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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第三章 ヴァラキア編

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巨神兵動く

「では、話を始めようかの。これは…」

スリン王が話し始めたのをグンナル七世王が軽く手をあげて、止めさせた。

「儂から話そう。」

グンナル七世王の声は相変わらず重低音で迫力がある。

それと同時に人を落ち着かせるどっしりとした安心感もある。

ドワーフ諸王の宗主自ら説明してくれるんだ。

余程、重要な話なんだろう。

神々の宿木で話をした時は、アルベリッヒをこき下ろす冗談を言ったりして大笑いしたが、今日はそんな様子はない。

「創造神様がこの世に我等ドワーフとノームをお創りになられた際、頑健な身体と心を我等に与え給うた。」

グンナル七世王の話は意外な話題から始まった。

「しかし、エルフのように魔術に長けた者とはせず、鉱物の採掘と細工に長けた者とされた。ノーム族にはドワーフ族より魔術の才を与え給うたが、エルフには及ばぬ。」

ドワーフはエルフが大嫌いだから、エルフのことをもっと悪く言うかと思うが、事実は事実として語っている。

流石は王様だ。

「そして、各地の鉱脈に潜って暮らす我等が種族としてまとまれるよう神々がくだされたのがこの『遠信の水晶球』じゃ。」

それはすごい宝物だ。

まさに『至宝』と呼ぶにふさわしい。

「先程、スリンが言った通り、神々の宿木にもある。そなた達と会った部屋の主人を覚えておるか?ノームの爺さんだ。」

覚えている。

アルンの部屋と勝手に作った秘密の抜け道で繋がった部屋に住む爺さんだ。

「あの者が神々の宿木に置いた水晶球を保管しておる。」

あのノーム爺さん、やっぱり大物なんだな…

「報せがあったのは昨日の朝じゃ。ヴィーラ殿は昨日の早暁、ワイバーンで白角城を強襲したそうじゃ。」

ヴィーラは俺達と話してた通りの日に決行したんだな。

「良いタイミングじゃった。ライオスエルフ共は北の荒地で蜂起したそなたらの軍勢に反応して、神々の宿木にいたほぼ全ての兵を出陣させた後じゃったからな。」

ここまでは作戦通りだったのか。

「ところでそなたらの狙いはなんだったのじゃ?」

「それは…」

俺は少し悩んだ。

『送還の鍵』のことはあまり知られていない。

しかし、ドワーフ達に教えてまずいことになるだろうか?

いや、寧ろ、俺達の懸念を伝えた方が良い。

折角、加勢してもらったんだ。

事情を伝えた方が味方になってくれる。

俺はソニアが神々の宿木で幽閉されていると考えていたことと『送還の鍵』のことを伝えた。

そして、それらを揃えることでアルベリッヒ上級王が召喚者を操ろうと画策していると言う懸念も。

グンナル七世王は目を閉じて俺の話をじっくり聞いていたが、話が終わると深くため息をついた。

「確かに奴ならやりそうじゃな。」

「ところで、ヴィーラはどう失敗したと言うのです?」

暫く、沈黙が続いた。

なんだ?

グンナル七世王だけでなく、ロフト王もスリン王も重々しい表情で腕を組んで俯いている。

やがて、グンナル七世王が重い口を開いた。


「巨神兵が動き出しおった。」


俺達はグンナル七世王の言葉を理解するのに時間がかかった。

また、その言葉が意味することを理解するのに時間がかかった。

頭が追いつかない。

いや、頭が理解することを拒否しようとする。

ディアリンが激しく音をたてて立ち上がった。

俺もだ。

隣に座っているフレッドはこぶしを固く握っている。

そりゃそうさ。

巨神兵が動いたと言うことは…

それはあまりに恐ろしいことなんだ。


神々の宿木を訪れた時、あの遠近感がおかしくなりそうな射手の巨像を『あれは巨神兵の抜け殻』だとヴィーラが教えてくれた。

巨神兵の抜け殻だったんじゃないのか?

どうして抜け殻が動き出す。

それは…

それが意味することは…

神々が再びこの世に降臨したんだ。


「射手の巨神兵は巨大な魔法の矢を一度放っただけで三頭のワイバーンを一瞬で消し去った。ヴィーラ殿は恐らく先頭のワイバーンに乗っていたのであろう。そのワイバーンは無事であった。賢い御方だ。即座に退却されたわ。」

グンナル七世王の言葉で思い出した。

神々の宿木で見た巨神兵の抜け殻は弓を引いてはいたが矢はなかった。

グンナル七世王は魔法の矢と言った。

エルフの矢のように魔力を結集して模ったものだとしたら…

大きさからして、あのアルベリッヒ上級王のエルフの矢を遥かに上回る規模だ。

ワイバーン三頭を一瞬で消し去ると言うのも頷ける。

神ならばそんなこともあっさりできてしまうのだろうか?

人間には到底できることではない。


第二次暗黒大戦の終盤、神々は巨神兵に憑依しこの世界で争った。

土地を奪い合い、ついには引きちぎってしまった。

神々が相争った結果、当時のエルフ王国の半分は砕けて海に沈んでしまったんだ。

俺の故郷カレドニアも当時はエルフ王国の一部で、フィヨルド地形の複雑な海岸線は神々が大地を引き裂いた跡だと言われている。

今再び、神々が降臨して力を振るえばどれだけの被害が出るかわからない。


「そんな…そんなまさか…」

俺は狂おしい思いだった。

口が強張り、思うように言葉にできない。

「それは…それは本当のこと…なんですね?」

勿論、俺だってドワーフ諸王が嘘をつくなんて思ってはいない。

ただ、嘘であって欲しかったんだ。

グンナル七世王は俺の無礼に怒ることもなく、ただ厳かに答えた。

「然り。」


巨神兵が動いた。

即ち、神々が再び降臨してこの世界で暴れる前兆だ。

世界は本当に破滅の淵にあったんだ。

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