B.G. so2(一緒に祈ろう)
それから?
どうして口元を隠してしまったんだろうって思う。
未来人がフィルムを見た時、音声トラックが壊れていたら、言葉なんて分からない。
言葉そのものが変わっていたら。言葉なんて、もっと分かりっこない。
百年後。未来人はどんなテクノロジーを使っているだろう。
フィルムは無事だろうか。
フィルムを再生できるだろうか。
フィルムが、理解できるだろうか。
百年後に見ることができるのは、残ったフィルムだけなのだ。
残らなかったフィルムは、誰も知らない/知られもしない。
知りようもない/消えている。
百年前の映画を見たことがあるかい?
彼らが現れた今から百年後。
それを見ることができるかい?
百年前のフィルムに写った若者は、みんな素朴で、顔も背丈も体つきも十人十色で、意外と歯がきれいだったりして驚く。
百年後のフィルムに残ったぼくらは、みな同じ格好をして、腕を組み、街を、通りを、練り歩く。
タイムマシーン/フィルム。
未来人は、フィルムの中のぼくらを見て、どう思うだろうか。
おかしな世代と呼ぶのだろうか?
ケッタイでコッケイな時代だと笑うだろうか?
もし、未来人がいるのなら。
空気が熱を帯び始めた。
それから?
ベリンダが、リックとぼくの間に入った。
ぼくらは、並んで行進した。
ベリンダは楽器ができた。
彼女はリックといい仲になった。
それから?
彼らは、解散の要請をした。
それから?
ぼくらは、ますます膨れた。
それから?
ぼくらはシンボルに〈グニー〉を使った。
なんでカートゥーンのキャラクターを?
誰もが知ってて、誰もが子供の頃に描いたことあるからだ(絵の描けない子は、〈グニーのぬりえノート〉を持っていた)。
グニーは強くも賢くもない。
足も速くない。
でも、グニーは、グニーなんだ。
グニーは負けない。
ぼくらはグニーの旗を持って行進した。
シャツにプリントして胸に飾った。
それから?
〈グニー〉は知的財産である。
ネットワークが利用差し止めの話を持ってきた。
ぼくらはグニーをもっと増やした。
それから?
話は消えた。
ぼくらはグニーを企業から解き放った。
独占と著作権の檻から救い出した。
グニー。万歳。君も自由だ地上へようこそ。
それから?
ぼくらは止まらなかった。
ぼくは、グニーのランチボックスを使っていたよ。お気に入りだったんだ。
それから?
企業は彼らの傘下に入った。
道にバリケードが置かれた。
ぼくらは挑発に乗らない。
うねりの中で〝ヘビの尾〟を、注意深く踏むのを避ける。
警備メカが置かれた。
ぼくらは折り目正しく、練り歩く。
彼らも折り目正しく、監視する。
互いの分を、越えないように。
その夏、気温は観測史上最高に達した。
大気が重くまつわりついた。シャツが肌に貼り付いた。
それから?
ぼくらは決して熱に飲まれなかった。
熱狂の中に身を落とすことはなかった。
「お前は神を信じるか」
あるとき、男性に訊ねられた。彼はぼくの父よりは若いだろうけれども、だいたい同じくらいに見えた。
「分からない」ぼくは答えた。「でも、祈ることはある」
「どんな時に?」
ぼくは少し考え、「不安な時。悲しい時。お腹が痛い時」そして、「つらい時」
すると今度は彼が、「そうか」って少し考えて、「分かった」
合格点かどうかは分からないけれども、及第点は貰えた。
「一緒に祈ろう」
「そういうのは、ちょっと」
「そうか」
彼はどこか悲しそうな顔をしたよ。
それから?
それっきりだよ。秋になった。
手元に、〈番号〉の書かれたカードが届いた。
ぼくらはカードをメタルのゴミ箱に入れ、芋を焼いて、食べた。
それから?
ベリンダはカードを捨てていなかった。
どうして?
彼女の家族は、彼らの元へ行っていた。
ベリンダは〈施設〉へ行くことになった。
ぼくらは抵抗した。
彼女は泣いていた。




