魔王城の愉快な変人達③
どうやら本当にこの魔王城に存在する勇者は変人ばっかりらしい。
目の前に現れたドラゴンを見てそう思った。
「ははは、どうですかナオさん! これが僕のモンスター化した姿のレッドドラゴンですよ。強そうでしょう」
「そうだな」
うん、普通に強そうだ。
ピエロとは比べものにならないくらい強そうだ。
こんなのと戦ったら普通に負けそうだな。
しかも、もし火を吐いたりして来てそれが直撃したら普通に熱そうだし、普通に裸になりそうだ。
替えの服が無い今出来れば戦いたくない相手だ。
「ありがとうございます。では戦いましょう!」
「なんで?」
「戦いたいからです」
「だからなんで?」
「うーん……面白そうだからですかね」
あ、これもしかしたら戦わずに済みそうだ。
僕は必要の無い戦闘は避けるタイプの人間なんだ。
裸になったら嫌だしな。
「あのなあテル、普通に考えてみろよ、戦いなんかしたら絶対に痛い。それに大怪我にまで発展するかもしれないというリスクがある。まあ、戦うっていうのは本当に面白いかもしれないよ。でもねえ、それに伴うリスクが大きすぎると僕は思うんだよ。ほらテルだって痛いのは嫌だろう?」
「うーん、知らない。それだったら怪我をしなければ良いって事?」
おお、いけそうだ。
結構頑張ってペラペラ喋った甲斐があったかも――。
「なーんちゃって、隙ありのファイヤーっと」
「うおっ!? せこいっ!」
間一髪で避けれた。
それにしても、こいつは見かけの割に結構あくどい事をするんだな。
物語に出て来て見ているのは面白いが実際に相手にするとかなりうざいな。
「せこくないですよ。これも立派な作戦です。だからこれで勝ったら作戦勝ちですかね? まあいいや、続けてどんどん行くよファイヤーっと」
見た目ドラゴンのくせして結構喋るんだな。
威厳の溢れるモンスターだと思ってたんだけど、台無しだな。
テルは何発も火の塊も向けて来た。
幸いピエロは敏捷値の高いモンスターなので避けれる事が出来るが、それでも何発かは掠る。
このままじゃいずれ体力が切れて動けなくなりそうな上に、服が燃えそうだ。
何とかしなくちゃな……。
「ご主人様! こいつ殺しても良いですか?」
人形か……僕よりステータスが良さそうだし案外、倒してくれそうだな。
問題は瀕死とかじゃ無くて普通に殺しそうな所だ。
今も殺しても良いかどうかを聞いている分けだしな。
僕はもう魔王のメンバーの一員のつもりだし、ここでこいつを殺したら後に響きそうだな。
――って、戦闘中にのんきに考え事をしている暇は無い!
戦闘中に考え事をしている時は毎回怪我していたしな。
危ない今回も怪我をするとこ――。
「あ、ご主人様! 危ない!」
「――熱い!」
直撃した。
テルの放った火の塊は見事に僕に当たった。
爆発物をがらの悪そうな中年と戦っていた時に僕が持っている分は全部消費していたため、爆発はしなかったが、とにかく熱い。
真夏に面白半分で、部屋の中を思いっきり熱くして、防寒着を何枚も着込んで、コタツに入り、その上鍋焼きうどんを食ってた時よりも普通に熱い。
おまけに、服が遂に逝っちまった。
服が火と共に逝ったおかげで熱さが収まってきたが遂に裸になった。
替えの服が本当に無いんだよな。
あーもー! どうしてくれるんだぁ!?
ちゃんと落とし前つけてくれるんだよなぁ!?
ここまでされたら凄く不快だ。
流石にここまでされたらどうしてもいいよな?
「ご、ご主人様! 服が――」
「良い、人形。とりあえずこいつ、殺すぞ」
「ハ、ハイ!」
人形はそう言うと手に持っている短剣を煌かせテルに回り込む。
僕は爆発物創造を使い、持てる分だけ爆発物を作っていく。
「あれー、ナオ君? 服はどうしたの、もしかして燃えちゃった!? ごめんねー、加減が難しくて、まあこれが終わったら服をあげるから、それで許してね」
「無理。やっちゃえ人形」
「ハイ」
人形は少なくても僕の目には止まらない速さで短剣を胴体目掛けて振るう。
が、それを尻尾の薙ぎ払いによって阻止される。
「あー危ないなあ、ナオの人形は危ないねえ――っ!」
ボン!!
人形に持たせた爆発物が爆発した音がした。
テルの胴体の近くを中心に黒い煙が充満し出す。
「ゲホッ、ゲホッ、何も見えない。というか、ナオって僕以上に最悪な奴だね。まさか、人形を爆発させて目眩ましをするなんて、下劣だね」
「……お前は僕がそんな奴に見えるのか? あと、最悪って事を自覚していたのか」
「うん、僕も十分最悪な奴だと自負していたけど、それ以上にナオが最悪な奴に見えて来たよ」
酷い事を言う奴だな。
そんなに、最悪な奴に見えるのか。
僕は面倒な人間よりも、純粋な人形な方が好きだ。
……まあ、純粋かどうか怪しくなって来たけどな。
とにかく、人間よりも好きな人形をこんなくそ野郎を殺すのに犠牲にするわけが無い。
「心外だなあ、テル。僕がくそを倒すのに人形を犠牲にするわけが無いだろ」
「酷い言われようだね、でも現に――っ!? 尻尾が痛い、切れた気がする! まさかっ!?」
「ああ、もしかしたらくその考えた事が当たったかもな。どうせ、これから死ぬだろうし教えてあげる、人形は爆発無効なんだよ」
「そんな馬鹿な!」
面白いリアクションだな。
そんなリアクションをするとは……もっと飄々としている印象だったんだけどな。
なんか残念だな。
「いやいや、それが本当なんだって、僕もかなり驚いたよ」
「……じゃあ、ナオは人形を爆発しようとした事があるのか? 最悪だね――いたっ!」
「ご主人様に無礼だっ!」
どうやら、人形がテルに攻撃したようだ。
本当に僕に対しては優しいな。
「うん、ありがとう人形。それとテル、せっかく生きていられる時間を増やしてあげてるのに……もしかして死にたいの?」
「死にたくないね」
「じゃあ、最後まで聞こうよ。……まあ、実際そんなもんなんだけどね。ほら、ダンジョンに突っ込んで来るモンスターがいるだろ、そのモンスターのせいで爆発物を持っている僕はかなり爆発したんだ。そしたら人形の近くでも爆発しちゃって、でも何故か、人形は無傷だったんだ。だからテルが言っている事に近いかな」
「そんな事ありません! ご主人様! ご主人様によって生まれて来る人形はご主人様からの攻撃を受けませんので!」
本当に優しい人形だな。
こんなに良い人形を犠牲にするわけが無い。
「……なんだよそれ、チートみたいだな。が、こんな目眩ましで僕は死なない」
テルが翼を大きく広げ、煙を払い出した。
視界が良くなっていく。
「これで、もうナオ達の自由にはならない! 早く僕の事を殺せば良かったのに馬鹿だね」
「うん? そんな事ないよ。とりあえず煙を払ってくれてありがとう。これで狙いやすくなる」
僕は煙が充満している最中にテルにかなり近づいておいた。
視界が晴れた今、分かったが一メートルよりも近い。
そして、僕はドラゴンの大きな口に手で持てる限界の量の爆発物を投げ入れていく。
「や、やめ――」
ドン!!
――――――――――
「こいつも完璧に落ちたな。後は殺すだけか……僕は殺す術が思いつかないから、人形――」
「そこまでだ!」
目の前にいきなり魔王が現れた。
転移でも使ったのだろう。
よく、こんなピンポイントで転移出来るもんだな、本当に凄いな魔王は。
「全く! いつまで経っても食堂に来ないから、逆にこっちから来たわ。おまけに同じ勇者と戦っているなんて……」
「いや、元はと言えば魔王のせいだから」
「えっ、そうなの?」
魔王城の一番の変人は魔王か主人公です。
主人公はかなり狂っています。




