そしてニート化するエンシェントドラゴン(笑)part1
「なんでみんなこうしなかったんだろうなー」
「エンシェントドラゴンがバックに付いてる、ってーだけで、余計な手出ししてくる国なんてねーんだから」
「囲い込んだ方が得じゃね?」
「話も出来ンだし。ワカッてくれるヒトよ。この方」
「これで暴れるだけが取り柄のバカ暴力的ドラゴンとかなら別だけどさぁ」
「なんか訳もわからずいきなり敵視してくるとかでも無い限り」
「いや、過去にはワレもそういう時期があったぞ」
「そうなんスか?」
「そりゃ、どこまでも追っかけてきて、爪だの!牙だの!鱗だの!勝手に欲しがりくさって!」
「涎まで欲しがる輩がいるとか!! 気持ち悪いっ!」
「挙げ句の果てに討伐とか言って何度も襲いかかってくる!」
「こんなウザったらしいものがあるか? 弱っちいくせに!」
「憂さ晴らしに一暴れして、街の一つや二つ壊滅させても!」
「無理も無い話というモノではないか?」
「まあねぇ……」
「何故あのバカもの共はこの世に或るものは全て手にしてイイものだと思っているのだ? 意味がわからん」
「その手にしてもイイもの、その手にすべきではないものの見極めも付かんのか!」
「知恵の無き迷妄の輩め」
「何度ぷちん、と潰しても、また別なヤツがはるばるやってくる。流石に面倒くさくなり別に居拠を移してもどこからか探し出して、ちんけな剣だけで襲撃してくる。なんなのだ。なんなのだっ! あのむやみやたらなムダな情熱はっ!」
「のーきん過ぎるんだよなぁ。この世界の人間は」
戦の仕方もそうだし。
「……のーきんとはなんだ?」
「脳みそまで筋肉、と言う言い方を略したモノです」
「おお……それも言い得て妙。うむうむ。ワレは頭に砂が詰まってるモノと考えていたがな」
長い首がゆったりと縦に揺れる。
まぁ………ヒトの有り様というモノは……太古からそういうモノだったか……もな……。
冒険心、射幸心、功名心……それは文化文明を推進させる大きなエンジンではあった。
…………。
総てを手の中にしたら……次は何をやればいいのだろう?
そのむやみやたらな情熱というヤツは燃え尽きるのだろうか?
「ま、ほとほと嫌気が差してた、と言う所でいいタイミングだったのかもっスね」
「しばらくはここで」
「のんびりしてってくださいよ」
「そうさせてもらうかの……ん。ムゲリア牛は革を剥いた方が美味いな。あの毛の多い厚革がどうしても舌触りを損ねていた……うんうん。一手間掛けると……イイものだ。ぐふふっ」
解体して肉だけ、枝肉とか言うんだっけ?革を剥いた感じの。でも内蔵は付いているまま。仰向けに溢れないように置いてある。その牛をその巨大な爪の先で突き刺し、ばくり、と大きな口に頬張る。
目尻がとろりと垂れている。
「骨、太く無いっすか? 牛だし」
「なに。かりこりと歯ごたえが良い。内蔵ごと、と言うのが口の中で味変わり。絶品といっても良かろう。新鮮度を大事にせよ。そう調理側に伝えよ。んふふふふ」
俺らからすればホタルイカみたいなもんなんかね?
ま、ご満悦でよろしかろ。
ニート生活堪能してください。
醤油でも用意します?
似たようなのはあるのを確認済みなのだった。
「こないだの名演技のおかげで、次期魔王つまり俺!が捕獲した!懐柔した!という建前になってますから」
「ここは魔王城の地下だし」
「人類のみならず、魔族にも追われたことはあるぞ。その辺りは大丈夫なのか?」
「まぁ、ここに居りゃ……魔王関係者人質に取ってるようなモンですからね。くふふふっ」
「上に向けてブレスでもどばーっとやりゃ、もう逃げようがないですから」。
「上の奴ら、爆弾の上歩いてるみたいにおっかなびっくりです」
「そろーりそろーりと歩いてますわ。あはははっ」
「そのせいか。ここは静かでイイのぅ。山の洞窟は時折かんこんと採掘の音が響いて気ぜわしくなることがある。耳に残るのだ」
「魔王城の山ですから。そんな不届きなヤツもおらんでしょ」
「ここまで人類軍が攻めてくるのは、まだまだ先の話ですしね」
「二千年ぐらいは……骨休めにのんびりとしたいとこだがのぅ……」
「ドラゴン感覚で言われると流石に長すぎるけど……ま、ま、頑張ってみますわ……」
「一度、また人類が攻めてきたらご登場願いたいっス。ま、空に向けてドラゴンブレスの一発でも」
「人類軍共がドン引いて……エンシェントドラゴンが魔族の味方に付いた、と言うことを周知出来れば……しばらくは攻めてくるのも慎重になる……かとも思います」
一抹の危惧はある。
あまりに脳筋過ぎて、また全員討ち死に上等!アタックを仕掛けてきたりすることも……ひ、否定出来ない……。
「ま、まぁ……しばしの緩和になれば……イイですよねー……」
「せめてしばらくは………うだうだしたいのぅ……千年ぐらいは」
時間軸が長いです。
ひとまずうだうだだらだら。
出来るのはイイとして。今だけでも。
状況考えればどうしたって……何か展開せねばならない。
最終的に何がしたいか、という話になってくるだろうなぁ。
とか、ぼんやりと考えていた。
それからはもう。毎日のように。
エンシェントドラゴンと密談……という名のだらだら会議。ちょーっと王妃様の濃厚超濃厚キス攻撃から休憩させてもらい、英気を養う、と言う意味もあったかな?
山程の肉を運び込ませ……エンシェントドラゴンさんにちょびちょび摘まんでもらい、俺は俺のこぢんまりとしたメシを摘まみながらでれん、とだらしなくごろ寝。
もううだうだの極致。こんなトコでニート仲間が出来るとは。
なんとなく気付いていた。
この世界に来て、腹を割って話せるのはこの賢い竜だけなのだ、ということに。
もうそっからはお互い……愚痴大会よ。
運び込ませたカウチにごろりと寝そべり、だだっ広い地下ドームに溢れんばかりに。
出るわ出るわ愚痴ばかり。
古龍も黙って聞いていてくれる。
「何したらいいんだよ」
「こんなトコ連れてこられて」
「こんな妙な立場になっちまって」
「講和すればイイのか? それで平穏な生活になる?」
「いっそ思い切って……真面目に魔王やる……か?」
「全部制圧しちまえば……平和?」
「………うわ。関わりたくねぇぇぇぇぇぇ……」
「知らんのよ。ここのバカ人類共も、魔族も。どっちも肩入れなんかしたくないのよ」
「本音を言っちゃえばっ!」
「どっちかに肩入れしてどっちかを敵に回してどうこうとかっ!」
「めんどくせぇの極致なのよ。ワケ判らんまま連れてこられた俺から見りゃ!」
「どっちかに味方する、敵対する、んな理由も事情もしがらみもないンよ!」
「ほっときゃわちゃわちゃ勝手に殺し合いするだけなんですけどねっ!」
今一応メシ食わせてもらっている義理は……あるかぁ?あるかなぁ?
一宿一飯の恩義に命を賭ける程……渡世人ってぇもんでもねぇ。んなモンの訳あるか。
ただの底辺社会人じゃ。
「ホント何しに連れてこられたんだ俺」
「なんの裏事情も知らされなくって!」
「それで手持ちのチートが縄師入門!これ一冊だけかぁぁぁっっ!」
「何をどうしろと?」
「いや………」
俺は何をどうしたいんだ?
はっきりと胸の奥にある答えは一つだけだ。
もう帰りてぇよぉ。
帰ったからって曖昧な未来がなんかクリアになるわけでもねぇけどっ!
日銭稼ぎの安宿のぎりぎり暮らしが……なんか明るくなる目処が出来たわけでもねぇけどっ!
………………三バカマゾはちょっと惜しいけどっ。
なんか適当に売れそうなもん、持ち逃げして……
なんとか……なるかねぇぇぇ……




