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勘兵衛 vs 鬼燕

鬼燕がコートを翼のように広げると内側には真っ暗な闇が広がっていた。

よく見るとその闇の中を大量の何かが飛び回っている。



勘兵衛:(何か嫌な予感がするな、少し距離を取るか)



そう感じた直後、コートの闇の中から大量の黒い物体が高速で飛んで来た。

先端が鋭い針のようなその物体は一斉に勘兵衛目掛けて襲い掛かる。



勘兵衛:「くっ、今度は飛び道具か!」



咄嗟に飛び退いて大半は躱したが、いくつかは腕や肩に突き刺さった。

よく見ると、身体に刺さったその物体は鳥の羽のような形をしている。

先端は針のように鋭く尖り、後ろの羽の部分にはナイフのような刃が付いている。


勘兵衛の本体は霊体である為、本来は物理的な攻撃では痛みを感じない筈なのだが

刺さった部分には何故か鈍く重たい痛みがあった。



勘兵衛:「む、ロボットの俺が痛みを感じるとは

    まさかこの羽、霊糸を編んで作ったものか・・・」


 鬼燕:「その通り、この羽は触れたものの霊力を削ぎ落とす

    たとえ貴様がロボットに憑依していようと

    霊体に直接ダメージを与えられるのだ

    そして私の霊力が続く限り羽はいくらでも作り出せる」



鬼燕の手下達に足止めされていたカリンが不安を感じ、勘兵衛の方に目を向ける。



カリン:「!! まずいよセンセー、早くこいつらを何とかしないと勘兵衛が危ないよ!」


柳田:「あー分かってる、しかしこいつら結構しぶといんだ」 

     


手下達に弾丸を撃ち込むが、動きが早く中々命中させるのが難しい。

しかも意外と耐久力があり一撃では仕留め切れない。


 

 鬼燕:「そしてここでダメ押しと行こうか

    私には霊力を増大する秘策があるのだ」



そう言いながら鬼燕は手下達の方へ手をかざした。

その手から十数本の光の線が手下達へと伸びて行く。



 柳田:「何だあの光の線は?

    鬼燕とかいう奴、何をするつもりだ」



鬼燕と手下達がそれぞれ一本ずつの光の線で繋がった。



 鬼燕:「お前達、私に霊力を寄越すがいい」



光の線を伝って手下達の霊力が鬼燕へと流れる。

霊力を吸い取られた手下達はその場から次々と消滅していく。


 

柳田:「まさか、こいつらは戦力としてではなく

    霊力を補充するための燃料タンクとして連れて来たのか!」


カリン:「えー、 どうするの?

    これじゃ益々勘兵衛がピンチになっちゃうよ」


鬼燕:「フハハハ、絶望するがいい

    この圧倒的な霊力で放つ私の攻撃に

    貴様は何分持ちこたえられるかな」


勘兵衛:「・・・・・・」


 鬼燕:「くらえ!」



鬼燕がコートを羽ばたかせるとまたしても大量の黒い羽が勘兵衛目掛けて飛んで行く。

その数も速度も先程とは比較にならない。



勘兵衛:「ぐぁっ!」



最初の一薙ぎで二割程度は叩き落としたが残りには対応できず、勘兵衛の全身に

黒い羽が突き刺さる。



鬼燕:「そーらどうした、全然防ぎ切れていないぞ」


勘兵衛:「くっ!」


鬼燕:「もたもたしていると第二、第三の攻撃が

    貴様を襲うぞ、フハハハハ」


カリン:「勘兵衛!

    センセー何とかならないの!」


 柳田:「・・・・・仕方ない、私が準備してきたとっておきを出すとするか

    しかし、まさかこれを使う状況になるとはな」


カリン:「え? センセーまだ何か用意してたの?」


 柳田:「ああ、これだ」



そう言って柳田は自信ありげにアタッシュケースから一対の腕輪を取り出した。



 柳田:「その名も、"リミット解除の腕輪"だ」

 

カリン:「あ、今回はタマシーなんとかじゃないんだ」


 柳田:「そうだな、コイツは今のところ勘兵衛にしか使えないからな

    一般的な商品にはできないんだ」


カリン:「冗談かと思ってたけど本気で商売する気なんだね

    それで、その腕輪にはどんな効果があるの?」


 柳田:「うむ、勘兵衛は元々の霊力が恐ろしいほど強大でな

    いつもはタマシーキャッチャーによってリミッターを掛けて

    約3割にまで抑え込んでいるんだ」



そう言うと柳田は勘兵衛の方へと向き直る。


そこには鬼燕の攻撃に為す術なく防戦一方の勘兵衛の姿があった。

柳田は勘兵衛に向かって腕輪を投げた。



 柳田:「勘兵衛、この腕輪を両腕に装着しろ」



勘兵衛は腕輪を受け取ると言われた通り装着してみる。


すると身体中に突き刺さり、痛みで身体の動きを鈍らせていた黒い羽が全て消滅していく。



勘兵衛:「これは! 羽が消えて痛みが引いていく

    しかも全身に力が漲る!」


 柳田:「あの腕輪はリミッターを解除して

    残り7割の霊力を開放させる為のものなんだ」


 鬼燕:「何だこいつ、いきなり霊力が大きく増大しただと!?」


勘兵衛:「これなら、行ける!」


 鬼燕:「今更何をしても無駄だ! すぐにとどめを刺してやる!」



コートを羽ばたかせ、鬼燕が黒い羽の発射体勢に入る。


勘兵衛は両手で剣を握り直し、一瞬で素早く間合いを詰めると

踏み込みと同時に袈裟懸けに振り下ろした。



 鬼燕:「速い! こいつさっきまでとは────」



鬼燕は咄嗟に斬撃を防ごうとしたが先程まで全ての攻撃を吸収できていたコートでも

今回の一撃は防ぎ切ることが出来なかった。



 鬼燕:「うがぁっ! 」



肩口から腰に掛けて切り裂かれた傷口から霊力が緑色の泡となって吹き出した。



カリン:「勘兵衛の攻撃が通った!」


 柳田:「ふん、当然だ」



何故か自慢げな柳田。



カリン:「なるほど、あれが勘兵衛の本来の霊力ってことなんだね」


 柳田:「そういうことだな、しかし力は強大だが霊力の消費も激しくてな

    普段から全開にしておくとあっという間にガス欠になってしまうんだ」


カリン:「え? じゃあ、今の勘兵衛って恐ろしい勢いで霊力が減っていってるの?」


 柳田:「そうだな、もって15分というところかな」


カリン:「たった15分? 普段は丸一日動いても大丈夫なのに、たったの

    15分でガス欠なの?」


 柳田:「そうなんだ、霊体のときは全く問題無かったらしいんだが

    今の身体になってからは全開で霊力を発動させると

    消費量が激増してしまうみたいでな

    だから普段は身体を不自由なく動かせる

    限界の霊力まで抑えているというわけだ」


カリン:「そうだったんだ、じゃあ早くアイツを倒さないと

    勘兵衛が動けなくなっちゃうんじゃ・・・」


柳田:「ああ、だがその心配は無さそうだ」


カリン:「え?」


柳田:「もう、ほぼ決着がついたみたいだからな」



勘兵衛の一撃により甚大なダメージを受けた鬼燕はその場に膝を付く。

傷口からは止め処なく霊力が流れ出ている。



 鬼燕:「くそっ 何故だ・・・攻撃を吸収しきれないとは

    私の方が貴様より・・・霊力は上だった・・・筈」


 柳田:「甘かったな、奥の手を用意していたのはお前だけじゃないんだよ」



仕留めたのは勘兵衛なのに、何故かしたり顔で近付いてくる柳田。



 鬼燕:「貴様の・・・仕業か、最初は・・・力を・・・抑えていたのだな

    私とした・・・ことが・・・見事に騙されたと・・・いうことか」



霊力が不足して鬼燕の身体が半分消えかかっている。



 柳田:「お互い様だろ、仲間を燃料タンクにしたくせに

    こんな面倒なやつが現れるとは思わなかったぞ

    それで、まだやるのか? 

    見たところお前もう戦えそうにないけどな」

 

 鬼燕:(くそ、ここまでダメージを負うのは想定外だ、不本意だが一旦撤退するか・・・)



勘兵衛に敗れた鬼燕が動けなくなったのを確認してずっと建物の影からこちらの様子を

心配そうに見ていた翔太と優太が近付いてきた。



 翔太:「悪霊はもうやっつけたの?」


 柳田:「おう、勘兵衛が返り討ちにしてやったところだ」


 優太:「勘兵衛すごーい!」


 鬼燕:(!! この霊力の波動、間違いない、このガキ共が私の"探しもの"だ

    まだ運の流れはこちらにある!)



鬼燕は残りの霊力を振り絞り、疾風のような速さで翔太と優太に迫る。



勘兵衛:「何! まだそんな速さで動けるのか」


 柳田:(しまった! ヤツの狙いは最初から翔太と優太だった!)

    「いかん、奴を止めろ勘兵衛!」


 鬼燕:「もう遅い、こいつらは頂いていく!」



鬼燕の手が翔太と優太に迫る。

二人は恐怖で固まり身動きが取れない。


そのとき、突然鬼燕の行く手を阻むように光の玉が出現した。


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