やめて。
「私が見た奥野くんはひどく純粋に思えたよ。なんとも子どもらしい、でも大人になろうとしてる最中というか。教師目線なら、特に困ることのない、ありがたい生徒、ってところかな」
「・・・・・・」
こくり、とお茶を飲み込みながら頷く。
「ただ、君たちの背景にあるものを考えると、すさまじく違和感がある。あんなことがあったのに、なんでそのままでいられるんだろうね」
片山先生にはある程度まで私たちの都合を話してある。そうでなければ今回のような特殊なカウンセリングはやってくれなかっただろう。
「彼は、どう言ったらいいんでしょうね。ある意味では私よりも辛い思いをしてるはずなんです。でもそれを見せずに純粋なままです。私は未だに進み出せていないのに、彼はそのまま・・・・いえ、なにもなかったみたいに子どもらしいんですよね」
私と奥野康太の差・違いはなんなのか。
「私が思うに、なんだけどさ。本当に奥野くんは大切な人を亡くしたの?」
「・・・・・どういう、ことですか?」
やめて。
「彼にとって、君の親友は大切でなかった、としたら?」
やめて。
「そんなわけ・・・あの時、彼も涙を流していたはず、ですよ・・・・」
うそだ。
「ほんとうに?」
ほんとうだ。
「そこまで、ちゃんと覚えてる?」
わからない。
「人ってさ、自分に関係のない人が亡くなってもそんなに感情は出ないよ。だけど、泣いてる人を見てると悲しみとか、涙を流すっていう行為を共有しちゃうんだよね」
やめて!
「奥野康太にとって、岸田 璃子はどんな存在だったんだろうね」




