第27回 血路
「自衛隊を出動させることは、治安出動など明確な憲法違反だ!!我々はそれを実力でもって阻止する!!」
「こちらは、陸上自衛隊です。正門前での座り込みは大変危険であると同時に、汚染地への到着を送らせることになります。ただちに撤収してください。我々は治安出動命令発令に伴い、一定の警察権を行使することが出来ます」
「うるさいっ!!絶対にどかん!我々の固い意思を見せる!!絶対に基地から出させない!!」
「警務隊長より、各警務隊員へ。出動妨害による公務執行妨害であると確認された。ただちに強制排除せよ。なお、抵抗する場合は確保後逮捕せよ」
「なんだ!!国民に手をあげるのか!!自衛隊は!!」
「やめてよっ!触らないでよ!汚らわしい!!」
「な、なんだよ!!自衛隊は民間人逮捕しないんだろうが!!なんだよ!!離せっ!!」
「司令、正門前での妨害は排除しました。出動可能です」
「50分も遅れた。国民を救出しに行くのに、それを妨害する国民は国民に非ず。すぐに汚染地に行ってこい」
12:20 臨海鉄道臨海本線 イオン付近
若干腐敗し、肌の色が異様に黒く、白く混濁した目。俺は悲鳴をあげていた。
その先から続々とやってくる感染者達と。ちくしょーっ!。
ミニミを構えると乱射し始めた。連射で放たれる5.56mm弾。狙いなんかほとんどつけていない。
続々と倒されていく感染者達。無線で「グレネードを射つ」と声が。反射的に身を伏せると、後方から06式擲弾が飛翔したのが分かった。着弾すると、感染者達がいたところは黒煙で見えなくなる。
が、その黒煙を抜けてやってくる感染者。「あぁっ!!!」と再度悲鳴をあげてひたすら撃つ。もうお構いなしだ。しかし、あまりにも近い。分が悪すぎる。
「タタターンッ!!」と軽い発砲音が響く。警察の機関拳銃だろう。振り向くと、警察や自衛官が整列して銃を撃っていた。
「佐藤っ!」と怒鳴り声が聞こえた。小隊長だ。
「こっちへこいっ」と防弾チョッキの首もとを引っ張られて後送される。機関車の影に隠れると「噛まれたのか!?」と聞かれた。
「はいっ!」
「どこだ!?」
「右腕です!カブリ、とやられました!」
「見せてみろっ!」と小隊長が右手を持ち上げると、真っ赤に染まった.....あれ?、染まってない。
「お前、右だよな!?それとも俺から見て右手か!?それとも俺がバカになったか!!!?」
「自分から見て右腕です!!ほら、ここに噛まれたあとが!!」
そこには、たしかに広めな「U字」の痕がくっきりと残っていた。
「反対はどうだ!?」と反対を見れば表と違い、服が少々ほつれた箇所があった。が、穴が開いてはいない。
「たしかに噛まれたようだが、良かったな!!貫通しとらん!!」
「感染してませんよね!?」
「安心しろ!、感染してたら俺が後ろから仕留めてやる!!」
すぐさま戦線に復帰する。機関車より後退はできない。すれば、機関車の運転士が取り残される。
「脅かしてくれたさっきの礼だ!!」
俺は再び絶叫しながら撃ち続けた。
12:22 イオン4階屋内駐車場車両スロープ
「第2分隊が先遣隊として降下!周囲を確保しつつ、小隊の降下を待て!行けっ!!」
大泉が率いる分隊が降下する。ロープを使って、この高さから降りるのはレンジャーくらいだろうが、それでもやってのけられる自信はあった。
先程から感染者の隊列が脱出列車を襲撃している。感染者達が夢中になっている隙をついて、後方から一網打尽にする腹積もりであった。
ものの2分で小隊全員が降下した。上出来だ!!。
「小隊長!」と声がかかる。
「なんだ?」
「ここのフェンスを越えればすぐに線路です」
「よし!、血路は見いだせたな。者共!行くぞっ!!」
「おおぅっ!」と声が上がる。一体何処の運動部だよ、と心で笑いつつ、俺はフェンスを越えた。
同刻 臨海本線線路沿い
「す、すごいっ」と思わず声をあげた。黒煙が上がり銃声が聞こえる。まるで戦争だ...。
「このままでは危険です。ゾンビと思われて誤射される可能性もある。ここは1つ」と一緒に行動する男は近くのスクラップ場に落ちていた鉄パイプを拾い上げた。
「ハンカチは持ってますか?」と聞かれて、バイトにおいて何だかんだで役に立つため日々欠かさず持つハンカチを渡す。
「これを、巻き付けて....」と鉄パイプとハンカチを巻き付けた結果「旗」のようになった。
「これを振りながら行きます。あくまで知能があり、交渉の余地があることを示すために」
「つまり、俺たちは生きていると表示するんですね」
「そういうことです」
旗を持たされる。
「大きく手をあげて、目立つように振ってください。ハンカチが落ちない程度にですがね」
試しに振ってみる。これで独特の声の女性シンガーでもいればコンサートみたいだと思った。それこそこの状況は「事変」だが。
「さぁ、行きますか」
12:27 臨海本線
「小隊長!、ここから線路です」
大和田が指し示す。脱出列車の方の銃声は散発的になりつつある。全滅は考えられないから、感染者側の数が減ったのだろう。
「よし、総員、駆けあ」
「待ってください、小隊長!」と大和田。
「生存者です!!」
彼が指し示す方向には、紺色の旗を振る若者2人がいた。
「命令変更!生存者を救助せよっ!」
すぐに大和田と大泉が駆け出す。そのあとに続く尾形の姿。俺はその姿を追って駆け出す。
若者の1人が旗を置いて掛けてきた。それに続くもう1人の若者。
「陸上自衛隊です!お怪我ありませんか!?」
「はい、2人とも無事です」
「それは、良かった、私はこの部隊を率いる菅原と言います」
「私は加山雄と言います。そしてこの人が佐藤幸夫さんです」
2人の若者は安心したように顔をほころばせていた。
「この先にいくと、多賀城市から脱出する列車が来ています。すぐに乗りに行きましょう!」
菅原三等陸尉率いる救援小隊は、新たに2人の若者を確保して、脱出列車へと向かい始める。
その中にいる若者の1人は、この街を地獄へと追いやった薬品のオリジナルを持っているとも知らずに。
「さて、そろそろ我々も動きますか」
「あんた方、護衛もつけんで行動できるのか?」
「桜井警部、ご心配なく。この2人は元警視庁SATです。そう簡単にはやられませんよ」
「一刻も早い確保と生還を願いますよ。あんまりいい気持ちはしない、変な不良外国人がいるのはね」
「奴は不良外国人ではありません。立派な工作員です」




