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さえないおっさん魔術師は役不足と初心者パーティーを追放される  作者: 水源


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10/17

第10話 ゴブリン戦隊に襲われるおっさんは間違いなく魔術師である

 ――数日後。


 神界。


『…………』


『…………』


 白き神と黒き神は、地上を見下ろしていた。


『単純な強さでは駄目だった』


『はい』


『変身能力でも駄目だった』


『はい』


『ならば、今度は連携だ』


 黒き神が拳を握る。


『五人ならば勝てる』


『……五人ですか?』


『そうだ』


『一人で駄目だったから五人』


『そういうことだ』


『……発想が雑になっていませんか?』


『気にするな』


 そして。


 地上。


 ドレヴァンツは、いつものように修行をしていた。


「ふっ!」


 ドズンッ!


 巨大な岩を地面に叩きつける。


「……まだまだですね」


 そのとき。


「待てぇぇぇい!」


 森の奥から叫び声が響いた。


 ドレヴァンツが振り返る。


 五人のゴブリンが現れた。


 赤。


 青。


 黄色。


 緑。


 黒。


 それぞれ装備も性格も違う。


 中央に立つレッドが、いきなり拳を突き上げた。


「俺たちは!」


 五人が並ぶ。


「ゴブリン戦隊!」


「ゴブレンジャー!」


 ――ドンッ!


 背後で爆発。


「…………」


 ドレヴァンツが感心する。


「すごい登場ですね」


「そこか!?」


 レッドが叫ぶ。


「俺はレッド! 考えるより先に殴る!」


「それは胸を張って言うことではない」


 青いブルーが冷静に突っ込む。


「俺はブルー。敵の動きを見て、隙を突く」


 黄色のイエローが手を上げる。


「私はイエロー! みんなを元気にする支援担当!」


「戦闘中におしゃべりが多いのが欠点だ」


 緑のグリーンが呆れた顔をする。


「僕はグリーン。みんなを守る」


 そして。


 最後にブラック。


「俺はブラック」


 五人を見る。


「全員を生かして帰す。それが俺の役目だ」


 ドレヴァンツは頷いた。


「皆さん、それぞれ役割が違うんですね」


「当然だ!」


 レッドが笑う。


「俺が敵を引きつける!」


「俺が、その隙を狙う」


 ブルーが続ける。


「私が遠くから援護する!」


 イエローが手を振る。


「僕が敵の攻撃を受け止める」


 グリーンが盾を構える。


「そして俺が全員を動かす」


 ブラックが構える。


「これがゴブレンジャーだ!」


「なるほど」


 ドレヴァンツも構えた。


「では、お願いします」


「行くぞ!」


 レッドが真っ先に飛び出した。


「うおおおおお!」


 巨大な拳を振り下ろす。


 ドレヴァンツが受け止める。


「どうだ!」


「重いですね」


「まだまだ!」


 レッドは一切守らない。


 ひたすら攻撃する。


「俺が敵を止める!」


 その瞬間。


「今だ!」


 ブルーが横から飛び込む。


 レッドの攻撃で生まれた死角を正確に狙う。


「速いですね」


 ドレヴァンツが身体をひねる。


 ブルーの蹴りが空を切る。


「避けると思った」


「では、次です!」


 イエローが後方から叫ぶ。


「いっくよー!」


 バシュッ!


 遠距離攻撃が飛んでくる。


 ドレヴァンツは横へ跳ぶ。


「レッドが敵を止めて、ブルーが接近。そこへ私が攻撃!」


 イエローが楽しそうに笑う。


「完璧でしょ?」


「はい。分かりやすいです」


「……なんか嫌な予感がする」


 ブルーが呟いた。


 そして。


 ドレヴァンツの着地点へ、グリーンが回り込む。


「そこ!」


 盾を構える。


「逃がさない!」


 ドレヴァンツの進路を塞ぐ。


 さらに。


「レッド、三歩下がれ!」


 ブラックが指示する。


「ブルーは右!」


「了解!」


「イエローはそのまま援護!」


「任せて!」


「グリーンは中央を維持!」


「分かった!」


 五人が一斉に動く。


 レッドは敵を引きつける。


 ブルーは隙を突く。


 イエローは援護する。


 グリーンは仲間を守る。


 ブラックは全員を動かす。


 それぞれの性格そのものが、そのまま戦闘スタイルになっていた。


 ドレヴァンツは攻撃を避けながら、嬉しそうに呟く。


「……面白いです」


「何がだ!」


 レッドが叫ぶ。


「皆さんの個性が、そのまま戦い方になっています」


 ドレヴァンツの目が輝く。


「レッドさんは迷わないから、攻撃に集中できる」


「おう!」


「ブルーさんは冷静だから、敵の隙を見つけられる」


「……なるほど」


「イエローさんは周囲をよく見ているから、援護が上手い」


「えへへ」


「グリーンさんは仲間を守ることを最優先している」


「それが僕の役目です」


「そしてブラックさんは、全員を見ています」


 ブラックが頷く。


「だからこそ」


 ドレヴァンツが一歩踏み込む。


「ブラックさんだけが、全員の動きを止めることもできます」


「……!」


 ブラックの顔が変わった。


「そこに気づいたか」


「はい」


 ブラックが叫ぶ。


「全員、距離を取れ!」


 五人が一斉に離れる。


 ドレヴァンツが追う。


「レッド、行け!」


「おう!」


 レッドが突っ込む。


「ブルー!」


「分かった!」


 ブルーが回り込む。


「イエロー!」


「撃つよ!」


 遠距離攻撃。


「グリーン!」


「任せて!」


 盾でドレヴァンツの動きを止める。


 そして。


「今だ!」


 ブラックが叫ぶ。


 五人の攻撃が一点に集中した。


 ドォン!


 地面が揺れる。


 土煙が舞う。


「やったか!?」


 レッドが叫ぶ。


「まだだ」


 ブラックが冷静に答える。


「油断するな」


 土煙の中から。


 ドレヴァンツが歩いて出てきた。


「素晴らしいです」


「無傷!?」


 ブルーが驚く。


「でも」


 ドレヴァンツが構える。


「皆さんの戦い方は、とても参考になりました」


「…………」


 五人が嫌な予感を覚える。


「少し試してみてもいいですか?」


「何を?」


 ドレヴァンツが走った。


 まずレッドのように、真正面から突っ込む。


「うおおおおお!」


 レッドが目を見開く。


「俺の真似!?」


 次の瞬間。


 ドレヴァンツの姿が消える。


「速い!」


 ブルーのように側面へ回る。


 さらに。


 イエローのように遠距離攻撃を放つ。


「遠距離まで!?」


 そして。


 グリーンのように防御姿勢を取る。


 最後に。


 ブラックのように全員の位置を把握する。


「レッド、右」


「え?」


「ブルー、三歩下がってください」


「はい?」


「イエロー、今です」


「ええ!?」


「グリーン、そこをお願いします」


「分かりました!」


「ブラックさん」


「俺?」


「指揮をお願いします」


「…………」


 ブラックが固まった。


 ドレヴァンツが笑う。


「僕も五人で戦ってみたいです」


「いや!」


 ブラックが叫ぶ。


「お前は一人だろう!」


「そうでした」


「忘れていたのか!?」


 しかし。


 ドレヴァンツは一人で五人分の動きを再現していた。


 レッドの豪快さ。


 ブルーの冷静さ。


 イエローの援護。


 グリーンの防御。


 ブラックの指揮。


「…………」


 五人が沈黙する。


 そして。


 レッドが笑った。


「すげえ!」


 ブルーも苦笑する。


「完璧に特徴を掴まれている」


 イエローが嬉しそうに言う。


「私のこともちゃんと見てくれてたんだ!」


 グリーンが頷く。


「……強いだけじゃないんだな」


 ブラックだけが頭を抱えた。


「俺たちが十年かけて身につけた連携を……」


 ドレヴァンツは首を傾げる。


「十年ですか?」


「そうだ」


「では、もっと教えてください」


「…………」


 ブラックは遠い目をした。


「敵に教えることではないんだが……」


 そのとき。


 レッドが拳を握った。


「まだだ!」


 五人が一斉に振り返る。


「俺たちには!」


「必殺技がある!」


 五人の武器が合体していく。


「ゴブレンジャー・バズーカ!」


 巨大な砲身が完成した。


 レッドが出力を担当。


 ブルーが照準。


 イエローが弾道計算。


 グリーンが砲身を支える。


 ブラックが発射タイミングを決める。


 まさに五人の個性を一つにした必殺武器だった。


「これが俺たちの全力だ!」


「ゴブレンジャー!」


「ファイナル!」


「バズーカァァァァッ!」


 ドォォォォン!


 巨大な光弾が飛ぶ。


 ドレヴァンツは拳を握った。


「では」


 ドンッ!


 正面から殴った。


 光弾が空へ吹き飛んでいく。


「…………」


 五人が呆然とする。


 レッドが呟いた。


「やっぱり、あれしかねえ」


 五人が空を見上げる。


「最終兵器だ!」


 大地が揺れる。


 巨大な影が山の向こうから姿を現した。


「巨大合体!」


「ゴブレンジャーロボ!」


 ズシィィィン!


 巨大ロボが立ち上がった。


 ドレヴァンツが目を輝かせる。


「……乗ってみたいです」


「駄目だ!」


 ブラックが即答した。


「絶対に駄目だ!」


「お願いします」


「駄目だ!」


「一度だけ」


「…………」


 数秒後。


「……一度だけだぞ」


「ありがとうございます!」


 ブラックは思った。


(なぜ俺は許可した?)


 こうして。


 ドレヴァンツは巨大ロボの操縦席へ乗り込んだ。


「俺は操縦も力だ!」


 レッド。


「無駄な動きをするな!」


 ブルー。


「レーダーを見てね!」


 イエロー。


「機体を壊さないように!」


 グリーン。


「俺の指示に合わせろ!」


 ブラック。


「はい!」


 ドレヴァンツがレバーを握る。


 ゴブレンジャーロボが動き出す。


 右腕。


 左腕。


 歩行。


 旋回。


 跳躍。


 すべてが滑らかだった。


 そして。


「皆さんの個性を合わせると……」


 ゴブレンジャーロボが動く。


 レッドの力強いパンチ。


 ブルーの高速移動。


 イエローの精密射撃。


 グリーンの防御。


 ブラックの戦術。


 五人の個性を、一人で完全に再現した。


「…………」


 五人は絶句した。


 そして神界。


『…………』


『…………』


『個性まで覚えたぞ』


『はい』


『戦闘スタイルまで完全に再現している』


『はい』


『しかも巨大ロボまで使いこなしている』


『はい』


 黒き神が頭を抱える。


『……駄目だ』


『はい』


 地上では。


「ドレヴァンツ殿!」


 レッドが叫んでいた。


「俺たちと一緒に修行しようぜ!」


「はい!」


 こうして。


 ゴブリン戦隊ゴブレンジャーは。


 神々の刺客から。


 ドレヴァンツの修行仲間へと変わった。


 ただし。


 ブラックだけは、まだ納得していなかった。


(……俺たち、何をしに来たんだ?)

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