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スライム領の領主になって敵対種族をボコボコにする  作者: 新北部


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92 対策


「魔力は俺がどうにかするから、それまでうまくやっててくれ!」


 そうスライムに呼びかけ、急旋回して町に戻る。


 去り際にちらりと振り返ると、高さでも人間の3、4倍はあろうでかスライムたちは、任せろと言わんばかりにまた鎧人間たちを相手に暴れていた。


 ――あの様子なら、魔力結晶がある間は大丈夫だな。


 後は俺が役割を果たすだけだ。


 俺は自分のことに集中し、船を飛ばして町中をくまなく見ていく。


 ……しかし、その元凶となるものを見つけることはできなかった。


「ふぅ」


 落ち着け。こういう時ほど焦ったらダメだ。


 ――少なくとも、町の上空から見えるところにはそれっぽいものはなかった。じゃあ、屋内にいるのか?


 ――いや、あちこちで火が回っている町中で、こんな集中力の使いそうな魔法を行使できるはとは思わない。


 神様っぽい老人から譲り受けた植物魔法というチート能力は、この世界の魔法とロジックは違うかもしれないが、それでも集中力が必要だというのは共通すると思う。


 今まで見た白ローブを着た人間の魔法も、鎧人間たちの奥に隠れていた魔法使いも、魔法の行使には集中と、発動までの時間を要していた。


「ということは、やはり落ち着いて魔法を使える場所がいるよな。それにこれだけ規模のでかい魔法、1人や2人では成立しないだろうし、それなりに広い空間も必要か……」


 いや、魔法を使わない装置タイプという線もある。


 ただ、その場合もそんな大層な物を町中に置いておくとはあまり考えられない。あるとしても、もっと民間と隔離されたところにあるだろう。


 と、そこまで考えた時、頭にピーンとひらめきが生まれた。


「……本丸、いっちゃうか」


 普通こういうのは最後だと思ってたんだけど、あいつらが手を出してくるならこっちだってお約束を守ってやる道理はない。


 俺は戦闘の始めに放り投げたマンゴーの木を数本回収し、トレビュシェットの弾のように厚い輪切りにして船に積み込む。


 そうして向かうのは、湖中の島にそびえる人族の砦。


 王城だ。


 風を切って、ぐんぐんと船を進める。


 町を出て湖に出ると、俺が通った後に泡を立て、長閑のどかいでいた湖面に白い道筋ができる。


 湖は巨大だが、城がある島と湖岸はそれほど離れてはいない。


 俺を乗せた船がそこに辿り着くのはあっという間だった。


 王城の周りには高貴な者が住んでいるのであろういくつもの邸宅があるが、今はそれは無視。


 その島の中で最も大きく存在感のある建造物、王城の上空に船を停める。


 下の方では、城の門の辺りに護衛の兵士がびっしりと並んでいて、誰ひとり通さないという陣を引いていた。


「俺にはあんまり関係ないんだよな」


 城の真上にまで船を寄せ、そのまま船に積んだ輪切りの丸太を宙に浮かべる。


 わーわーと騒がしい声が下から聞こえ、射られた矢がコツコツと船底に当たる音がするが知ったことではない。


 弓矢ごときで、スライム領の巨木から削り出したこの船を貫くことは不可能だ。


 俺は宙に浮かべた複数の丸太にぐっと力を入れ――真下に叩きつける。


 ターン! という、丸太が高速で地面にぶつかった時に似た、もはや銃声のような破裂音が連続で鳴り響く。


「お?」


 しかし、思ったような手応えはない。


 船のヘリから少しだけ頭を出して下を覗くと、そこにはいまだに荘厳さを誇示する城がどっしりと建っていた。


 間髪入れず、次々と丸太を落としていく。しかし、そのどれもが大したダメージを与えられない。


「かってぇな」


 町の方を振り返る。


 そこには、ここからでも見えるほどのでかスライムたちが、ぴょーんと跳ね、おそらく下にうじゃうじゃいるのであろう鎧人間たちを踏み潰している姿が見えた。


「……あまり猶予はないよな」


 スライムたちは町で頑張っており、いつもは側にいる側近スライムたちも今はいない。


 完全に俺ひとり。


 もしなにかがあれば……それこそ矢のひとつでも、剣戟のひとつでも喰らってしまえば致命傷となり得る状況。


 だからといって――尻込みしている場合でもない。


「……よし、気合入れろっ!」


 己を鼓舞するようにそう叫ぶと、角柱を一本だけ残して、あとの積み荷は下に放り投げる。


 これでついでに何人か死んでてくれたらラッキーだ。


 そのまま俺は船から飛び降り、アームガードに植物魔法を使いふわりと着地。


 目の前では数百か、下手したら千ほどの兵士たちが、鉄仮面越しにこちらを睨みつけていた。


 ――空の上からの攻撃ではダメだ。船の操作に集中力をかなり持っていかれるからな。


 ここは、腰を据えて当たるべし。


 目の前の空間がキラキラと煌めく。


「喰らうかっ!」


 俺は遅れて落下してくる木の船をそのまま操作して体の前に掲げる。


 風切音と共に、コツコツと船が矢を弾く音。


「行くぞっ!」


 戦いの前にいつも発する、自身にスイッチを入れる言葉。


 そんなひとりごとを皮切りに、船を大きな盾にしたまま兵士の群れに向かって走り出す。


 ――敵が陣を組み直す前に弓兵ごと討ち取る!


「うおおおおおおおおおおおお!」


 アームガードに植物魔法を使い、さらに加速。


 大砲のようなスピードで、船ごと鎧人間の群れに突っ込む。


 それは、とても訓練を受けた人間とは思えない。まさに魔物のような力任せの攻撃だった。


「ぐへぇっ」


 敵陣に突っ込んだはいいが、勢いが付きすぎて停止した船にどかっとぶつかる。


 ――いてぇ。


 しかしアホをしてる場合ではない。多くの鎧人間たちを轢き潰し、相手にもかなりの被害と、心理的恐怖を与えたはず。


 周りの奴らが立ち直るより先に動き、畳み込む。


 俺は船を振り回すようにして体の左手側に浮遊させ、残しておいた角柱を右手側に浮かして振りかぶる。


 それは、俺が今までやってきた片手剣に盾というスタイルを、そのままスケールアップさせたような構えだった。


「っおりゃああああああ!」


 船に轢き潰された死体を飛び越え、唖然としている鎧人間どもに角柱を振るう。


 丸太のように太い角柱が、ボウッ! と音を立て、俺の目の前にいた鎧人間がただの鉄で包んだ肉塊に変わる。


「まだだ!」


 そのまま切り進むように、角柱を振り回しながら前進。


 ――相手の懐に潜り込んだ方が安全だろっ!


 一振りで十数人、また一振りで十数人。


 屍の山を築きながら、敵の兵を討ち取っていく。


 これだけのリーチ、そしてシンプルな重量と速度。鎧人間どもは剣を一応構えてはいるが、もはや打ち合うことすら不可能だった。


 俺が薙ぎ倒して進んだ後方には、ぽっかりと空間が生まれる。そこから矢を射られるのが1番嫌な展開だが、そこは木の船でしっかりと抑えている。


 船はかなり大きく、湾曲しているため俺の後方を任せるには十分な働きをしてくれている。


 背後は木の船で守りながら、前面は角柱で制圧していく。


 微妙な均衡の上に成り立つ、危うさの孕んだ戦法ではあるが、今の俺にできる最善の策だった。


 ――いつまでもこうはしてられないか。


 角柱を振り回しながら、鎧人間の群れの奥にある王城への入り口を探す。


 敵の数はどんどんと減ってはいるが、俺のやるべきことは敵の掃討ではない。スライムの魔力を奪う元凶を見つけることが先決だ。


「あそこだな」


 その大きな門は、意識して探せばすぐに見つかった。


「うおりゃああああああ!」


 次第に俺から逃げるように距離を取り始めた鎧人間たちを、さらに威嚇するように声を張り上げながら進んでいく。


 門までの距離はそれほど離れておらず、気がついた時にはすでに門の目の前にまで来ていた。


「よしっ」


 その頑丈そうで、ゴテゴテと装飾のされた門に向かって角柱を振り上げる。


 背中の方からは鎧人間どもの怒号が聞こえ、俺を守るように掲げられた船に激しい矢の雨が降る。


 ――よほどこの門に自信があるのか……あいつらとしては俺を壁際に追い詰めたとでも思ってんのかな。


 しかし俺にも自信がある。


 今まで何度も助けられてきた。


 魔王から譲り受けた巨木の硬さと、この世界に来た時の、神様っぽい老人からもらった植物魔法。


「おっらぁあああ!」


 力の限り、叩きつける。


 


 ……まるで火花でも飛び散ったかと錯覚するほどの硬質的な手応えと、鼓膜に響く甲高い打撃音。


 それと同時に、砕けた大きな木片が飛び散り、その向こうに大きな人型の石像と、それを中心にして囲むローブを来た人族どもが目に入ってきた。


 ――あいつらだ。


 すぐに理解した。


 忘れるはずもない。


 その妙に落ち着いた色のローブは、俺の領に攻めてきた鎧人間たちの後ろに隠れていた、どでかい光の熱線をぶちかましてきた魔術師らが着ていたものと全く同じだった。

 

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