おにぎりと小さな手紙
先輩たちが帰って来る頃には落ち着いて過ごせるようになった。それでも食欲はなかったので、あとで部屋で何か食べることにさせてもらった。
今、奥野康太に会ったら、どうなるのだろうか。
キッチンにある包丁を持ち出すのか、罵倒するのか、それとも何も考えられないのか、ろくなことにはならないということしか分からない。
こんこん、と控えめなノックがされた。
「さちちゃん、お腹すいた?おにぎり持ってきたよ」
すみれが冷たいお茶とおにぎりがのったトレーを持ってきてくれた。
「ありがとう、すみれ」
笑顔を作るのはまだ辛いけど、お礼を言うことはできた。
「いいんだよ、さちちゃん。無理しないで、ね?」
言い聞かせるようにすみれは言ってくれた。
おにぎりをいただくことにして、小さく一口食べた。
「おにぎり、私が作ったんだ。寮監さんにちゃんと話したら、やらせてくれたんだ。さちちゃんはいつもこんなおにぎりとは比べ物にならないくらいすごいのを毎日作ってるんだね。ありがとう、さちちゃん」
「ううん、すみれのおにぎりとっても美味しい。優しい味がする。今の私にはこれがいい」
ゆっくりと食べきるとお茶を飲んで一息ついた。
「おばさんにも謝らないと。心配かけたよね」
「寮監さんからはお手紙預かってるよ」
部屋の電気をつけて、手紙を読んだ。
『いつも がんばってくれて ありがとう。でも無理はしないで、いつでも頼ってね』
短いメッセージだけど、不思議と胸が軽くなった。
「私、康太と話さなきゃ」
「大丈夫?」
「うん、これはちゃんと話して解決しないといけないから。もしまた疲れちゃったら、抱きしめてくれる?」
「うん、いつでもするよ」




