四天王の一人
「えっ、俺のせいなの?」
「えっ、当たり前じゃん?」
「そんな馬鹿な!?」
魔王が食堂に来なかった事と勇者を殺そうとした事を怒ってきたが、僕は自分のしでかした事を認めずさらっと魔王のせいにした。
しかし、魔王にも責任はある。
「僕さあ、食堂が何処にあるかとか知らないよ。だってさあ、この魔王城を歩く事さえ初めてだよ。今日この世界に来たばっかりで、移動を全て魔王の転移魔法で行っていたから、食堂の行き方なんて知っている分けがないじゃん」
「……確かに!」
普通だったら屁理屈だと一蹴されるこの弁明。
しかし納得してしまうのが魔王だ。
よくこんな奴が魔王をやれるなあ、と本当に驚く。
こんなんじゃ、詐欺とかに普通に引っかかるだろう。
きっと、大事な事は従者に全て任せているに違いない。
僕は勝手に納得した。
「でも、同じ勇者なんだからむやみに決闘するのはやめろよ」
「それについては、反省している。だけど、突っかかって来られたんだ。おまけに裸にされたから殺されても文句は言えないだろ」
「……いや、普通に文句あるだろうし、言うと思うぞ。殺すのはやりすぎだからな。なあテル?」
「ハイ、やり過ぎですよ! マジで殺そうとしてました」
いつの間にか魔王の隣に人間の姿のテルが立っていた。
意識があった上にモンスター化を解除したらしい。
生きていたのか……チッ!
しかもこいつ、他の人がいると口調が変わるのか。
つくづくうざい奴だな。
「あ、魔王様! ナオが不気味な顔してます。きっと、僕の寝首を掻くつもり――」
顔に出ていたか、と考えながら聞いているとテルがいきなり床に足から埋まっていった。
埋まる前に魔王が若干動いた気がするし、きっと魔王が原因だろう。
ってか、魔王凄いな。
僕が何回爆発しても傷が一つもつかなかった床に人を埋めちゃったよ。
あれは絶対にやられたら痛いだろう。
それにしても、床から頭だけを生やしているテルを見ていると、笑いがこみ上げて来る。
ざまあって言葉しか出て来ない。
「あ、また不気味な顔していますよ! あと、なんで埋めるんです?」
余裕そうだな。
そういえばこいつ、尻尾切ったり、胴体が爆発したり、体の中で爆弾を爆破したり……って、僕こいつにかなりえぐい事やっているな。
でも何故か大丈夫そうにしか見えない。
おまけに、魔王の目にも止まらない攻撃を受けてもぴんぴんしている。
なんだこいつ?
化け物か?
「あ、ごめんなナオ。実はこいつ来たばっかの奴を驚かすのが好きなんだ。あと、かなりちゃらんぽらんしているけど、四天王だから」
「んんー? 冗談きついぜ魔王、こんなくそ虫が四天王?」
「まあ、信じられないよな。でも、そうなんだ」
何の冗談だよ、嘘をついているとしか思えない。
耐久力は確かにおかしいが、四天王になれる程強いとは思えない。
四天王ってあれだろ、よくゲームやマンガに出て来るあれだろ。
四天王って名前なのに、チームプレイを全くやらないあれ。
一人ずつ勇者一行に挑んでやられるあれ。
だけど裏を返せば、一人でも勇者一行の脅威になるあれ。
こいつってそんなに強いのか?
僕は床から生えている頭を指で指し、魔王を見た。
魔王は静かに頷いた。
「ありえない!」
僕は思わずそう呟いた。
魔王は僕の言葉を受けて「まあそうなるよな」って感じで再び頷いた。
「うーん、失礼だね。――まあ改めて! 僕が四天王の一人のテルだよ。炎龍って呼ばれる事もあるよ。とりあえず、引き抜いて欲しいな!」
「こんな奴だけど、本気を出せばかなり強いぞ。……それに伴う教養もあればいいんだがな」
強いのか……。
じゃあ、さっきの戦いはあいつにとって遊びでしか無かったのか。
ん? ってことは僕って、遊びで裸にされたのか。
避けれなかったこっちも悪いとは思うが、最悪な奴だな。
いつか寝首を掻くか。
「えっ、何か言った?」
「言ったわ! お前は厄介事の種だからもうずっと埋まっとけ」
「酷いな魔王――はっ!」
「どうした?」
「腹減った! てことで、先に食堂行ってるね――転移っと」
「この野郎……」
テルが転移と言ったら僅かな間光った。
光が収まったと思ったら、穴の開いた床が残っているだけだった。
転移魔法ってあんな風になっているのか。
良く分からない奴だったな。
あれで四天王の一人なのか……僕が考えていた四天王のイメージが崩れたな。
あんな奴でも四天王になれるなら僕でもなれそうだな。
「ったく、あいつ懲りないな……それじゃあ、俺たちも食堂行くか。道を覚えるために歩いてな」
「はいよ」
そうして僕達は食堂を目指して歩き始めた。
――――――――――
「そう言えばナオ、下の階で従者が一人転がっていたんだが、そっちもナオか?」
「エ、初耳ダナア……」
「そうか、知らないか」
きっと僕が転がした奴だろう、かなりの確率で僕が原因だな。
だが、肯定したら長々と説教されそうだと思ったから否定した。
それにしても、魔王は人を信じすぎだと思う。
絶対、過去に騙された事があるだろ。
「あれっ、ミリナじゃん」
曲がり角からミリナさんが現れて、魔王がミリナさんに喋りかけた。
ミリナさんは何か喋ろうとしたが、僕を見た瞬間静止した。
と思ったら瞬時に目をそらした。
「……なんで、ナオさんは服を着ていないのですか?」
「「あ」」
魔王ととっさに出た声が被った。
今回主人公は、最初から最後までずっと裸でした。




