せっかくなら、この日本らしい料理が頂きたいかな
くろくまの職場に付いていき、一日共に働くことになったグラティア。
ちゃんと働けるかな?
◯登場人物
グラティア(慈愛):エルフ族の女性、256歳。ルミノース国生まれ、ルミノース育ち。精霊魔法を使える。
くろくま:人族の男性、25歳。日本生まれ、日本育ち。平凡なサラリーマン。
「なんや面白い表現する見習いさんやね〜。これはテレビって言うんやで。テレビって外国もあると思うんやけどな……凄く田舎から来た人?」
なんかわからんが、凄く馬鹿にされているような気がする……まぁいいか、私も何もわからんからな。
「テレビと言うのだな、とても興味深いな。これは一つ一つに世界が凝縮されているのかな?」
私はその店員にもわかるように丁寧に質問をしてみた。
「一つ一つに世界……ぷぷぷっ! コスプレ外人姉ちゃん、アンタおもろい人やなぁ〜! それに日本語も上手やんか」
すると後ろに気配を感じた。
「あ〜、ごめんなヒキガエルさん、この研修生は最近来日したばっかりやから、ちょっと知らんことも多いんよ。グラちゃんこっち来て〜」
ヒキガエルって、ちょっと悪口入ってるあだ名だよな。ふむ、確かに似ているが。
その時、テレビの画面に、美味そうな焼き魚が現れた。パチパチと音を立てながら、炭火で焼かれているようだった。
私はそれをじっと見ていた。
「グラちゃん、魚の丸焼き好きやもんね。お昼ご飯はあれやけど、晩ご飯は魚が食べれる所にいこっか」
ヒキガエルが何か言いたげだったが、そのコーナーを離れてくろくまと共に店内を歩く。
「なぁくろくま。そろそろ何故私がルミノース王国から急に別世界に来たのか。知っているなら教えてくれてもいいんじゃないか」
くろくまは黙って、下を向いている。
「ごめん、グラちゃん。今は詳しくは言えないんやけど……僕のせいやねん」
うむ。初めの時に、何やら訳知り顔だったのはそういうことだな。
「謝る必要はないぞ、食べ物も世話してくれていることだしな。ただ、いつルミノースに帰れるかだけは教えてほしいな」
くろくまは少し辛そうな顔をしていたが、それからすぐに笑った。
「グラちゃんは相変わらずお人好しやね〜。うん、大丈夫。今日一日だけ待ってもらってもええかな? ちゃんとなんとかするから」
そう言ったくろくまの顔は嘘はついていないように思えた。
◇ ◇ ◇
その後は、店舗はそんなに忙しくないらしく、色々な魔道具を紹介してくれた。
ちなみに先ほど見ていたテレビは、全く違う場所で記録をされたものを、あの大きな板に投影しているような魔道具らしい。もしかすると開発にはエルフ族も携わっているやもしれぬな。
私がアルドに土産を買って帰りたい旨を伝えると、
「あぁ〜。いや、たぶんお土産は無理やと思うんよね……むしろ持って帰れても電気も……物語の整合性が……」
何やらぶつぶつ言っている。
「まぁいい。そろそろ腹が空いたぞ」
「あ、ほんまやね。そろそろお昼ご飯いこっか。ていうかグラちゃんの場合、昼とか夜とかじゃなくてお腹が空いたら食べる、空いてないなら食べない、やもんね」
なんだか、私のことを割と知ってて、なんだかむず痒いな。
◇
くろくまの職場のすぐ近くにある、更に大きな建物に入り、そこで何か食べることになった。ショッピングモールという建物らしい。ルミノース王国の王城くらいはありそうな大きさだな。
「グラちゃん何食べたい? 中華とイタリアンと和食とハンバーガーかな、この中やと。中央都市マグヌスでも割となんでも食べれるような気はするけど……なさそうなやつやと和食かな?」
マグヌスのことも知っているのか。もしかするとくろくまもルミノースからの転移者なのかな?
「私は何でもいいが……せっかくなら、この日本らしい料理が頂きたいかな」
「うんうん、せっかく日本に来たからそうやんね。オッケー、じゃあ和食にしよう」
エスカレーターを使ってショッピングモールの二階に上がり、飲食店が並んでいるところに向かう。
和食の店は木材を主とした割と落ち着いた店構えで、朝に行った牛丼屋さんよりは広く、カウンター数席と、テーブル席がいくつか並んでいた。
店員に案内され、テーブル席に着いた。なんとなくジロジロ見られるのには慣れてしまった。
「んっと、僕がだいたい頼むんは天ざる蕎麦か、カツ丼と蕎麦のセットかなんやけど、何でも好きなん頼みや〜」
店の入り口に、本日のオススメと書かれていたのを私は見逃さなかった。
「そうだな。せっかくだから私は【季節の天ぷら盛り合わせと三色蕎麦の彩り御膳】にしよう」
それを聞いて、くろくまが笑う。
「グラちゃんって、そういうとこもブレないやんね〜。じゃあ注文するわ」
くろくまはカツ丼とざる蕎麦のセットにしていた。
「そういえば、今日全然仕事してない気がするわ……まぁいいかぁ〜。てか昼から半休にしよかな、せっかくグラちゃん来てくれてるし」
「それは好きにしろ。私はここで過ごしていてもいいぞ。あ、日本の通貨だけ用意しといてほしいが」
そう言ってる間に、食事が運ばれてきた。
「なんて名前か忘れたけど、それ凄いやん! グラちゃん食べれる?」
そうなのだ。私が頼んだ【季節の天ぷら盛り合わせと三色蕎麦の彩り御膳】は、なかなかのボリュームだった。
グラティアがルミノース王国から別世界に転移した原因は自分だというくろくま。
しかし、今は詳しくは言えないと。
くろくまの職場の向かいのショッピングモール内の和食屋さんで頼んだ料理はなかなかのボリュームだったようだ。




