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章管理始めました。
さわさわと木々を優しく揺らす風はカチアが言った通り少し冷たいけれど、日差しは暖かく少し厚着をした服装には丁度良い気候だった。二年前は立ち上がる事はおろか、歩くことさえできなかったけれど、この二年周りに心配を掛けながらも練習したおかげで歩けるようになった。それが同年代よりも遅く不安定だったとしても、できるだけ自分の足で歩きたいと周りに伝えていた。
その足で向かう先は内庭。そこで今日はお茶会が開かれる。
発案は二年前、正式に私付きになった家令と護衛騎士が決定事項な勢いで昨日のお昼に提案し、驚くほどの速可決。
この時の私は散歩以外で外出できる事に高揚していてよく覚えておらず、首を縦以外に振っていなかったと後でカチアに教えられ、流石に恥ずかしくなったのは記憶に新しい。
そんな勢いで決まったお茶会は、その場に居なかった従者も巻き込んで準備をしたのだと歩きながらカチアが話してくれた。勿論、最後に内緒ですよ、と付け加えて。それに笑いながら頷き返し、一層どんなお茶会になるのかと楽しみがどんどんと膨れていく。いつもならゆっくりとした歩みは気にならないのに今日はなかなか変わらない風景に初めてもどかしさを覚えながら進むと、ようやく見えた内庭の風景に嬉しくなる前に目を丸くした。
「おめでとうございますお嬢様」
「おめでとうラティ様」
「おめでとうございます、ラティ様」
お茶会と聞いていたそれは、テーブルに椅子。そして紅茶とお菓子で会話を楽しむものだと思っていたのに今、目の前に広がっているのは大判の敷布の上に広げられた色とりどりの料理とお菓子と笑顔で迎えてくれた家令に騎士に従者の三人。
驚いて立ち止まった私の傍へ一番最初に近づいてきた従者-ラナスはカチアと同じ色の瞳を輝かせて何故か祝いの言葉を口にする。それは直ぐにその後に付いてきていた騎士のアゲートも同様で、違うのは跪いて私の手を取ってから告げられた少し短くなった言葉と楽しげに笑う灰の眼だけで二人とも満面と言えるほどの笑みでこちらを見てくる。
少し離れた場所にいた家令のセレスタも胸に手を当てて礼を見せると二人よりは堅いものの、優しく細められた青灰の眼は微笑んでいて-見えないけれど、後ろに立っているカチアもきっと同じく微笑んでいるんだろうと考えていた私の体を軽々と、しかし驚かせないようにと抑えた速度で持ち上げたのはアゲート。
一気に高くなった視界に目を何度か瞬かせれば、先ほどより近づいた灰色の目とぱちりと合って段々と思考が戻ってくる。灰色の眼の持ち主は、未だよく分かっていない私に今度はにんまりと言う表記が似合う笑顔を見せる。
「驚いてくれたみたいで何より。物を置いてある敷布の上を移動するので失礼いたします」
「ふふ、靴はお預かりいたします。さぁさぁお嬢様、皆主役のお嬢様を今か今かと待っていたみたいですから早速始めましょう」
「そうですね。ラナスも準備をしながらお腹を空かせていた様ですし、そろそろブルームもケーキを持ってくるでしょうから良い時間です」
「わぁ、セレスタさんそれは言わないでって言ったのにぃ!」
抱き上げられると直ぐに近づいてきたカチアの顔も予想通りに笑顔だったと戻ってきた思考でも他の事を考えている私を余所に、周りは騒がしくけれど楽しそうな雰囲気に変わり敷布の上へと移動していく。が、聞こえたケーキの言葉に思わずこてんと首をかしげた私に気づいたアゲートは笑顔の種類をころころと変えて今は苦笑気味。
「まあ、ラティ様はそういう反応だよなぁ。うん、落ち着いたらちゃんと説明しますからまずは此方へどうぞ」
何やら一人で納得した様子のアゲートに敷布の上に作られたクッションの山にそっと下されると、私を中心に右側から、アゲート、セレスタ、ラナス、カチアと料理とお菓子を囲むように座れば、記憶にある外出の一つと同じだと気が付いた。そのことにひっそりと感動している私に気付かず、セレスタが口火を切る。
「さて、説明の前に先ず料理が覚めないうちに始めましょうか“ラティアナ様の生誕日お茶会”」
そこでようやくただのお茶会じゃなかった事に気付いた。




