4 継母プリシラが、やらかしました
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ベルモント伯爵邸の執務室。
私は頭を抱えていた。
どうすれば私の縁談を「プリシラ」に差し上げることを、エメルディ公爵家で納得してもらえるのか。
絶対に無理だわ。
男爵家出身では、どうしたって公爵家の夫人にはなれない。
百歩、いや千歩譲って貰えたとしても、礼儀も所作もなってないあの継母では無理。
ダメだわ。何を考えているの、アリッサ。
そんな事以前に、王家からの書状には『伯爵家の直系の娘』となっているわけだから、私以外は無理よね。
一晩中考えたけれど何も思い浮かばない。
何とかしないと。
まずはパステーラのお祖母様にご相談しよう。
ブルーノ様にも、お手紙を書かないと。
そして働かない頭で、事の次第をしたため、お祖母様に面会を求める書状を送る。
お祖母様には、明日にはお会いしないと、あまり時間がない。
ブルーノ様には、王家から打診が来てしまったことと、継母がその縁談で騒いでいることを正直に書いた。
少し休もう。
お父様が亡くなってから、しっかりと眠った記憶がない。
今日は、幸い継母も静かだし。
静か?ということは、とうとう遊びに出ちゃったんだわ。
もうどうでもいい。止めて聞く人ではないから。
後妻の継母は、正式には私のお母様ではなく、あくまでも後妻だから、お父様が亡くなった後は、この国では伯爵夫人を名乗れない。
それも説明したけれど、知らんぷりしてたわね。
私はふらつく身体を引きずって何とか自室まで戻り、寝台に潜り込んで眠りに入っていった。
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アリッサの部屋。
遠くで私を呼ぶ声がする。
「アリッサ様、アリッサお嬢様。起きてくださいませ。公爵家から馬車が来ております」
誰か何か言ってる?眠いの、寝かせて。
「眠いの……」
「アリッサお嬢様、起きてくださいまし。エメルディ公爵家の馬車が。それに家令補佐という方もお見えです」
「そんなの帰ってもらっ……エメルディって言った?」
私はガバッと飛び起きる。
「ハンナ、エメルディって言った?」
「はい、そう申しましたよ。家令補佐の方が書状を持って来ておられます」
「待たせてはいけないわね」
「ひとまず、セバスチャンが、お嬢様は過労でお休み中なので、少しお待ちいただきたいと伝えております」
さすがセバスチャン。
でも待たせるわけにはいかない。
急いで支度をする。
喪に服している最中なので黒のドレスを着る。
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ベルモント伯爵家の応接室。
エメルディ公爵からのお使いは、家令補佐ベルン様と名乗る。
家令の部下のような方だった。
さすが公爵家、家令もたくさんいるのね。
書状は、公爵様ご本人から。
高級な封筒に便箋、透かし紋章が入っていて、美しい字体。
でも、読み進めていて、私は卒倒しかけた。
いいえ、本当は卒倒すれば良かった。
「ベルン様、これは」
「はい。当家の主は、アリッサ伯爵令嬢と直接お話をしたいと申しております」
「……大変申し訳ございません。すぐにお伺いを」
「では先に、先ぶれを出発させます。お嬢様はお支度が済んでからご出発されて問題ございません」
「お心遣い痛み入ります。支度をしてまいります」
私は応接室を辞して急いで階段を上がりながら言った。
「ハンナ、エメルディ公爵様のお呼び出しがあったの。すぐに外出用の喪服のドレスを準備してちょうだい」
急いで、小走りで、更に急いで、外出用の喪服に着替える。
まだ喪に服しているので、黒のベールで顔も隠す。
相手は現公爵様。
絶対に失礼があってはならない。
そして私は今、乗ったこともない豪華な公爵家の馬車にたった一人で乗っている。
ベルン様は、使用人専用の馬車。
セバスチャンとハンナは置いてきた。
どんな話をするにせよ、私が責任を取らねばならない。
公爵家は王家の血筋。
この命を差し出しても、伯爵領の領民と使用人達を守らねば。
馬車は滑るように移動していく。
振動をあまり感じないし、静かね。
馬の蹄の音さえ遠い。
ああ、そんなことを考えている場合ではない。
とうとうやらかしたのだ。
あの女が。
死んで詫びてちょうだい。
心底、そう思った。
公爵様のお手紙には、こう書いてあった。
——緊急ゆえ用件のみで失礼する。
亡きベルモント伯爵の後妻であるプリシラ夫人が、当家へ来られている。私の後妻の権利について、アリッサ嬢からプリシラ殿が譲り受けた、と主張しておられるが、それについて、アリッサ嬢と直接話したし。
オスカー・エメルディ——
あの女。絶対に許さない!
不定期ですが、完結します。




