誰?あんた? 何その復活スキル?part1
定例会戦と化している戦場で布陣しあう。
……。
それ前々回の布陣と一緒でしょ……工夫しないンかいっ。
散々負けた布陣をなぜ繰り返す。ああ……俺の指示を待つまでもなく、魔族達が最適な布陣を作り出している……そりゃそうだ。
アレで散々に勝ってんだもん。楽勝対応。
はぁぁぁぁぁ……。
溜息が止まらない。
こっちに頭を使う楽しみをさせてくださいよ。ちっとは!
が、今まで見覚えのないヤツ……一人のおんなが最前線から少し後ろに立っている。
何か長い杖を振りかざしている。アレは見覚えある知識で言うと……魔術系?
始めて見る魔法系。何かあんのか?
「ほう……御同類じゃな……おぬしと」
俺の背後に鎮座しているエンシェントドラゴンさんが、愉しそうなニュアンスで呟いた。
え?
がりがりの痩せ女。ヒステリックそうな。転生した、と言うファンタジーな事実に酔い狂っている?様に見えた。
聖女?聖女……?……なの? 類い希な回復スキル?とか?はあん?
貧相な聖女もいたもんだね、と言うのが最初の印象。正直なとこ。
アタシこそヒロインっ!と、そのイカれた眼差しで睨んでくる。
でも!
一揉みさせて驚いた。
転生獲得スキルなのかなんなのか、回復がすごい。倒れてた人類側兵士がめきめきと復活してまた戦い出す。これ、結構強いぞ。
戦線が、俺が目にするようになって初めてがっちりと噛み合った。絵に描いたような一進一退。
初めてまともに魔王軍と人間軍がいい勝負になった感じ。ま、歓迎と言えば言えなくも無いかな?
エンシェントドラゴンさんがこっちについていてくれる前なら、ちょっと焦ったかも。
女性の転生者かぁ。例によってあのよう?なのかな?
彼女は彼女の転生ストーリーがあるのだろう。
勝ち筋のシナリオでもこっちで用意してやっか。人間側の王子様とでも何でも好きにハッピーエンドしてくれ。
全くがりがり女なので縛る気にもならん。
ただ、俺は確信していた。
……ヤツとは接点を持たねばならない。ヤツだ。俺が待っていた接点、待望していた熱望していた僅かな細い糸……それだ。そのものだ。
これからの魔王軍と人類軍の戦いにおいて。
談合せねばならない! 転生人つながりで!
ほどほどの泥沼で! 八百長試合にせねばならない!
腕組みをして遙か先の戦場の聖女様を見つめている俺の下で、背中に座られている四つん這いチツが、ああ……と陶酔の喘ぎを小さく呟いた。
正体を明かし合った会談でも用意するか。
談合談合また談合(笑)
あのがりがり女とサシの対談。
お互いの立場を語り合う。その希望も。
エンシェントドラゴンさんも交えて。
またまたまた。あっさりとした撃退のあと。
エンシェントドラゴンさんに人類軍までご足労してもらう。
「攻撃受けたらやり返しちゃっていいですよぉ。でも。この手紙をあの転生者の聖女様に渡してください」
「おそらくですが……すぐにこっちに来る、と言い出すでしょう」
「揉めることも無い……と思いますけどね」
実際、エンシェントドラゴンさんの威容にビビって、手出しをしてくる敵は居なかったらしい。
「文を預かっておる」
その地に響く、地を震わせるような重低音でエンシェントドラゴンが語り出す。
人語が喋れる、と言う話は本当だったのか、と、人類軍がざわめいた。
「これを聖女に読ませろと。ワレには読めぬ文字なのだがな」
そう、それは日本語。俺たちにしか通じない読めない素の暗号通信。
それを読んだ聖女様の顔色が変わった、とドラゴンさんは言ってた。
そして、その掌の上に乗って……延々魔王軍の城の下。大穴空いた地下ドームの中。
俺が待っているところまではるばるお越しいただいた、と言う訳なのだった。
ようこそ。同郷の聖女様。
「どこ出身?」
「名古屋」
「うお。久しぶりに聞く単語。俺は埼玉だ。東武線側だな」
「よくわかんないけど。埼玉とか」
「ナニきっかけでこっち来た?」
「……ブラック企業で疲弊して、心臓止まった……みたい」
「典型的、じゃね? そっかぁ。じゃもうそのまんまルート!みたいな?」
「そうじゃない? ホントにあるとは……思ってなかったけど」
聖女様が頭に軽く手を当てて、はぁぁぁぁ……と深々と溜息をついた。
「でも来てみれば、こんなだし、そんなだし、なんかよく知ってるような展開?そのまんまだし。これってきっと……なんかの乙女ゲーの世界なの?!って考えてたんだけど……」
ちっ、と聖女様が盛大に舌打ちした。ちっ? 聖女様?
「死体は生々しいし!そんなはっきり書かないもんなんじゃ無いのっ。なんか戦争?ばっかりだし!ステキなドレスでの舞踏会はないし!うっとりするような美形ハンサムとの出会いとかもないっ!なんかこう学生生活に突入しちゃって!カッコイイ同級生といちゃいちゃもないし!いきなりすぐ!戦場出てくれっ!だし!くっそう。ふざけやがって!」
なかなかに口が悪い元一般人聖女様なのでした。いや、結構お怒りで。
「……それでも回復スキルとかで活躍すれば……もっと……もっとなんかさぁ……甘々な展開とかあるとか信じて!頑張ってたのよ!王子様カッコ良かったしさぁ!」
生々しいな。女の欲望が。
ま、俺も言えないか。オトコの欲望方面で。
「上手いこといけばいいよなぁ。お互いに。つまりだ……ここは互いに都合がいいように……展開を持って行くべく!談合談合、と言う提案なんですよ。身も蓋もなく」
頭上遙か高いとこでエンシェントドラゴンさんの首が退屈そうに揺れていた。
でも俺たちの話は聞いていてくれるようだ。
「一応俺は次期魔王の継承者、と言うポジションらしい」
「聖女様も人類軍ではキーパーソン、と言う立ち位置でしょ。回復スキルスゴかったっすよ」
ふん、と聖女様が顔を逸らす。だけどちょっとだけ赤くなっている。
「俺ら二人で、後、ドラゴンさんで談合すれば……ある程度こんな馬鹿げた戦闘はコントロール出来ンじゃ無いか、と」
「その辺の話し合いの為にお越しいただいた、ドラゴンさんに一働きしていただいた、と言うわけでして」
そっぽを向いていた顔が、ゆったりとこちらを向いた。
「……興味が持てない話、と言うわけでもなさそうね」
聖女様が根性悪そうに、目を細めて底意地悪そうに……にたり、と笑った。
その目つき。ワルい人そのものですよ。聖女様。
「大体がだね。両軍ばたばたと死んでいく、なんてーのは!はっきり言って!ノーサンキューな訳だよ」
「まぁ、一応の平成生まれで、始めて見るリアルな戦場、なんてーものは」
「正直言って……無残で陰惨で……ばっかばかしい」
「なんという命の無駄遣いだ、と。命いらんのか、こいつら、と」
「大勢なんかなんも決まらん隅っこの局面で、そりゃもう両軍とも盛大にばたばたと死んでいくわけですよ。人類軍も魔王軍も。リアルに生々しく」
「意味ねー。どっちも意味ねー」
「だからっつってやめるも止まるも無い。ほっといたら延々と続く」
「どっちかが絶滅するまで? 片方が絶滅したら生き残った方が分裂して戦い出す」
「またそこで覇を競う。絶滅させられた方の残党が復活しちゃったりして」
「どこまで続くぬかるみぞ。全部全部死ぬまでか?ホントにホントに全部絶滅するまでか?」
「ドラゴンさんが首を傾げるわけですわ」
「俺だって首を捻るばかりだ」
「度しがたい話よの。双方とも」
ドラゴンさんも重々しく呟いた。
「アタシだってうんざりよ。簡単に人類側やられるし。せっかく綺麗に直したのをまたあっさりと踏みつぶされる……その虚しさが判る? 超回復スキルなのよ!キレーに直したのっ!せっかく!わざわざ!それを!もうっ!こっち来て初めて知ったけど!スキル使うのってすんごい疲れるのよっ。ここもブラック企業なのっ!」
「あはは。お疲れ様です」
「ま、そのおかげで、今回人類軍も魔王軍とほぼほぼ互角、と言うとこまではこぎ着けてる。俺も大いに手を抜いて攪乱してるしね。まともにやれば圧勝しちゃうけど、もうデバフ掛けまくって、掛けまくって大体どちらも大規模な死者は出ない、と言う硬直状態を維持出来ているわけで。小競り合い程度で収まってる、と。コレもみな、聖女様のおかげ、ご尽力感謝いたします」
「つっかれるわねぇぇ……もう……ま、ここで活躍しないと王様に認めてもらえないし……認めてもらえないと……王子様との出会いが……あああ」
「ブレないっすね。そこだけは。そーいうとこ嫌いじゃないっす」
平和とは縛ることだ。
と、突然アタマにひらめいた。光り輝くようなひらめきではなく……海の底からじんわりと浮上してくるような気付き。
互いにがんじがらめに。干渉出来ぬほどがちがちに。縛りあうことだ、と。
それがなんとなくひらめいたことで。
ここでやること、やらねばならぬコトが少しだけ明快になったような気がした。
投稿時間を変更します。
19;00予定 指定投稿?




