きくして申し上げますのが、
この物語を読んで下さっている、
あ・な・た
わたくしからの最大の謝辞を受け取って下さいませね。
ありがとう。
Go raibh maith agat.
貴方に雪崩れのように素敵なことが起こりますよう。
わたくし達を見守って下さっているすべての大きな存在にも心からの感謝を」




