2 舞踏会の出席も差し上げました
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半年後。
継母は、伯爵家の夫人としての勉強を嫌がった。
亡きお母様の実家、パステーラ侯爵家から夫人教育の家庭教師が来てくれていたが、ことごとくお茶会に誘われたと言い訳をして逃げ出し、代わりに私が勉強することになった。
パステーラ家のお祖母様に、状況をご報告してみる。
するとお祖母様は、今のうちに学びなさいと、私に侯爵家と同等の教育をつけて下さった。
もちろん、継母は勉強もせずに、男爵家時代の友人達と遊び歩いていたけれど。
何とかバランスを取って日々を送っていたある日、継母から呼ばれた。
「ねえ、アリッサ、この招待状はお断りしたわ」
継母がヒラヒラと見せびらかしている封筒には、幼馴染がいるサフィエル侯爵家の封蝋がついていた。
それは王家主催である舞踏会のエスコートの申し入れのはず。
「お断りしたのよ。だって、ワタクシが伯爵夫人なのに、あなたが侯爵家の子息にエスコートされるのはおかしいわ。構わないでしょう」
この女、全部自分が上にならないと気が済まないのね。
「もちろんですわ、お継母様。私には分不相応でした」
「そう!分不相応よ。だから、あなたには男爵家のお相手を探しているから安心なさぁい」
これは一刻も早くこの家を出ないといけないわね。
でも、男爵家と顔合わせしたら、もっとまずいことになる。
考えるのよ、アリッサ!
「お継母様、ありがとうございます。でも次の舞踏会は格式ある舞踏会。お継母様にこそふさわしいもの。どうかお父様とお二人で」
「そう、良かったわ。ワタクシのドレス代だけでもお金がかかるの。お留守番なさい。でも男爵家とのご縁は消えないわよ、うふふ」
「わかりました」
「あなたの母はワタクシ。敬って言うことを聞きなさい、いいわね」
こんな女と争っても無駄だわ。争うより差し上げる方が早い。
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舞踏会の夜。
私は一人で裏庭の庭園にいた。
お母様が作った庭園。小さな青い花が咲いている。
さすがの継母も、裏庭は放置。見える場所だけ派手にする。
「アリッサお嬢様」
家令のセバスチャンが呼びにくる。
「どうしたの」
「サフィエル侯爵家のブルーノ様が、どうしてもお会いしたいと」
「ブルーノ様が?」
「お嬢様、差し出がましいようですが、事情をお話になった方が。それに今夜は旦那様と奥様も舞踏会です」
「お継母様の侍女は?」
「奥様付きの侍女も護衛騎士も一緒に出ております、今日を逃すと」
「ありがとう、セバスチャン、すぐにお会いします」
セバスチャンも侍女頭ハンナも協力してくれて、私のお部屋でブルーノ様と会うことができた。
ブルーノ様には、継母がこの家に来てからのことを全て話した。
「仔細はわかった」
「ごめんなさい、私、今日の舞踏会、楽しみにしていたのに」
「いや、構わない。贈ったドレスも突っ返され、男爵家との婚約話が進んでいると書状にあった。話がおかし過ぎるから、会って話したかった」
「お父様が言いなりなの」
「だろうな。屋敷に入って、あまりの様変わりに驚いた。それに社交界でも、継母殿のことはかなり噂になっている」
「どんな」
「いや……」
ブルーノ様が渋るなんてよほどのこと。でも聞いておかないと。
「言って。何を聞いても驚かないわ」
「伯爵家では慎ましく暮らしているので、アリッサのお古のドレスを着ているとか、亡伯爵夫人の部屋に入れずアリッサの古い部屋で耐えているとか。私はそんなはずは無いと思っているが」
私は大きなため息をついた。
そして、もうそんなに時間がないと気がついた。
継母は私を追い出したがっている。
「ねえ、ブルーノ様、これを預かっていただきたいの」
私は衣装部屋から、お母様の形見の宝石を持ってくる。
侯爵家の紋章入りの箱に入った宝石。
そして、ブルーノ様から頂いた細い首飾りも、首から外して箱に入れ、一緒に渡した。
外した首飾りを見てブルーノ様が怪訝な顔をなさる。
「アリッサ、これはどういう意味だ、返す?なかったことにする気か」
「違うの、お返しするのではなく、預かってほしいの。いつ奪われるかわからないから」
ブルーノ様がホッとした顔をする。
その時、部屋の扉がノックされた。
「お嬢様、先ぶれが。もうすぐ、旦那様方がお帰りに」
「セバスチャンありがとう。ブルーノ様を急いでお送りして」
「アリッサ、もっと話したかったが、とにかく事情はわかった」
私は泣きそうになるのを堪えてブルーノ様を送り出す。
ブルーノ様が、宝石箱を抱えて扉に向かうけれど、すぐ引き返して、私の額に口付けを落とした。
「今はまだ、おおっぴらに動けないが、打開策を考える」
私は涙を堪えて頷いた。
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でも、それから、ブルーノ様とは会えなくなってしまった。
お父様が、流行り病で、数日で亡くなってしまった。
不定期更新ですが、完結します。




