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計算が違うんですけどっっっ!part2







影が俺たちを覆った。

背後にどすんんんんん!という激しい地鳴りが響いた。

三バカ先陣椅子セットがぐらぐらと揺らぐ。えっっ!という驚愕の声が小さく三つ。頭の後ろのマクのナマ乳も揺れ騒ぐ。

だが、俺だけは知っていた。

俺たちに影を作り、背後にエンシェントドラゴンさんがその威容を示していた。

おおお!と人類軍がおののき、すざっと少しだけ後退していく。

それは魔王軍も一緒だ。

俺が陣取る小山の回りから人影が薄れていった。


「来たぞ。始まるか?」

重低音ボイスが頭の上から響き渡る。

「もうちょいっすね。ま、どしりと構えていてください。そこに座っているだけでも十分ですんで。ふふふふ」



前線の少し後方に神輿のようなモノ。平台に高めの手摺りが付いているようなものが四人の兵士で担がれている。

誰かと思えば聖女様。御神輿ですか。

おそらくは逃げ足が遅い、であろう聖女様をフォローするべく、神輿担ぎで登場、と言う訳なんでしょう。ぐらぐらと不安定そうだが。

その聖女様の回りの兵士の兵装の色が違う。その回りだけ白い鎧、兜を被っている。近衛兵、という感じだ。

聖女様が重要視されている、と言うのがよくわかる。戦闘より、聖女様の保護を最優先する部隊なのだろう。

神輿を二重三重に取り巻いている。

聖女様はその手摺りに掴まり、戦場を遙か見渡している。

こちらをちらりと見た。

〝……あのバカ……戦場でナニ女の子のおっぱい曝け出してんのよ!バカ!エロゲキャラ!真面目にやる気ある??!!〟

と考えていた、とあとから聞いた。

今はまだ知るよしもない。




どわ~ん、と銅鑼が鳴った。今回は銅鑼か。遠距離まで届くように、だろうな。

しゃんしゃんしゃんと振ると鳴る小さな金物の音もする。

頭の中の王子様がまだやってんのか、と呆れ果てる……開戦の合図だ。

人類国側の黒い固まりがほぐれて……動き出した。



脳筋ジャンヌは真っ先にここに駆けつけて襲いかかってくるかと思っていた。

だが、悔しそうな顔をしつつ、回りの兵が突入していく方向に馬を向けた。背後のエンシェントドラゴンさんのことを意識していたのかも知れない。

今回は戦闘員と言うよりは指揮官としての仕事を優先しているようだ。

先に突っ込んでいく人類軍のむさ苦しい男共に刀で進行方向を指して、檄を飛ばしている。

突入の怒声でかき消されて何言ってんのか聞こえないが、また神の国だの名誉ある戦死だの、下らねぇことイイまくってんだろうな。

その人類軍の先鋒が魔王軍に突き刺さっていった。


勢いに乗る人類軍が魔王軍を押していく。やけにやんわり引いていく。包囲陣か。

当たっている魔王軍はワザと引いている。両端からその衝突ポイントに助兵が来ない。それより、両脇は両脇で真っ直ぐ進軍している。

包み込む形。それを狙っている。

「二軍!突入!分かれて両端を狙え!」

脳筋ジャンヌの声が戦場に響く。甲高いおんな声は遠くまで響く。

その指示に従い、後方から押し寄せる人類軍が二手に分かれ、右と左の魔王軍の進軍を止めた。三カ所でバチバチにやり合う形となった。

その後方の巨人兵達も出る機会をうかがっている。あいつらは出させたくないな。

サヤカを置いてきてしまったのは失敗だったかも知れない。

先兵のドワーフたちだけなら、大体人類軍と五分なのに。


その時、脳筋ジャンヌのとこに、連絡兵らしき男が駆け寄った。その男が指をさしている。その方向の一軍が押されて崩れかかっている。

間髪入れず!飛び出したジャンヌが馬で駆けていく。

脳筋ジャンヌがいなくなった軍はいきなりどこかへにょっとなった。

前線がずりずりと後退していく。元々飛び出してきた陣に戻り始めた。

巨人兵達が前線へと進み出ていく。頭一つどころか、身体が倍の高さのミノタウロス達に大仰に振りかぶられ、さらに後退は激しくなった。

巨人兵達に力があるのなら、人類軍側には多少の素早さがあった。それには密集していては身のこなしが使えない。兵を分散させる、というのは打ち合わせ済みだったのだろう。一部は陣に戻り、弓矢を持ち出してくる。

持ち替えた弓矢で巨人兵達を狙い撃ちしているが、悲しいほどへろへろでミノタウロスに当たっても刺さりもしない。

ただ、ちくちくと煩わしい、と言うことはあるみたいで、振り払いながら振り払いながら巨人兵達の足が止まった。目を狙え!と、人類軍側が叫んでいる。確かにそれは一番困ることだろう。

陣に辿り着いたドワーフたちもそこでストップだ。流石に雑な防御壁でもなかなか一気に突破は難しい。

ののしり合いを含む膠着状態が出来上がった。



脳筋ジャンヌが駆けていった先、崩れかけていた一団から物凄い戦咆哮が聞こえた。魔術双眼鏡で覗くと、めためたに剣を振りかざし、馬上から魔王軍に斬りかかっている。何かを叫んでいる。それを見た周囲の兵が盛り上がっている。ここから見てても勢いが復活している。押し込むのか、押し込まれるのか。振り絞られた汗と血の応酬。

巨人兵の一人が倒れたのがここからでも見えた。

すらりと馬上に背を伸ばし、乱戦のただ中に辺りを睥睨するジャンヌは……一枚の絵のように決まっている。


ここはよし、と見て取ったのか、ジャンヌが馬を別方向に向けた。

そして辿り着いた先では大咆哮が上がる。明らかに勢いが増す。遠目で見ているからこそ、それは鮮やかに。


こういう平地の大軍戦では脳筋ジャンヌの指揮能力が光る。馬上でかけずり回ってあちこちで指揮を飛ばす。そこの部隊で少し欠けていた戦意がまた急上昇に!盛り上がっていく。カリスマ、ってこういうこと?

それは俺がどうあがいても持ち得ないスキルだった。

決して無能な指揮官ではない、と言うことが明らかになった。なった?

力押ししかしない指揮官が有能か、というと首を捻るところではあるが。

ま、俺らの方の歴史上のジャンヌもそんな感じだったらしいからな。

こっちの世界でもジャンヌ・ダルクになるのかな?

ま、させねぇけどな。ふふふふ。


残念だね。脳筋ジャンヌが一人しかいないって。

あれが後二三人……四五人いれば……それが互いに連携できれば。

勝利の目も出てきただろうね。

ま、最大の強みは最大の弱み。

強力なればこそ。

欠けた時の穴もでかい、と。



まず脳筋ジャンヌを片付けてから。それだけで大幅に人類軍側の戦意が崩れる。カリスマのカリスマ性が失われる。削り落とせる。

俺は魔本〝縄師入門〟をぺらぺらとめくりながら……愉しい悩みに突入していった。ナニがいいかなっ。

馬上だから……これがイイかな? うふふふっ。






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