文明の力 風呂
「風呂に入りたい」
ずっとずっと我慢してきた。
この世界では水浴びだけで済ます。
頭も洗わない。
全て魔法でどうにかする。
浄化の魔法があるからだ。
これだけで体は綺麗になる。
「だが決して気分までは綺麗になったわけではないんだよ」
「あなたが言うならそうなのね
わかった、頑張って魔法機構を作ってみるわ」
忙しいのにすまないな。
シャルロッテが手伝ってくれるようで良かった。
湯沸かし器と水はどうにかなりそうだ。
ならば俺は建物をどうにかする。
いつもなら全てカルナ達に任せていたがこれは俺たちの家の問題だ。
今も流浪者を受け入れる家を作っている彼らに仕事を任せるわけには行かない。
改装も念頭に入れつつ自宅とつなげるように風呂場を作る。
広さは脱衣所も入れて四畳ほど。
決して広くはないがとても贅沢になると思う。
浴槽は木製。
森から切り出した木材をつなげて形を整える。
防水加工についてはシャルロッテの作った液体を塗ってみる。
「多分防水くらいならできると思うわよ
元々が家の雨漏りを止めるものだから」
考案者はシャルロッテらしい。
ベストセラーなのか説明が生き生きとしている。
まぁ、説明を聞くだけならかなり実用的なものだしな。
「でもね、副作用があるのよ」
ほらきた。
やっぱりあると思った。
「別に心配するほどのことでもないわよ
ちょっっっと、性質が不思議なだけよ」
………日光に当たると変色する?
それだけか?
ならそんなに恥ずかしがらなくともいいじゃないか。
「違うのよ………
副作用があるのは錬金術師としての失敗
それに色が…………」
「色が?」
「不死の沼みたいな色になるのよ」
そんなにか?
俺は見たことがないからわからないがシャルロッテが嫌がるほど汚いのか。
「………見せてあげるわよ」
結論
二度と見たくない。
色は本当に不死の沼だった。
なんかこう……、緑っぽい黒だった。
それだけならまだ良いが匂いがひどい。
なんとも言い難いものだった。
似たようなものが思いつかないほどだ。
「ねっ、言ったとおりでしょ」
……あぁ、気をつけて使わせてもらうよ。
一瞬使わないことも考えてしまったがここまでやってもらって”やっぱいいです”なんて言えない。
大丈夫だ。
俺なら使いこなせるはずだ。
シャルロッテのためにも失敗は許されない。
何事もチャレンジだ。
建物について。
基礎はできている。
換気するためのシステムもバッチリだ。
だから内装に手を加える。
故郷を思い出してみる。
「……すのこがあったかな」
床は一部板貼りしているがどうしても水がこぼれるためすぐ痛むだろう。
「ならばいっそのこと脱衣所を全て土で固めるか」
イメージはコンクリだ。
水分をうまいこと誘導して外に逃したい。
パイプの代わりにタケもある。
使わない手はないだろう。
まぁそんなことをやりながらも風呂は完成した。
思ったよりも上手くできたらか思わず笑みがこぼれる。
「随分ご機嫌ね
……さてはワタシと一緒に入れたのが嬉しかったの?」
……それもあるだろうな。
浴槽を広くしておいて良かった。




