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第三話 七人の勇者は、王国より先生を選んだ



現在、七人全員が王城を占拠しています。


騎士から告げられた言葉の意味を理解するまで、少し時間がかかった。


王城を、占拠。


俺が知っている占拠という言葉は、武装した者が建物を支配下に置く行為を指す。


魔王軍を撃退したばかりの七人の勇者が、王国の中心である城を支配している。


それはもう、反乱ではないだろうか。


なぜそんなことになった。


先生が追放されたと知ったからです。


それは先ほど聞いた。


俺が知りたいのは、その後どうして王城を占拠する流れになったのかだ。


騎士は額の汗を拭った。


七人の勇者様は、本日早朝に王都へ帰還されました。



王都の正門前には、何万人もの民衆が集まっていた。


魔王軍を退けた英雄たちを迎えるためだ。


先頭を歩いていたのは、勇者リリア。


金色の髪を揺らし、魔王の軍勢を一人で退けた聖剣を腰に下げている。


その隣には剣聖エリシア。


さらに聖女セレナ、賢者ルシア、竜騎士フィオナ、精霊使いマリア、影の英雄クロエ。


七人はそれぞれ、王国一つを相手にしても勝てるほどの力を持つ。


だが、彼女たちは民衆から向けられる歓声に手を振ることもなく、険しい表情で王城へ向かっていた。


城門前で、新国王と宰相が七人を出迎えた。


よくぞ帰った、王国の英雄たちよ。


国王は両腕を広げた。


七人が勝利したことで、王国の未来は守られた。盛大な祝宴を用意している。まずは城へ入り、そなたたちの功績を。


リリアは国王の言葉を最後まで聞かなかった。


アレン先生は、どちらにいらっしゃいますか。


国王の表情がわずかに固まった。


戦いへ向かう前、七人は必ず王都へ帰ると俺に約束していた。


そして帰還したら、全員で食事をしながら遠征の話を聞かせることになっていた。


七人にとっては、祝宴より先に果たすべき約束だったらしい。


アレンなら、王国育成官を解任した。


国王が何でもないことのように答えた瞬間、城門前から音が消えた。


数万の民衆がいたにもかかわらず、誰一人として声を発しなかった。


リリアは、表情を変えなかった。


解任。


ああ。戦闘能力を持たぬ者へ、これ以上高額な報酬を支払う理由はない。


では、今はどちらへ。


辺境の廃学院を与えた。すでに王都を去っている。


その直後。


王都全体を覆う結界が、激しく震えた。


賢者ルシアから漏れ出した魔力が、王城周辺の空気を歪ませていた。


剣聖エリシアは腰の剣へ手を置いている。


聖女セレナは目を伏せ、静かに祈っているように見えた。


だが彼女の足元から、王城の床を覆うほど巨大な聖法陣が広がり始めていた。


竜騎士フィオナの背後では、上空を飛んでいた古竜が城へ向かって降下している。


精霊使いマリアの周囲には、炎、水、風、土の上位精霊が次々と姿を現した。


クロエだけは、その場から消えていた。


数秒後。


国王の背後に立っていた宰相の首元へ、黒い短剣が触れた。


先生を、追放した。


リリアの声は静かだった。


怒鳴ってはいない。


剣を抜いてもいない。


それなのに、その場にいた騎士たちは誰一人として動けなかった。


国王は、七人の反応が理解できないようだった。


そなたたちは英雄だ。アレンは、そなたたちを育てるために雇われていた職員にすぎぬ。


七人の視線が、同時に国王へ向けられた。


城門前の石畳に亀裂が走った。


勇者リリアは、幼い頃に魔力が少ないという理由で捨てられた。


俺は彼女が外から魔力を取り込み、聖剣へ流す才能を持っていると見抜いた。


剣聖エリシアは、間違った姿勢で剣を振り続け、身体を壊しかけていた。


俺は彼女に合った剣術を、一から作り直した。


七人全員が、誰にも価値を認められなかった時期を知っている。


そのとき、彼女たちを拾い上げたのが俺だった。


私たちの先生を、職員にすぎないと。


リリアが一歩、国王へ近づいた。


その場にいた近衛騎士たちが剣を抜こうとした。


だが、柄へ触れる前に全員の武器が砕け散った。


エリシアが剣を振った様子はなかった。


騎士たちには、彼女の動きが見えなかっただけだ。


国王陛下。


聖女セレナが、穏やかな声で告げた。


私たちはアレン先生の教え子です。王国に雇われた兵器ではありません。


魔王軍との戦いが終わった以上、王国から命令を受ける理由はなくなりました。


賢者ルシアが指を鳴らす。


王城を守っていた魔法結界が、一瞬で消滅した。


王都中の魔術師が何十年もかけて作り上げた防御を、たった一人で解除したのだ。


竜騎士フィオナは窓の外を見上げる。


上空では古竜が王城を囲み、いつでも攻撃できる体勢を取っていた。


精霊使いマリアは、怯える兵士たちへ優しく微笑んだ。


安心してください。先生が無事であると確認できるまで、誰にも危害は加えません。


無事でなければどうするのか。


その場にいた全員が同じ疑問を抱いたが、誰も口にはしなかった。


リリアは国王の前を通り過ぎ、王城へ入った。


先生の居場所と、追放を決めた者全員の記録を確認します。


勝手な行動は許さぬ。


国王が叫んだ。


リリアは振り返る。


では、止めてください。


国王は何も言えなかった。


こうして七人は王城へ入り、執務室、通信室、転移魔法陣を次々と確保した。


王国側の人間を傷つけることはなかった。


ただし、国王と宰相を含め、城にいた全員が七人の許可なしでは外へ出られなくなった。


それを王城の占拠と呼ぶべきか、七人による事情聴取と呼ぶべきかは、現在も議論が続いているらしい。



そこまで聞き、俺は大きく息を吐いた。


あいつらは、何をしているんだ。


先生のためかと。


頼んでいない。


七人の気持ちは嬉しい。


俺が追放されたことへ怒ってくれるのも分かる。


だが、王城を占拠する必要はない。


国王たちへ直接話せば済むことだ。


騎士は何とも言えない表情を浮かべた。


すでに、直接お話しされた結果が現在の状況です。


そうだった。


話し合いの途中で王城を占拠している。


今すぐ王都へ戻るべきだろうか。


しかし、馬車で十日かかる。


俺が到着する頃には、城が七人の所有物になっている可能性すらある。


手紙を書こう。


俺がそう言うと、騎士の顔が明るくなった。


王城へ届けてくれるか。


もちろんです。


俺は荷物の中から紙とペンを取り出した。


七人へ。


心配をかけて申し訳ない。


俺は元気にしている。


学院長として三人の生徒を迎え、今日から訓練を始めた。


王城を占拠する必要はないので、すぐに国王たちを解放すること。


戦いを終えたばかりなのだから、きちんと休むように。


書き終えた手紙を騎士へ渡す。


騎士は両手で受け取った。


必ずお届けします。


頼んだ。


騎士たちは馬車を反転させ、王都へ戻っていった。


その様子を見送っていたミレイユが、俺の袖を引く。


先生。


どうした。


七人の勇者様は、先生のことが大好きなのですね。


俺は少し考えた。


教師としては、慕ってくれていると思う。


ミレイユ、セシリア、ノエルの三人が顔を見合わせた。


なぜか全員、納得していないようだった。


その夜。


王都から手紙を届ける騎士とは別の道を使い、一頭の古竜がエルガ村へ向かって飛んでいた。


古竜の背に乗っているのは、七人のうち最も行動が早い竜騎士フィオナ。


王城に残った六人には、先生の安全を確認してくるとだけ伝えてある。


だが彼女の荷物には、鎧や武器だけでなく、生活用品が大量に詰め込まれていた。


辺境の廃学院で暮らすための荷物だった。


先生が新しい学校を始めたのなら、竜騎士科が必要になりますよね。


翌朝。


まだ誰も起きていない学院の運動場へ、王国最強の古竜が降り立った。


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