一般誌枠の危機!でしかない!三バカマゾおんな戦士達!推参!part1
人類軍との戦いの日が近い。
と言っても、もう恒常的にあちこちの戦線で戦端を開いているので、これもその類いの一つでしかない。
資料ですでに知っている先攻作戦の一つと言うだけだ。
違うとすれば……
この、頭の中の王子様ではなく、俺の初陣、と言うことだけだ。
正直ビビる。戦争だぜ。戦争。指揮を執るのは俺だ。王子様の顔をしているが。
……王子様に丸投げしちゃおうかな……と言う気持ちもほんのちょっぴりあるのは否めない。大負けしたらどうしよう……とか胸によぎる。い、いや。人類軍の味方のつもりなんだった。そうそう。それはそれでアリ。アリなんだけど。
だがぁ。これからだってのに。今から始まるってのに。王子様のテンションは極めて低かった。低い、を通り越して!退屈気味だ。もうリラックスしまくってる。
俺がきりきりしているのを、あぐら座りに無関心にそっぽ向いて、のへーっとしてやがる。
「馬鹿野郎。いくさだぞ。もう少し緊張しねぇのかっ」
「ふん。せんな。どうせ今日のは小競り合いで終わる。結構圧勝かな? 退却させて日暮れまでには終わるだろう。特に指揮の必要もない」
「……そんなか? え? そんな人類軍弱いの?」
「ま。見れば判る」
その声色に誇張も気負いもない。ただ平静に事実を述べているような。
冷たい確信だけがあった。
「あっさり決着をつけてないのは……前線を侵攻させないのは、今は父王が内治を重視している段階だから、と言うだけに過ぎん。いつでも蹴散らせる相手に勝利を急ぐこともない」
「怖いのはあの正面の人類軍なんぞではなく、背後の内乱の方だ。むやみな戦線拡大は躊躇われる」
「まぁ……それが済めば、全軍一斉攻撃で簡単に戦場の勝利は手に入る」
「戦争は戦場で勝てばそれで終わりというわけではない。相手国側の統治まで見越して、戦後計画を立てておかねばならない。次に当たる人類国の国勢調査もな」
くっそー。悔しいがこのバカ王子……優秀ではあるんだよな……。
「おい。はっきり言っておくが!俺は人類の味方だぞ。言っとくけどな。むちゃくちゃな命令出してやるぞ」
「ふん。好きにしろ。それでも魔王軍は勝つ。一人一人の戦士の戦意戦力が桁違いだからだ。人類軍側も無能の極みだしな。見れば判る。それ以外に今、言うべき一言がない」
……なんだ。この自信……不安すぎるじゃねぇか。
「いや。魔王軍にデバフを掛ける。まともに戦略行動出来ないようにする」
具体的な方策は……未だなかったのだが。言い切ってみた!
「そうしたきゃ……そうだな。三軍に分けている我が軍から指揮官相当の戦力を抜くがいい。それでも勝つ。戦略なんぞいらん。自由に戦う我が軍勢も見てみたいしな。次期司令的な立場が自然発生するのか、とかの実験にもなる。万が一万が一指揮官が倒れるか最前線を離れるかした際の一軍の動勢とか、それは見る価値があろう」
王子様が両手を合わせて枕にし、ごろり、と寝転んだ。
「敗北はない。書類で知っているだろう? 私が昼寝してても勝つ。勝ってきた。ま、そんなもんだ。こんな退屈なことがあるか?」
盤石の自信。言葉に揺らぎがない。くっそー。
アドバイスに従うのは業腹だったが……魔王軍勢のコントロールを乱す、と言う意味で有効、と判断した。
苦々しい思いも胸に充満していたが……三軍の指揮官を呼び出すように側付きの兵士に伝えた。
が!そんな重苦しさが一変した!
俺が陣取る小高い丘に指揮官達が上がってきた。
全員女、だった。
ふぁふぁふぁ……ファンタジーぃぃぃ……
ビキニアーマーだよっ!典型的なっ。しかも褐色肌!その長耳、エルフ系?ダークエルフ、とか言うの?
その隣はどっかのRPGの女魔法使いそのものだよっ。でっかいとんがり帽子。ロングドレス。スリットが深ぇ。両端にある!そこからむっちむちの太腿が二本!大胆に出ている!
で、なんで天使っぽいのが居るの?魔王軍?だよね? うお。超ミニスカート!足がなげぇ!見せつけるような脚線美!羽生えてるっっ。
で!三人とも!でけぇぇぇ!
もう目に毒なぐらいの超巨乳!誇らしげに俺の視線に晒している。
掴めばずしりと手に重そうなのが六コ!!! 六コだぁぁ。スゲえ。あああ。
その中でも褐色ビキニアーマーが一番デケぇか!いや!魔法使いも負けてない!その胸元に盛り上がる軟肉は黒ドレスからはみ出さんばかりだ!
天使っぽいのが一番控えめだが!この規格外の中では!と言う話で!それでもAVなら超巨乳!と宣伝されるだろう!
Iかっ!Jかっ!他はそれ以上かっ!
もう馬鹿げているくらいどいつもこいつもデカい。丸々と。
六つの乳が!どたぷん、と俺の前に揺れている!
目が奪われた。しばらく言葉が出なかった。
「第一軍、二軍、三軍指揮官、ただいま参上いたしました。アンジェム王子様」
事務的に冷たい声で褐色ビキニアーマーが端的に告げた。
あからさまにはしてなかったが、不服の色があった。
これから開戦、と言う段階での呼び出しは、なんかの準備の阻害をしてしまったのかも知れない。
い、いや。今は俺が指揮官だ。自信を持とう。
「ご苦労。もう前線には戻らなくてイイぞ。今回はおまえ達抜きで戦う」
えっ……と小さく息を飲む声が聞こえた。
「戦略上の都合だ。ここに居て、俺の身辺護衛を命ずる。いいな」
頭のどこかで、くすっ、と小さくバカ王子が笑ったような気がした。
ちっ。神経を逆撫でしやがる。この。
小高い丘の上。眼下に展開している両軍が見える。距離を取り対峙している。二つの軍勢は黒く固まり……その掲げる旗色だけが僅かに違う。
が、この遠距離から見てても判る。魔王軍の中に明らかに大きさが違うのが混ざってる。獣人か、牛頭ミノタウロスか。倍の背丈が倍の身体の幅が、ここからも見て取れる。
一斉に銅鑼が鳴った。しゃんしゃんと何か小さい金属を打ち鳴らしている音もした。
まだ……そんなことをしているのか……と、あぐら座りに直った頭の中の王子がつまらなそうに呟いた。
開戦の合図だった。
片一方の黒い軍勢が崩れ、人類軍が前進していく。え?
ばらばらに突っ込んでくる。え? いいの?
駆け込んでいく人類軍は明らかに身体が小さい。振り上げる剣も短い。ええ?
案の定、受け止める魔王軍と激突して!あっけなくはじき飛ばされた。
ええええ?
膝に肘を立て、そこに頭をくたりと乗せた王子様が静かに呟いた。
「あれしか知らんのか……今から行くぞ、と合図したら陣形を変えられ、装備を代えられ、受ける形の陣に撥ね飛ばされるだけではないか……砲もなく、魔法攻撃もない。ただただ突っ込んでくるだけだ。虐殺されるのがお好きなのかな?」
呆れきった、と言う口調には高揚もない。淡々としていた。
「ご覧の通りだ。退屈極まりない」
その王子様の冷徹な戦評が、俺のはらわたに沁みた。
指揮官の三人おんなだけが真剣な目で戦場を俯瞰していた。だが、その眼差しに焦りも不安もない。自信たっぷりに、ある者はその超巨乳の下で腕を組み、ある者は自信に漲りきって、腰に手を当てている。
時々うむうむと小さく頷いている。
衝撃だった。マジで?
魔王軍の戦列がずるりと進んだ。その分人類軍は後退した。身体の大きな魔軍の兵士がその人類軍側に侵入していく。溶けるように人類軍側の黒い固まりが崩れていく。マジで?
あれマジで人、死んでんだよな? 間違ってねぇよな?
ゲーム画面のように見えた……とか安っぽいこと言ってられない。
ここからも見える無残さは生々しい。リアルそのものの血の色が乱舞する。
魔王軍の兵士は実に愉しそうだ。獰猛な笑みを浮かべている。
実に愉しそうにお気楽に剣を振るい……人類軍側の血飛沫を掻き立てている。
「もう決着かな……今日はまた、ずいぶんあっさりだな……常日頃よりも。やはりアレが居ないと勝負にもならんな」
そのアレ……がなんなのか、判らなかったが。
次第にばらけていく人類軍を背中討ちしていく魔王軍。逃げ出すことも叶わずに、次々と倒れていく。血飛沫が二軍の衝突の現場を覆うように霧のように立ち上がっていくのがここからも見える。
さんざんな虐殺。一方的な敗北。余りにも余りにも簡単な……魔王軍の勝利。
衝撃はあった。
ただ、他人事のようにも目に映った。あまりに酷すぎて。
よくもまぁ……
まだ戦争続けてるもんだ。降伏もせずに。
負ける為に戦う……兵士死なすために戦う……そういう種類の戦争も……あるンだろうか……?
そんな疑いすら心に浮かんだ。
デバフを掛けるも何もない。手が出せない。戦場から指揮官を抜いてもこれか。こいつらおんな指揮官が居たら……どうなっていたのだろう。さらにヒドいことになっていたのか?
コレを勝たせる……どうやって???
何のアイディアも策も浮かばない。何も思いつかない。頭の中が茫漠としている。
目の前に幕が下りてくるような暗澹たる気持ちだった。
血祭りも徐々に終わりを迎えているようだった。人類軍側の生き残りもあと僅かだ。
まだ日暮れまでは……結構な時間があるような陽の高さだった。
短めにして毎日更新に近づけてみる。という試み。
出来てない部分もあるから、飛び飛びにはなるかもね。




