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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第三章 ヴァラキア編

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第五の召喚者

「忘れたの?ずっと一緒に旅してきたでしょ?ユキーナよ。仲間だったじゃない。」

違う。

俺が聞きたいのはそんなことじゃない。

「ヴィーラ。君はあの古城でユキーナと一緒に助けに来てくれたんじゃないのか?」

ヴィーラは驚いて言った。

「何を言っているの?彼女は元々あなた達の仲間でしょう?」

そうだ。

あの古城で突然ユキーナは現れてヴィーラと一緒に俺達の仲間に加わった。

だから、俺達はユキーナはヴィーラの仲間だと思っていたんだ。

でも、ユキーナはエルフのことも緑の党のことも何もわかってなかった。

それだけじゃない。

あの船の上でのやりとりだ。

ユキーナは言った。

『アルデアって国の名前?』

俺が言った。

『え?』

ユキーナは答えた。

『ううん。なんでもないわ。』

この世界の住人でアルデアのことすら知らないってありえるか?

俺は頭の中のモヤのようなものが急速に消えていくのを感じた。

どうして今まで気づかなかった?

ユキーナだって?

この世界の、少なくともウェスタリア地方の人名じゃない。

まるで日本人の名前のあだ名みたいじゃないか!

「あ!」

思わず声が出てしまった。

思い出した。

ずっと腑に落ちないでいたことに。

あの古城でヒカルは探知魔法をかけてこう言ったんだ。

『こんなとこに誰かいるよ?うーん、七人だ。』

あの時は気づかなかったが、今にして思えば、どうして七人なんだ?

あの時いたのはンダギ、ブロウ、エミィ、フレッド、ノルデル伯、ソニア、俺だ。

だから七人だと思っていたんだ。

きっとヴィーラ達は遠すぎて入ってないんだと。

そんなわけあるか?

ヒカルは召喚者だ。

探知魔法の力も凄いはずだ。

だったらヴィーラとユキーナを足せば九人だろ?

あの時、俺の胸は少し暖かくなった。

つまり俺は守護者のアミュレットに守られていた。

だから俺を探知できなかったとしても八人だ。

どうしてヒカルは七人と言ったんだ。

簡単だ。

ユキーナは味方だから数に入れなかったんだ。


「ユキーナ…お前、召喚者なのか?」

「やっと気づいた?おもしろーい。」

「ユキーナどうして…」

「どうしてって、自分で言ったじゃん。召喚者だって。」

ユキーナが笑みを浮かべる。

美少女の笑みだが、恐ろしい笑みだった。

「あたしは指方由紀奈。これまで通りユキーナでいいわ。道化師トリックスターの召喚者なの。すごいでしょ?誰も気づかない。私の能力はね、こうやって誰でもこちらが思った通りに騙されてくれるの!但し、同じ人には一度しか使えないのが欠点。」

「じゃあ、あの古城で?」

「そう!ショウとヒカルと一緒にあそこに行って、あんた達に合流したの。道化師トリックスターの能力を使ってね。あんた達にはヴィーラと一緒に来たと思わせて、ヴィーラにはあんた達の仲間だったと思わせたのよ!」

「ユキーナ!あなた、もしかして?」

ヴィーラは青ざめている。

「そうそう!緑の党の情報はありがとね!ヴィーラ。」

そうだ。

ユキーナはヴィーラから緑の党の見分け方を聞き出していた。

「あたしが全部カレイドに教えたのよ!」

ユキーナはまた微笑した。

「おかげですっごく感謝されたわ。」

「なんてことを…」

緑の党の党員が次々と捕らえられたのはユキーナが情報を流したからか!

そう言えばユキーナはやたらカレイドにひっついて話をしていた。

ユキーナと言えば話好き。

どこへ行っても誰彼構わず話をする…

違う。

思えば、俺達と合流した時はノルデル伯、ヴィーラの国ではカレイド、神々の宿木ではエルフ貴族達、最近ではドゥヴァン殿…

重要な話が聞けそうな人物にばかり話をしていた。

「ドゥヴァン殿にも随分と話をしていたな?」

「そうよ。だってこの状況に持っていきたかったんだもん。」

「お前が作戦を漏らしていたのか…」


「ダンカン悪いけど。あたし、暇じゃないの。」

敵の後方からエルフの一団が出てきた。

スヴァートエルフの一団だ。

馬を引いている。

エルフ達はソニアを縛り馬上に括り付けた。

「ソニア!」

「ダンカン!」

ソニアも叫ぶ。

しかし、エルフ達が素早くさるぐつわを噛ませてしまった。

「ソニア!助けに行く!」

俺は魔法を唱えようとした。

ユキーナが剣の切先をソニアに向けた。

「ダメよ。ダンカン。」

ユキーナも馬に乗った。

「ショウ、ヒカル、ユウ、セイヤ、この人達はあんた達の好きなようにしたら?あたしは用事があるのよ!」

そう言うとエルフ達の一団ともに去ろうとした。

「待って!あなた達!どうして?」

ヴィーラが叫んだ。

スヴァートエルフがどうして召喚者の味方をするのか?ってことだな。

裏切り者か?

「ふっ。ハイエルフの裏切り者がよく言うな!」

エルフ達は捨て台詞を吐いて、ユキーナととも走り去った。

「待て!」

俺達は追おうとしたが、召喚者共が行く手を阻む。

「おい!転生者君よ。なに無視してくれてんだよ?」

「お前だけは絶対に殺してやる。」

「お前を倒したら千ポイントなんだよ!」

「…」

ソニアが連れ去られてしまう!

そう思うと無意識に走り出してしまった。

俺には召喚者共など眼中になかったんだ。

何も考えられなかった。

ショウの斬撃、ヒカルの炎の玉、ユウの毒ナイフ、セイヤの大矢が俺に向かってくる。

次の瞬間、左右から影が目の前に現れ、召喚者達の攻撃を跳ね返した。

魔王様と半神レネだ。

魔王様は片手で剣を持ち、ショウの斬撃を受け流し、片手でヒカルの炎の玉を受け止めた。

半神レネは大鎌を目に見えないようなスピードでふるい、ユウの毒ナイフとセイヤの大矢を弾き返した。

「焦るな!」

魔王様が叱咤する。

召喚者共の上から矢の雨が降った。

続いて光の矢だ。

フレッドが率いる射手隊とヴィーラのエルフの矢だ。

召喚者共の悲鳴が響く。

そこへ容赦なく魔王様と半神レネが斬り込んで行った。

召喚者共の背後にいた王国軍も殺到する。

こちらも同じだ。

あとは乱戦になった。

日暮れと共に互いに軍を引いた。

ソニアは取り戻せなかった。

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