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私の前で命を馬鹿にするな  作者: 黄野ポピー
3章

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211/220

市販のタレを使うのは

「コチュジャン入れるの?」


「そうよぉ。これでピリ辛にして、高校生たちの食欲を誘わないとね。お肉ばっかり食べないようにしなきゃ」


確かに、である。普通の野菜炒めにそこまで意欲的に箸をすすめるか、と言われれば人によっては『そうでもない』だろう。試食させてもらうと一度食べればご飯が欲しくなる程よいピリ辛加減だった。


「唐辛子とか入れてもいいんだけど、辛くなりすぎるのもね。市販のコチュジャンなら色々な味わいがあるから食欲増進効果を狙えるわ」


私も辛いものはあまり得意じゃない。


時雨煮の方も生姜を水切りして、ざざっと手早く作ってしまった。牛肉を炒め、生姜を加え、調味料を入れて水気がなくなるまで煮詰めるだけ、と言えば乱暴だが、実際に食べてみるとその味わいはすさまじい。


「こっちの時雨煮はすき焼きのタレを使ってるわ。醤油やみりんなんかの調味料がバランスよく入ってるし、甘めにしたい時はこれで味が決まるのよ」


ゴテゴテと色んな調味料を加えるのではなく、すでにバランスよく混ぜられたものを上手く利用しているわけだ。これなら素直に味を楽しめるし、複雑な手順もなくなる。


「さちちゃんも、よく時雨煮なんて知ってたわね。なかなか若い子じゃ出ない発想だと思うんだけど」


「家庭料理は一通り作りました。それに生姜を少なめにしてレンコンを加えるとまた違うのが出来ますし」


「なるほど、色んなお料理を教えてもらってるのね。私としては頼もしいわ」


牛肉とレンコンのオイスターソース炒め。りこが好きなメニューのひとつで、常備菜としても優秀だったので、お弁当やちょっとした一品として丁度よかったのだ。


今回レンコンを使わなかったのは、それが高校生の口に合うか分からなかったから。その内ここに住む人たちの味の好みを知れたときに作れればいいなと思う。

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