表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
触れる罪〜殺人に同行する女〜  作者: 後星/畑中葵
触れる罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/12

モデルのような客

佐々木國則は店内に綺麗に並べられた、靴の数々を見渡していた。


彼がオーダーメイド靴の店“SASAKI”を銀座に開店したのは3年前。

それまでは大手靴屋の販売員として働いていたが、意を決して退職し、貯金を全てつぎ込んで念願の店を構えたのがこの”SASAKI”であった。

最初は遠かった客足も、少しずつ常連が増え、完成した靴を嬉しそうに持ち帰る客を見るたびに、佐々木はこの仕事に満足していた。


カランカラン―。

入口の鈴が鳴り、佐々木は振り返った。


「いらっしゃいませ」


にこやかに声をかけると、そこには茶色いロングコートを着た男が立っていた。スーツに黒い革靴、整った顔立ちとスタイルの良さから、佐々木は思わず「モデルみたいだな」と思った。


「革靴のオーダーメイドでしょうか?」


「あぁ、いえ」

男は少し恥ずかしそうに微笑んだ。


「実は友人に靴をプレゼントしようと思っていまして。スニーカーを」


「ほほう。それは良いですね」

さぞかし大切な友人なんだろうな、と佐々木は思った。


「どのようなスニーカーになさいますか?」

佐々木はスニーカーの展示棚へ客を案内した。


「うーん、柄は... あぁ、これ良いデザインですね」

男が指さしたのは、藍染めされたエレファントレザーのロートップスニーカーだった。


「そちらは藍染めのエレファントレザーを使ったスニーカーになります。綺麗な群青色ですよね」


「実に綺麗だ......これにしようかな」

男は靴を手に取り、感触を確かめながらつぶやいた。


「足のサイズはどうなさいますか?」


「確か...... 26cm位だったかな。身長は僕より少し小さめで......そう、あなたぐらいの」

男は佐々木を見て言った。


「では26.5cmでお作りしますね。26cmの方でも問題なくお履きいただけるかと思います」

佐々木は26.5cmとメモを取った。


「全てを1から制作するか、既存の木型を使用するか、どちらになさいますか?」

佐々木はオーダーメニューについて書かれた紙を見せながら尋ねた。


「あまり時間がなくて......既存のものを使っていただこうかな」

男は“made to order”のプランを指さした。


「承知しました。完成まで2〜3か月ほどいただきますので、4月下旬頃になります。完成致しましたらご連絡差し上げますので、お名前とご連絡先をお願いします」

佐々木は紙を挟んだボードとペンを手渡した。男は名前と電話番号を書き、佐々木にボードを返した。


「ありがとうございます。受け取りの際はこちらの紙をお持ちください」

佐々木はそう言い、”お客様控え 東雲様”と書かれた紙を手渡した。



「ただいま」


霧島昴は玄関で黒い革靴を脱ぎ、茶色いロングコートを脱ぎながら部屋へ入った。


「おかえり」


ソファでくつろいでいた影山朔良が振り返る。


「“良い靴”見つかった?」


「あぁ。藍染めの靴で、綺麗な群青色をしていたよ。しかし完成までに2〜3か月かかるらしい」

昴はコートを椅子に掛け、朔良の隣に腰をおろした。


「やっぱり、オーダーメイドだとそれぐらいかかるのね、普通のスニーカーでも良かったんじゃない?」朔良は大きな目で昴を見つめる。


「朔良、これは僕の“芸術”のためさ」

昴は強い口調で言い、彼女の肩に左腕を回した。スーツの袖に隠れていた手首の傷跡がわずかに見えた。


「楽しみにしてる」

朔良は昴の左手を両手で包み、自分の頬にそっとあてた。


彼女はどこか寂しげな目をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ