表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹色の扉  作者: ひめみや
PR
14/68

これをあなたに

マキは昼休み、マーケットに行こうとオフィスのあるビルを出た。


今日は快晴。気分も良し。歩いていると、見知らぬ人に声をかけられたので、笑顔を向けると、


「いい笑顔だね!」


と、返された。


(ピンクのオーラは持続中みたいね)


石畳の君にどこで会うかわからないので、服装、髪型に気を付けるようになったのもあり、モテ期到来、といったところか。


マーケットには色とりどりのチューリップ、水仙、と春の花がたくさん売られていた。郊外にある花農家が毎日収穫してこの市に持ってくるのだ。


ちなみにこの州は、チューリップの生産高世界一を誇る。車で1時間半ほど行くと、今の時季、チューリップ畑が見られる。広大な土地に赤、黄、白、という巨大カーペットがずらりと並んでいるのは圧巻である。


冬の間はドライフラワーや手作りリースなどが売られるが、春が近づいて来ると、先述の種類の花、次にカラー、ユリ、グラジオラス、ヒマワリ、そして秋口になるとダリア、と変化していくのが風物詩だ。


マキは昼休みにここへ来て、花を買ったり、ドイツ系ハム屋や魚屋で買い物したり、ランチしたりするのをこよなく愛していた。街で一番の観光地でもあるが、いつも人で賑わい活気がある地元民にとっても大切な場所だ。


今日はピンクのチューリップを三十本買い、オフィスへと戻った。





終業時になり、いつもの道を通って帰宅しようとし、


(今日は会えなかったなぁ)


と、石畳の君のことを考えていると、はた、と、気付いた。


(しまった!チューリップを忘れてきた)


オフィスの給湯室に、バケツに入れたまま置いてきたことを思い出した。ビルからもう結構な距離を歩いていたので、


(面倒臭いな、明日にするかな・・・)


と、思ったのも束の間、なぜだか、いや、取りに行かねば、と思い、踵を返してチューリップを取りに戻った。昼に食べなかったリンゴを引き出しに入れていたのだが、それもなんとなく持って帰ろうとバッグの中に入れた。



坂道を歩いていると、後ろから、


「どこにでもいるよね、ホント、キミって」


と、声がした。


(わ!もう五時半くらいになってるのに!!!!)


「ハイ」


マキは驚きながらも、石畳の君に挨拶した。


(あー、ビックリした!)


「きれいなチューリップだね」


「でしょう?昼にマーケットで買ったの」


「花を抱えているキミをよく見かけるよ」


「え?」


「いつも昼休み、あちこち歩いているだろう?」


「そ、そうね。息抜きの散歩してるわね」


マキの胸はドギマギした。彼も自分と同じようにいろんなところで気付いているのだ。


「花を買うのが好きなんだね」


「ええ、それはもう。あなたは?家に花を買うことはしないの?」


「絶対ないな」


「そう」


「男の一人暮らしだし。あ、前の住人が置いて行った鉢があるな。なんの緑か知らないけど、それには水をあげてるよ」


(一人暮らしなんだ・・・)


例の四つ角に差し掛かり、横断歩道で信号が青になるのを待った。


「今日も冷凍ピザかなー」


君が独り言のようにそう言った。すると、マキの心臓は一気に心拍数を上げた。


(どうしよう、どうしよう、どうしようーっ!!!言わないと、今が好機!マキ、頑張れ!)


と、せわしく脳内会議が行われていたのだが、早々と駐車場に着いてしまった。


「それじゃ、会えてよかったよ」


「あ、よかったら、これ」


マキは咄嗟にバッグの中からリンゴを取り出し、彼に差し出した。君はそれを受け取り、


「リンゴだ!オーガニックだね。ありがとう」


と、笑顔を見せた。


ハイウェーへの入口前にて、信号で止まった彼が歩いて追いついたマキの姿を認めると、先程のリンゴにガブリと齧りつき、ウィンクして走り去っていった。


「あああああ~~~~、もうっ!!!!!」


マキは無念のあまり、と、彼のさわやかなあの笑顔、そして悩殺的なウィンクにやられ、その場にしゃがみ込んだ。


「あれは反則でしょ~・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ