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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第三章 ヴァラキア編

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北の荒れ地の戦い(上)

右手の山から吹き下ろされる風が巨岩の散らばる草原を通り抜け、淡い緑の草々をなびかせる。

俺達のいる平坦な街道はずっと先まで草原の中を続いていた。

左手には砂浜が近い。

満潮で波が砂浜を洗っていた。

遠くでカモメの物悲しげな鳴き声が聞こえる。


俺達はここを戦場にすることを決めた。

相手は最強のライオスエルフの軍勢だ。

兵力でもこちらは劣っていた。

斥候の知らせではアルフハイムを進発したライオスエルフの軍勢は約二千程だ。

俺達はバラン、バリンの手勢約五十、トロール族四十、緑の党に属するライオスエルフが約五十、カレドニア勢が約五百だった。

総勢で七百に満たない。

敵の半数以下だ。

しかもカレドニア勢の内、二百はほとんど訓練も受けていない農民兵だ。

寡勢の軍で戦うなら少しでも幅の狭い土地で戦いたい。

ここなら右手の山から突き出た丘が街道に迫っているので、北の荒れ地の中でも一番幅が狭い。

丘と海を盾にして挑む作戦だ。

因みに丘の上にはドワークの国ワッサーブルクの北門があるらしい。

中立を維持するドワーフ達は戦に手を出しはしないだろう。



「勇敢なるカレドニアの勇者達よ!よくぞこの地に集ってくれた!理不尽な王国に与する傲慢なライオスエルフの軍勢が我らが祖国カレドニアを掠める為にやって来る。この地で奴等を迎え討ち、美しき故郷カレドニアを守るのだ!」

アランの大声が響き渡る。

普段、あれだけ口数少ない男がこんな声を出せるのかと驚くばかりだ。

いや、俺はどちらかと言うと呆れている。

普段からもっと話してくれよ。

でも、流石はシンクレア一族の族長の御曹司。

なかなかどうして堂にいったもんだ!

アランの激にカレドニアの戦士達が手に持った武器を掲げておーっ!と呼応する。

次にトロールの軍勢とバリン、バランの軍勢が気勢を上げた。

トロール語独特のどこか獣の唸り声のような響きにオークやゴブリン達の野太い声が被さる。

ライオスエルフ達は静かだ。


丘の上で角笛が鳴った。

カレドニアの農民兵の一部を右手の丘の上に配置しておいた。

丘の上からは遠くまで見通せるからな。

角笛は敵が見えた合図だ。

軍勢が配置についた。

最前衛はカレドニア戦士の精鋭部隊とトロール族の半分、バリン、バランの手勢だ。

戦闘経験ではバリン、バランの手勢が一番豊富だ。

それに戦闘力抜群のトロール兵とカレドニア戦士の精鋭を合わせて編成した。

ルセ平野の戦いで魔王様は虎の子のトロール兵を最後までとっておいたが、今回はそんな余裕がない。

俺達が出しうる最強の部隊を最前衛に揃えたんだ。

その後ろにはディアリン達、味方に付いた緑の党のライオスエルフを配置した。

魔法による支援部隊だ。

俺やフレッドはここにいた。

フレッドはカレドニアから弓矢を持参してきた射手を率いている。


ライオスエルフの軍勢は整然と隊形を整えて進軍してきた。

エルフ達らしい繊細なデザインの鎧を纏っている。

まるで絵画を切り取ったような美しい軍隊だった。


射程距離に入るとライオスエルフ側から矢を放ってきた。

こちらも矢を放って対抗したが、こちらには射手があまりいない。

しかもフレッドの他は狩猟用の弓矢を持参してきたカレドニアの農民兵だ。

魔法による遠隔攻撃は一先ず控えた。

相手はライオスエルフなんだ。

魔法の大家が揃っている。

魔法封じの術を事前に施して、万全なはずだ。

乱戦になって奴らの魔法封じがおざなりになったタイミングを待つことにしている。

更に近づくと勇敢なカレドニアの戦士達が敵の軍勢に果敢に斬りかかった。

勇気がいることだ。

先鋒はライオスエルフからの魔法攻撃にさらされることは必至だからだ。

実際に半数がライオスエルフの軍勢から放たれた稲妻の術に倒れた。

凄まじい光景だった。

何百本もの稲妻が落とされたんだ。

俺は同じ故郷の同胞が稲妻に打たれてバタバタと倒れる姿に狂おしいほどの苦痛を感じた。

俺は内心『もうやめてくれ!』と叫んでいた。

しかし、カレドニアの戦士達は倒れた仲間達を踏み越えて進んでいく。

あれだけの稲妻の術を落とされても半数が敵の前衛に達したのは、カレドニア人の勇敢さに加え、こちらのライオスエルフ達の魔法封じのおかげだ。

勇敢な斬りこみのおかげでライオスエルフ軍の前衛が少し乱れた。

そこへ僅かな時間差で突撃を敢行したバリン、バランの手勢が斬りこんだ。

次は巨漢トロール兵の突撃だ。

時間差の突撃は犠牲者を多く出したがそれでも成功したと言える。

ライオスエルフ軍の前衛が大きく崩れたからだ。


前衛が混戦状態になった為、敵の後衛部隊は魔法や弓矢を放てなくなっている。

ライオスエルフ軍は召喚者共のように敵味方に関係なく攻撃するようなことはしない。

ライオスエルフ軍の魔法を封じたのは大きい。

魔法の撃ち合いになればこちらに圧倒的に不利だからな。

そろそろライオスエルフ軍の前衛が退却するはずだ。

今頃、混戦の不利に気付いているはずだからな。


さぁ!

そろそろだ!

圧倒的に不利な戦いだからといって、俺達だって黙ってライオスエルフ軍にやられてやるつもりはないんだ。

俺は海の方を見た。

トロール族のガレー船が物凄いスピードで陸地に向かってくる。

ガレー船が切る波の白さが目に刺さる。

トロール族の半分しか最前衛に配置しなかった理由はこれだ。

ガレー船は敵の中央部に近いあたりに乗り上げた。

乗り組んでいたトロール達が斧槍を手にライオスエルフ軍の横腹に突撃した。

これで敵は混乱した。


「今だ!」

俺やディアリン、緑の党のライオスエルフ達が一斉に魔法を放った。

敵は混乱状態だ。

混乱状態の中、集中して魔法を唱えることは、如何に魔法の達人であるライオスエルフ達であっても困難な筈だ。

つまり、これだけ奴等が混乱している今なら魔法封じも万全じゃないだろ!

これまで温存していた魔力を使い切る勢いで俺は稲妻の術を連発した。

古代魔法の修行でこれまでとは桁違いの魔法を放てるようになったんだ。

目にもの見せてやるさ!


最前衛も再度突撃した。

敵は大崩れだ!

これならいける!

例え寡勢であっても、相手を混乱させてしまえば勝てるのが戦だ。


この瞬間、俺達は勝利を確信した。

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