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転生者なんて負け組だ  作者: 荒野旅人
第四章 最後の戦い編

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再び神々の宿木へ

魔王様との謁見にはヴィーラ、アラン、ディアリンと俺の四人で出向いた。

「ほう。そなたら四人なのか?」

魔王様が興味深げに言った。

「はい。今日は私達四人でご相談に上がりました。」

日中、仲間達と散々話し合った末に決めた面子だ。

今回俺達がやろうとしていることをするにはこの四人が最適だと言うことになった。

「ふむ。そうか。では話を聞こうか?」

「はい。神々の宿木へ行こうと思うのです。」

「神々の宿木へ?それはまた危険なことを考え出したな?」

まぁ、魔王様にはそう言われるよな。

前回、ヴィーラがスヴァートエルフの兵を率いて魔王様から貸与されたワイバーンで強襲を試みて失敗しているからな。

「何故、危険を冒して神々の宿木へ行くのだ?ソニア殿なら無事に連れ戻せたではないか?ソニア殿がいなければアルベリッヒも『送還の鍵』を使えないのだぞ?」

そう。

前回の目的はそれだった。

でも、今回は違う。

今回の目的は神々の門を破壊することだ。

レネ様の言う通りなら神々の門とやらを破壊すれば、巨神兵を止められるはずだ。

巨神兵さえ止めてしまえば、後は…

俺は…

しっかりしろ。

俺。

俺は決意したじゃないか。


「神々の宿木に潜入して神殿にある神々の力を媒介している門を破壊しに行きます。」

ヴィーラの声で我に返った。

ダメだ。

今はこっちに専念しよう。

ただでさえ、危険な任務なんだ。

「なんだと?どういうことだ?」

俺はレネ様と話し合ったことを魔王様に説明した。

但し、恩恵(ギフト)(ペナルティ)の件は抜いたけどな。

魔王様との議論はしたくないからな。

お陰で少し唐突な感じのする話になってしまった。

レネ様にフォローを入れてもらいたいところだ。

レネ様は魔王様の傍らに侍っている。

俺の話を聞くと魔王様はレネ様の方を向かれた。

無言で意思の疎通をしているのがわかった。

この二人のやりとりには言葉を必要としない。

こちらにもどんなやりとりがなされたのかはわからない。

わからないが、とにかく魔王様には納得してもらえたようだ。

「なるほど。よく考えたな。」

「では?」

「うむ。良かろう。こちらからも兵を出すぞ?ワイバーンもな。」

「ワイバーンと言えば、前回のことは申し訳ございません。」

「構わぬ。射手の巨神兵が動き出すとは誰にも予測はできなかった。」

ヴィーラが謝っているのは前回の強襲でワイバーンで失ったことだな。

前回の強襲では射手の巨神兵が動き出して、一撃でワイバーン三頭を乗り手ごと失ってしまった。

ヴィーラは即座に判断して、撤退した。

ヴィーラのその判断がなければ、もっと多くの被害を出していただろう。

ワイバーンは貴重だ。

聞くところによると時代を経るにつれて頭数が減り続けているという。

ドラゴンに至ってはもう片手で数えられるほどしか残っていないという。

だから、ドラゴンもワイバーンも貴重な戦力だが、滅多なことでは戦場に出さない。


「今回は馬で行く。」

そう言うアランも魔王様からワイバーンを借りて、神々の宿木を強襲している。

ヴィーラと俺達を助け出してくれた時だ。

その時はワイバーンに被害はなかったが、あろうことかアルベリッヒ上級王の居城、白角城の巨大な飾り窓を破壊して救出を強行するという破天荒なことをやってのけ、魔王様を呆れさせている。

俺達としては感謝しかないんだけどな。

「ワイバーンでなく、馬で良いのか?」

「はい。」

そうだ。

今回、馬で行くことにした為、このメンバーになったんだ。

ンダギ、ブロウの前衛二人は何かあった時の戦力としては貴重だが、オーク族に乗馬の習慣はない。

馬車では時間がかかってしまう。

エミィも同じ理由で不参加だ。

フレッドについては、他に頼みたいことがあって、抜けてもらった。

「どうしてワイバーンを使わぬ?」

「もう二回もワイバーンで神々の宿木を強襲しております。父も流石にヒッポグリフを配備していると思われます。私はワイバーンとヒッポグリフをこれ以上失いたくありません。」

ヒッポグリフやグリフォンはライオスエルフ族が使役する航空戦力だ。

しかし、ドラゴンやワイバーン同様に絶滅の危機にある。

ヴィーラの話では普段は神々の宿木の北方にある山奥の生息地でひっそりと暮らしているらしい。

ライオスエルフ族もヴァラキアがドラゴンやワイバーンを大切にするように、グリフォンやヒッポグリフを保護しており、滅多なことでは使わないらしい。

しかし、ヴィーラの言う通り、神々の宿木が二度も立て続けにワイバーンで強襲されている。

その対策としてヒッポグリフを神々の宿木に配備するだろうというのだ。

ワイバーンとグリフォンなら到底敵わない。

ヒッポグリフなら対等にやれるだろうが双方に被害が出るだろう。

どちらも一頭も失いたくないんだ。


「それに射手の巨神兵がどうなったかもわかりません。」

そうだ。

フェリジア諸国や南方諸国にあった巨神兵達は神々の宿木にあった射手の巨神兵と同様に動き出してヴァラキアに向かってきている。

各地に密かに散らばっているノルデル伯の手の者や各地に大使として赴いているヤーノシュ殿の配下からの報せだ。

巨神兵はそこに何があるかも気にせず行軍してくる。

町を通り抜けようものならいくつもの家屋が破壊されているようだ。

幸い、行軍速度が遅いからまだブラドに到達していないが、ブラドが破壊されるのも時間の問題だ。

しかし、最もブラドに近い位置にある神々の宿木の巨神兵が南下してくるという報せが入らない。

もうメルクハイムの森にさしかかっていてもおかしくないが、スヴァートエルフ達から目撃情報は入ってこない。

つまり、神々の宿木にあった射手の巨神兵は消息不明なんだ。

もしかしたら神々の宿木に留まっているのかもしれない。

そうであれば、ワイバーンでの強襲は無理だ。


「しかし、馬では時間がかかろう?巨神兵はまだここには至ってはおらぬが、それも時間の問題ぞ?」

「はい。時間がありません。ですから急ぎます。ドワーフに協力を頼もうと思います。」

「アイセンブルクとワッサーブルクを抜けるというのか?」

ブラドからまっすぐ西へ、バランの籠るロム城を経由し、メルクハイムの森を抜ければアイセンブルクの門に行ける。

アイセンブルクとワッサーブルクを経由すれば、ほぼ直線のルートでアルフハイムの森に行ける。

しかも、ドワーフ達の地下通路はそこらの街道よりもはるかに平坦な道なんだ。

通常の旅よりもかなり早く神々の宿木まで行ける。

もっとも、その為にはドワーフ達の通行許可が必要なわけだが…

「ドワーフ諸王がそれを許すだろうか?」

魔王様の懸念はもっともだ。

ドワーフ族は本来、中立を宣言していた。

北の荒れ地での戦いでこそ、俺達に加勢してくれたが、それは彼らなりのアルベリッヒへの意思表示の為だった。

今もヴァラキアに対して友好的ではあるが、基本的には中立という態度をとっている。

しかし、俺はドワーフ諸王の助力を得られると思っている。

あのワッサーブルクの玉座で語ったグンナル七世王の想い。

グンナル七世王は言った。

『儂等は奴にこれ以上愚行を起こさぬよう諫めたいのじゃ。しかし、今のあの者に言葉で言ってもわからぬであろう。だから実力行使で奴の頬を引っ叩いたのじゃよ『正気に戻れ!』とな!』と。

あのグンナル七世王なら巨神兵を止める為と言えば、きっと協力してくれるだろう。

「私は彼等の協力が得られると信じております。」

こうして、俺達の旅立ちが決まった。


謁見の間を出ると仲間達が待っていた。

「どうだった?」

ンダギは今回、参加できないが、気になって仕方ないようだ。

「お許しはいただいた。」

「危険だぞ?油断するな?」

ブロウが拳で俺とアランの胸を小突いた。

アランが無言で頷く。

今では前衛三人には特別な友情が育っている。

「魔王様はあっさり許可してくださったんだな。」

俺から謁見のあらましを聞いたエミィの感想だ。

俺は敢えて返事をしなかった。

魔王様はきっと俺の決意も察している。

だから、その前に必要な今回の件についても一切口を挟まなかったんだろう。

「無理はしないでね。」

ソニアは心配そうだ。

まぁ、危険この上ない作戦だからな。

「わかった。」

俺はそれだけ言ったが、どうにも足らないことがあるように思えた。

上手く言葉にできないが、それでも口にした。

「ソニア…」

「なに?」

「その…そのな。すまなかった。」

「何のこと?」

「うーん。そうだな。ここ最近のこと…うーん。色々だ。」

我ながら支離滅裂だな。

でも、ソニアには何か伝わったらしい。

「うん。わかった。」


「そうだ。フレッド、エミィ。そっちの話も魔王様には話しておいた。」

「そうか。」

フレッドとエミィには別の作戦をやってもらう。

俺達に負けないくらい危険な作戦だ。

それは王国軍への潜入だ。

王国軍に潜入してアルデア騎士団に接触してもらう。

その内容を納得させる為にフレッドにだけは、俺の決意を話してある。

その時、フレッドは黙って頷いてくれた。

エミィはゴブリンだから王国軍に潜入はできないが、王国軍の陣地まで見つからずに近づくにはエミィの能力が必要だ。

ノルデル伯にも協力を仰いでいる。

大軍の王国軍のどこにアルデア騎士団がいるかわからないからな。

ノルデル伯の情報網が必要だ。

王国軍の中にはほんのわずかだがノルデル伯の手の者が紛れている。

「気をつけてな。」

俺はフレッドに右手を差し出した。

「お前もな。」

フレッドが握手に応じた。

片側の口角が反対側より上がるフレッド独特の笑顔を浮かべる。

ソニアによると俺の笑顔も最近似てきているらしい。

ずっとつるんでると癖ってうつるんだよな。


魔王様は俺達にヴァラキアで選り抜きの名馬を用意してくれた。

今回ばかりは俺も乗りなれた愛馬ヘイローではなく、魔王様の用意してくれた駿馬に乗ることにした。

時間がない。

明日の早朝には出立する。

しばらく、ゆっくり寝ることもできないからな。

俺達はさっさと寝た。

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