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現実  作者: あいうえお
しばしの魔王城編
17/21

秘儀『髪の毛を抜く』

 受験勉強中で投稿が滞っています。

 ※大幅に改稿しました。長くなりました。

「あ、本当だ……そう言えば僕って裸だったんだ」

「そうだな、そう言えばすっかり忘れてたな。でも、グラサンしているからギリセーフじゃね」

「完璧にアウトだろ。しかも裸グラサンだと……」

「いや、靴下と靴が残っているからどちらかと言うと、裸――」

「うっせぇ! これ以上喋るな! 魔王が喋るとややこしくなる!」


 服が焼かれて消えた。そして裸になった。

 だからキレて服を燃やした張本人であるテルの事を本気でぶっ殺そうと思ったのに、まさか裸だった事をすっかり忘れていた。

 僕って馬鹿だったのか……?

 

 裸でいる事の恥ずかしさと、自分が馬鹿だっだのかもしれないという不安から、頭を抱えてしゃがみ込み、うんうん唸る。


 『何か少し肌寒いなぁ』『あれ、僕の服の色って色素の薄い肌色だったけ』とは思っていたんだ、でも、『まあ、よくある事だよな』……ってよくあったら駄目だろうが! 完璧に馬鹿じゃん、末期じゃん。救いようが無いよ! ……いや、待てよ、ちょっと間抜けなだけって解釈も出来なくは―― 

 ――うっ、ねっとりとした気持ち悪い視線を感じる。


 視線を感じて顔を上げると、何故か、魔王が僕のからだをまじまじと見ていた。

 良く分からない身の危険を感じながら「何だよ?」と尋ねる。逃げられる体勢で。


「ナオって見た目の割に結構な筋肉あるんなんだな」


 僕はスクッと立ち上がった。

 

「フフン、鏡に映った自分の筋肉を見るのが好きだからちょっと鍛えてたんだよ。維持するのが結構きついけどな」

「だろうな、でも服を着ていたら分からない筋肉を維持するとは……凄いな。理由はどうあれ」


 この凄さを理解するとは魔王はかなり良い目を持っている。

 普段見えない筋肉の良さが分かるのは貴重な人材だ。

 語り合う事が出来そうだな…………想像したら気持ち悪かったからやめよう。

 筋肉は見せびらかすものじゃなくて孤高に生きるものだし。


「何かポージングやってみてよ」

「え、しょうがないなあ」


 やはり筋肉は見て貰うものだ、興味を持たれるのは楽しいしな。

 孤高に生きたってつまらないしな。


「おお、凄いな大胸筋が大胸筋で大胸筋だな」

「……大胸筋しか知らないだろ」


 ネットを見て覚えたポージングをいくつか披露した。

 服を着ていたら隠れるレベルの筋肉しかないからぶっちゃけムキッとはならない。


「目のやり場に困るので服を着て下さい!」


 魔王とふざけていたら、ミリナさんの怒号が飛んだ。


「いつまで、くだらないことをしているんですか!? 別に男同士でそんな風にふざけ合うのは普通の事だと思いますよ! ですが、私は女性です! レディーですよ!? そういうのは、場所を選んでやるべきですよ!」


 ミリナさんはさっきの勢いを殺すことなく、顔を真っ赤にしてそう言った、一息で捲し立てたからか、三メートルくらい離れているのに「ハァ、ハァ」という呼吸が聞こえるくらいに息が荒くなっている。


 やってしまった! ミリナさん完璧に怒ってる! やばい、やばいぞこれは。

 こっちに非があるし、ここは素直にジャンピング土下座で謝って、さっさと服を着よう。


「そうだ! 場所考えろよナオ! ミリナに謝れ!」


 魔王の言葉を聞いた瞬間に、首がミリナさんの近くにいる魔王の方向にギギギと動き、ジャンピング土下座をしようとした僕の体がピタッと止まった。

 魔王はいつの間にかミリナさんの近くに立ち、腰に手を当てて、こちらを睨みつけていた。


 この野郎……! どっからどう考えても共犯なのに、裏切りやがった!

 良いだろう、そっちがその気なら、こっちにも考えがある。


「ごめんなさい、ミリナさん。でも、魔王が見たいと言うのでしょうがなく」


 普通の土下座をして、そう淡々と謝った。


「……え、魔王様? まさか、来たばかりのこのいたいけな少年に何をされようと? もし、この事をカレア様が知ったらどれほど嘆くか……本当の事なのですか?」

「え、ま、まあ確かに言ったよ、言ったけどさぁ! でも――」

「言い訳は聞きたくありません! 魔王様はカレア様に絞られると良いです『伝言魔法』モゴモゴ」

「ちょっと待てえぇ!」


 魔王が慌てた様子でミリナさんの口を両手で塞いだ。

 

「汚いぞ! ナオ!」

「フン、先にそっちが裏切ったじゃん。それに僕は真実を言っただけだし」

「なっ! こうなったらこっちも本気で行かせて貰うぞ! なにせナオのせいで俺の命が危うくなったからな!」


 本気でやるって言っているぐらいだから、余程カレアって人が怖いのだろう。

 しかし、まあ魔王がどんな弁明をしてもこの状況を打破するのは難しいだろう。

 何せ、嘘じゃないからな。

 さて、ここから魔王がどれほど滑稽になるのか傍観するか。

  

「……よし! ほら、見てみろミリナ。あのナオの邪悪な顔を。全然いたいけな少年の顔に見え無いだろう。確かにあいつは、見た目が幼く嘘の吐くような人間には見えないだろう。だけど、中身はおっさんなんだ。だから、平気で嘘も吐く。何が言いたいかと言うとあいつが言った事は嘘なんだ」


 フッ、本気を出すと言うからどんな核心的な事を言うと思っていたが、馬鹿みたいな事を言う、どうやら僕は魔王の事を買被り過ぎていたか。

 これじゃあ、ミリナさんも騙されないだろう。

 魔王とは呼ばれているが無様な奴だ。

 これじゃあ、見ていてもつまらないものになりそうだな。


「…………確かに、あの邪悪な顔はとてもいたいけな少年には見えませんね。という事は魔王様の言う通り、中身がおじいさまで、言っていた事も嘘なのでしょうか?」

「あぁ、その通り」


 え? 僕はピッチピチの十五歳だ! 中身も勿論おっさんじゃない! ……じゃなくて、ミリナさんチョロ過ぎないか? そうだな、まるで、あの時のゴブリンのように……。


「まさか!?」

「ククク……気付いたか勇者よ」

「……ん? 魔王いきなりどうした? 頭いかれた――」

「ククク……気付いたか勇者よ」

「……」


 何でこいついきなりRPGとかに出て来そうな魔王の口調になっているんだ?

 理由はよく分からないけど、合わせないと話が進まなそうだな。


「あぁ、分かったぞ! 魔王お前は従者にスキルを使ってい――」

「その通り! 流石、勇者だ……」

「やはりか、そして使っているスキルは『思考誘導』だ――」

「ククク、流石勇者だ!」


 合わせてやっているんだから、せめて最後まで喋らせろよ。

 ムカつくがここは我慢だ。

 合わせてあげないと最初からになる可能性があるからな。

 二度も臭いセリフを言いたくない。


「クッ! なんて卑劣なんだ! 自分の従者にスキルを使うなん――」

「何とでも言うが良い。我は魔王だ、冷酷非道な魔王だからな」

「っ!」


 これは流石に、ボケているよな? 魔王は面白い事を言うな。だから、ツッコミを入れた方が良いよな。まさか、素で言っているんじゃ無いよな。

 いい加減この茶番にピリオドを打った方が良いよな。だって、ミリナさんポカンとしてるよ。


「あはは、魔王は面白い事を言うな! 演技って感じが全くしないレベルのクオリティだ――」

「何とでも言うが良い! 我は魔王だ、冷酷非道な魔王だからな」


 素で言っていたのか?

 これは演技じゃないのか?

 やっぱり合わせるしかないのか? 嫌だ、恥ずかしい!

 くっそー、何が原因でスイッチが入っちゃったんだ?

 

「…………お前人間じゃねえ!」

「ククク、何を言っている。我は魔族を束ねし王。人間じゃない」


 あぁ、駄目だわこの子、合わせるしか無いな。


「しかし、いつスキルを使ったんだ、『思考誘導』って聞こえなかっ――」

「誰が、言わなきゃ使えないと決めた」

「まさか!?」

「そう、そのまさかだ。スキルは無詠唱で使える!」

「な、なんだってー! どうやったら、無詠唱で使えるように!?」

「……それはな」

「……それは?」

「…………慣れれば使えるンダナー」

「てめぇ! 恥ずかしいのを我慢して付き合ってやったのに自分から抜けていくなんて……ふざけるんじゃねえぇぇ!」


 僕は魔王に飛び蹴りして、体勢を崩したのを見逃さず転ばせ、馬乗りになりタコ殴りにした。途中で「ふっ、効かんな」等と舐めた事を言ってきたので、殴るのを止めて髪の毛を抜くことに変更した。五十本ぐらい抜いたら魔王がしくしく泣き出したので、止めた。

 


――――――――――



「「ハイ、マジすみませんでした!」」


 茶番をしている最中に思考誘導が解けたミリナさんが、僕と魔王のやりとりで全て理解したらしくて、ご立腹だったため僕達は全力で土下座した。

 ミリナさんはそれにより、多少機嫌を良くしたのか騒動の後からしていた、ゴミを見るような目から、虫を見るような目に変えてくれた。

 それでも、やはり大変ご立腹だったみたいで、僕と魔王に蹴りを一発ずつ食らわして、「私達は先に食堂に行っているので、魔王様とナオさんも服をどうにかしてから、来てくださいね」と言い人形を連れて行ってしまった。虫を見るような目で唾を吐いてから。

 

「…………そういえば、服を持ってないんだけどさ、爆発に強い服とか布とか持ってないか?」

「そんなものは無い」

「……終わった。きっと僕はこのままずっと裸で生きて行くんだろう。で、そのうち体が冷えたのが原因で重い感じの病気を患って死ぬんだろう……」

「大袈裟だな。ほら、これ貸してやるから」


 魔王が着ていたコートを脱ぎ差し出して来る。


「……僕、軽い潔癖症なんだ」

「失礼だな。俺のコートが汚いって言いたいのか?」

「うん、髪の毛付いてそう」

「……抜かれた髪の毛って回復魔法で治るのかな」 

 

 そう言って魔王は僕が抜いた辺りの所をしばらく触っていたが、苦虫を噛み潰したような顔をして「無理だった」と呟いた。


「そのうちカツラでも作るか……? あ、そう言えばナオって今はモンスターだよな?」

「そうだけど」

「じゃあ、モンスター化解除してみ? 人間に戻ったら服着てるだろうし」

「……確かに! モンスター化解除!」


 体が一瞬発光して、その直後にいきなりだるくなった。


 服は……ちゃんと着ている!

 モンスター化する前の黒ジャージに戻っている。

 よっしゃあー! 脱、裸だ。


 裸状態を脱する事には成功した、それは良いのだが何故か体が思うように動かない。

 まるで重りか何かの動きづらくなる物でもしているようだ。

 立っている事もつらく、手をついて屈んでしまう。

 

「魔王、何か動きづらいんだけど」

「うーん……モンスターの状態に順応してその結果で人間の状態で上手く動けないんじゃないか? モンスターの時のレベルと人間の時のステータスが違うという事も関係しているだろうし」


 今、魔王が重大の事を当たり前のように言った気が……。

 確認しといた方が良いよな。


「モンスターの時と人間の時でステータス違うのか?」

「えっ、言って無かったけ? レベルも違うし、ステータスも違うし、スキルも違うぞ。同じなのは称号くらいだぞ」

「言ってないわ!」


 またこのパターンかよ!

 何で魔王はこんなにうっかりしているんだ?

 この具合だったら、絶対にこの他にも魔王だけが言ったつもりになっているのがあるだろうから、聞き出しといた方が良いんだろうな。

 はあ……魔王がもっとしっかりしていれば。

 まあ、それは一度置いとくか。

 出されたこの問題を考えなくては。


 そうだな、レベルとか共有されないという事はこれから自分を強化していくという事に対してかなりの死活問題になるな。

 どちらか片方だけを極端に上げるか、どちらもきちんと上げるかのどっちかだよな。


 一番目の人間だけを極端に強化する場合のメリットは、人間の町に行った時に役立つという事、そしてデメリットは、モンスターにステータスで劣るという事とモンスターになった時にステータスが違い過ぎて違和感が出来るという事。


 二番目のモンスターだけを極端に強化する場合のメリットは、ステータスが人間よりも良い事、そしてデメリットは、人間の町に行った時にモンスターだとバレたらいろいろな不都合がある事と人間に戻った時にステータスが違い過ぎて違和感が出来るという事。

 

 三番目のどちらもきちんと上げた時のメリットは、人間又はモンスターを極端に上げた場合の先に挙げたデメリットが無い事、デメリットは面倒だという事。


 とりあえず三番目は面倒そうだから却下だな。 

 そういう分けでで選択肢は一番目か二番目に絞られた。

 

 一番目か二番目だとすると自分的にはモンスターでのレベルがある程度上がっているから二番目のモンスターだけを極端に上げるのが良いな。

 でも、町とかに行った時にモンスターだと面倒だよなぁ……。


「ナオのモンスター化した姿のピエロだったら、ぶっちゃけ仮面と奇抜な服装さえしていなければピエロに見えないからモンスター極めても良いんじゃね」

「それだ!」


 方針が決まった瞬間だった。 

 この方針によって、どう育って行くかが決まった。


「よし! じゃあ問題も解決したっぽいし食堂行こうぜ――転移っと」

「だから歩いて行こ――」



――――――――――



「何だナオ、食べないのか?」

「今食べたら戻す自信があるからな――ウプッ」


 駄目だ……。

 もう転移を三回くらいしているのに慣れる気が全くしない。

 車でも、船でも、飛行機でも、酔った事が無いのに……。


「おいおい、大丈夫か? でも、何でリバースしそうになっているんだよ?」

「お前だ! お前が原因だ! 僕は歩こうって言ったのに」

「んー?」


 くそっ、この野郎、自分から聞いてきたくせに聞いていないじゃないか。

 歩こうって言ってた事も忘れてるし、返答もおざなりだ。


 とっても殴りたい程にムカついているが、この世界で頼れる存在はこの魔王ぐらいだ。

 むやみやたらに殴った結果、見放されたら、この世界で生きていくのが絶対に難しくなる。

 だからここは我慢だ。


「転移が全く慣れる気配が無いんだけど。転移する度にこうなるのは辛い」

「んー?」

「ていうかまず転移ってどういうシステムなんだよ?」

「んー?」


 耐えろ、耐えるんだ僕の右腕!

 今殴ってもダメージ入らないし、そのうち、本当にそのうち強くなったら殴ろう。思いっきり。

 だから、ここは我慢だ。きっと、魔王も次はちゃんと答えてくれると思うから。

 

「この世界に来る前までは一度も酔った事が無かったのに」

「んー?」

「……なあ、これどうにかならないのか? というか、聞いてる?」

「んー?」

「殺すぞ!」

「おおっ? いきなりでかい声出すなよな」

「あ、ごめん……んっ?」


 あれー、これって僕が悪いのか?

 いやでもそんな事は無いはず、だって原因はどっからどう考えても魔王だもんな。

 勢いにつられて脊髄反射で誤ってしまったが僕は悪くないはず。

 この件に関して突っかかりたいが、もしも殴り合いに発展した時に魔王相手に勝てるビジョンが全くない。

 ここは諦めるが、いつか必ず報いてやる。

 

 よし、気持ちが落ち着いて来た感じがするし、腹も減ったし、酔いも収まった気がするからこの異世界飯を食べるか。

 ……異世界の飯ってどんな感じなんだ?

 ダンジョンでも昼に飯は食べたけど、味がしないコンパクトな固形物質だった。

 多分、栄養があり、腹を満たすだけ。というダンジョン攻略に向いている食べ物だったのだろう。

 言うなれば、ダイエット食品みたいな物だと思う。 


 流石に、あのパサパサしていて固いダイエット食品が、この世界に来てから食べる初めての物だとすると、何か悲しい気持ちになるからカウントしない。

 もちろん、あの爆発物型魔石もカウントしない。何故なら、あれは食べ物じゃなかったからな。

 だから、記念すべき第一回目の異世界飯はこれだ。


 僕は自分の前に置いてあるトレーに乗った物を見る。

 大き目の丼があり、白い湯気を放っている。

 丼の中には濃厚そうなスープがあり、コシの良さそうな黄色い麺にメンマ・チャーシュー・のり・半熟卵・etc。

 そして、トレーの端の方にちょこんと置いてある、箸・レンゲ。


 とても美味しそうだ。

 これが異世界に来てから初めて食べる物か。

 初めてってだけでこの食べ物が神秘的で神々しく見える。

 とても、感動的だ。


 でも、どうしてだろうか。

 どの角度から見てもラーメンにしか見えない。

 というかこれはどう考えたってラーメンだろ。

 魔王もさっきからズルズルと麺を啜っていたような気がするし。


 ……いや、待て待てよく考えるんだ、早まるな自分。

 きっとこれは、この世界発祥のラーメンに似た何かなのかもしれない。

 

「この世界ってラーメンがあるのか?」

 

 僕は期待を込めた声で魔王にそう話しかけた。


「在る! いや正確には無かったけどな。食べたくなったから俺が開発したんだよ。元々この世界には麦みたいな物があったんだ。で、麦みたいな物はこの世界の主食であるパンを作るのにたくさんあったから、それを利用してラーメンを開発した。今ではだいたいの家庭でラーメンを食べているな」

「ヘェ……」


 あぁ、僕の異世界のイメージがまた一つ音を立てて崩れたよ!

 しかも流布までしたとか……。

 僕はあまり異世界の文化を壊さないようにしよう。





 これを改稿している最中に二回データが飛びました。

 精神が崩壊しました。

 そうこうしているうちに、受験勉強どころか、合格発表も終わりました。

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