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キルユー キルミー!  作者: 星崎咲也
殺し屋の日常
18/50

殺し屋と詐欺師と暴力団 その2

 3月の始めの頃、俺は近くの喫茶店で待ち合わせをしていた。

 基本的に依頼主とは、年齢や性別などに応じてファミレスや喫茶店、時には歩道橋などそれぞれ場所を変えている。

 向こうが指定してきた時はまたそれに従っているが。

 ドアのベルの音が鳴り、入ってきたのは強面なブラックスーツの男だった。

 マスターは特に興味を示さず、ただコーヒーを焙煎する。

 客なんて滅多に来ないし、来ても常連客しか居ないので情報が漏れる心配は少ない。

 男も黙ったまま俺のテーブルの向かい側へ座った。

 「久しぶりですね、東出さん」

 「ああ、ご無沙汰だな」

 男は低い声で答え、マスターにエスプレッソを頼んだ。

 東出弥刀ひがしでみとうさんはうちのお得意様だ。

 暴力団の役員らしく、敵対する組織や個人への報復を依頼してくる。

 なんでも、自分はおろか仲間の下っ端ですら、危険に晒すことを好ましくないと思っており、(じゃあなんでこの業界に入ったんだ)風の噂で知った俺に協力を求めるようになったらしい。

 それでも、年中長袖のスーツを着ているのは右腕には 大きな刀傷がついているからという話だ。

 マスターが運んできたエスプレッソを彼は口に含んだ。


 「それで今日の要件とは一体」

 「ああ、今回はちょっとした詐欺グループの撲滅をやって欲しい」

 「えーっと…俺に頼むと撲滅というより皆殺しになりますけど」

 俺は殺し屋であって何でも屋ではない。

 ということで、標的を生かしておくことは苦手だ。

 「それで構わない」

 いいのか… これはかなり大きな仕事になりそうだな。

 「分かりました、その標的について詳しく聞かせてください」

 「そうだな、まずうちの組長は知っているか?」

 重そうな口を開け、東出さんは話し始めた。

 「ええ、確かかなり高齢でしたよね?」

 「もうすぐで73歳になる」

 話でたまに出てくる程度だったので、あまり詳しくは無かったのだが、まさかそんなに歳を取っていたとは思わなかった。

 「それで今は息子の若頭に、実質的には仕切ってもらっているんだよ」

 「へぇ、それで」

 俺が尋ねると東出さんは苦笑いしたような顔をした。

 「いやぁ、恥ずかしいんだけどその組長がオレオレ詐欺に引っかかったんだよ」

 「……本当ですか」

 組長さん、しっかりしてください。

 「しかも、向こうが息子を名乗ったもんだから若が怒り狂ってよ」

 俺以外に息子がいるのかってさ。と東出さんはため息混じりに呟いた。

 「それで貴方にお鉢が回ってきて今に至るって訳ですか」

 「ああ、もう皆殺しでも何でもいいから始末しちゃってくれ」

 はいこれ と言って東出さんは名簿リストを渡してきた。

 いつになく投げやりだな、東出さんも色々と大変そうだ。

 「かしこまりました」

 俺は名簿をファイルに挟むと軽く礼をした。

 「それで料金の方なんだが…」

 「結構標的が多いのでかなり用意しておいて下さい」

 そう言うと、東出さんは肩をがっくり落とした。

 「あのさ、そろそろお得意様割引とか無いの?」

 「自分で言っている限りはないですね」

 トホホとでも言うような顔をして彼はエスプレッソ代を机に置いて去っていった。

 本当に東出さんは、暴力団の役員である割には人間味のある人だ。


 「という訳だ」

 「へぇー、かなりボケてますねその組長さん」

 未来は感心したような顔をしながら話す。

 「お前、それ東出さんの前で絶対言うなよ」

 女性だからといっても、どうなるか分からない。

 「でも、色んな依頼があるものですね」

 「まあな、それでもこなすって言うのが殺し屋の仕事だ」

 結構この仕事には誇りを持っているんだよ。

 闇の仕事に誇りもクソもねぇと思うが。

 「さあて、今日のうちにもう1人やっておくか」

 「頑張ってください」

 未来はガッツポーズを顔の前にして、笑ったのか笑っていないのか分からない顔をしていた。

 相変わらず、表情筋の固いやつだ。

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