何かいたのと不思議な日常が始まる話
店を出ると、何かデカイ蝿がいた。
高さが俺と同じくらいある。
ゴキブリや蝿に人並みに嫌悪感を抱く感性を持っていない俺の様な人間でも、この大きさはそういう問題ではない。
「お前、その時計を買ってしまったな。」
しかも喋った。
「ほぇあ?」
間の抜けた声を出してしまった。
「その時計を買ったのかと聞いている。」
その蝿が再び問いかける。
「ア、ハイ。」
答える。
「じゃああんた俺の主な。」
何かよくわからんがこの蝿の主になってしまったらしい。
「あの、よく分からないんですが。」
素直に疑問を抱いている旨を伝える。
するとその蝿が答え始めた。
「えーと。だな、お前その時計買っただろ?その時計少し特別なアイテムでさ、」
何か凄い物を買ってしまったらしい。
「それ、人間の想像上の色んな物を見えるようにする素敵アイテムなんだわ。」
「はあ、さいですか。」
何かもう録な反応ができない。
「使い方教えておくぜ。」
「まあ、聞いておくわ。」
「じゃあとりあえず俺らについての説明からな。
俺らは簡単にいうと人間の想像が具現化したものだ。」
これはどうも凄い物の相手をしているらしい。
「そんでな、分かっちゃいるだろうが普段人の目には見えない。」
当たり前だ。こんなの常に見えていたらたまったもんじゃない。
「今何故俺が見えているかというとその時計を着けているから、ではなく、今俺がお前に姿が見えるようにしているからだ。んでだ、その時計を使えば俺たちの意思に関わらず俺たちを視ることができる。」
なるほど。
「それで具体的な使い方だが、ライトボタンが付いてるだろ?」
確かに何故かは分からないがライトボタンがこの時計には付いている。
「その光を俺らに当てればいい。じゃあ姿消すからやってみろ。」
そう言うと蝿は一瞬で消えた。
まるでさっきまで夢を観ていたようだ。
しかしこれを夢として忘れるのも気持ち悪いし、何より再び姿を現す気がするので素直にさっきまで蝿がいた場所に光を当ててみる。
するとまた蝿の姿が浮かび上がった。
「本当だ!」
やはりこれは夢ではないらしい。
「因みに一度当てればそれ以降は再び当てる必要はない。」
ここで私の中に一つの疑問が浮かび上がった。
「まさかとは思うが光を当てたら他の人にも見えるとかいうことはないよな?」
「安心しろ、主以外には見えないよ。」
安心した。
「次に俺達のいる所の目星の付け方だ。」
確かにそこを失念していた。
「俺達は微力ながらも人間に干渉できる。例えば俺の場合は人の腹を空かせることができる。」
そうか、つまり、―
「そういう怪奇現象の現場を探してみればいいんだな!」
「正解。察しが良くて助かるよ。」
これでこの時計の使い方は分かった。
「所でこの時計を持っていると何であんたの主なんだ?」
次の疑問を口にだす。
すると蝿は少し嬉しそうに答えた。
「その答えは簡単よ。俺は前々から人間に興味があったんでこの時計を手にした次の人間を主にしてみようと決めていたんだ。」
そうか、つまり好奇心か。
「と、いうことでこれからよろしくな。」
ここで俺はこいつを突っぱねて時計を手放すという選択肢もある。しかし、―
「こちらこそ。」
俺もこの蝿と同じく彼らに興味を抱いていた。
「しっかしちょっと大きすぎて落ち着かないからどうにかならないか、その身体?」
興味はあるが流石にこの大きさの蝿が周りをウロチョロするのは辛い。
「その程度ならお安いご用。」
そう言うと蝿は普通のサイズまで一瞬で縮んだ。
「すげぇな、お前。」
「このスキルは俺達皆基本的につかえるぜ。」
人類の想像力は俺個人の想像力を大きく越えているみたいだ。
ここで俺は大切なことを思い出した。
「まだお互い自己紹介がまだだったな。
俺の名前は池野孝太、お前は?」
「俺はベルゼブブ、ベルでいい。」
「よろしくな!ベル。」
「よろしく、孝太!」
こうして二人の奇妙な生活が始まった。




