ニート仲間が出来たのでした part1
街道筋沿い、山間から平地に開けていくところ。魔王国に深く続いていく大きめの道を塞ぐように配陣して、人類軍を待ち受けていた。今回はここにあの脳筋ジャンヌが現れる、と言う内通者の情報が入っていた。
俺はチツの四つん這い椅子に腰掛けながら、ヨニの尻突き出し肘掛けと、今日は超デカおっぱい背もたれとなったマクに頭をもたせ掛け、人類軍の到着を待つ。
魔王軍の連中の中にはスゴい目で俺とその次期魔王腰掛けセット、バカマゾ親衛隊座椅子セットを眺めてくるヤツもいる。
そりゃそうだ。今までの三軍の指揮官三人をモノとして玉座にしているのだから。それだけでもびっくりだろう。
でもなんか非難めいた眼差しも無くは無い。意外とモラル高いのか?魔王軍のくせしやがって。
そんなものは撥ね除ける!傲岸たる態度、不遜たる佇まい、それこそが!次期魔王!の神髄なのだ。
こんな三軍の指揮官三人など!装飾品に過ぎないのだ!という。
三人とも超美人だしな。
だから当然、羨ましそうな視線もたっぷり降り注がれる。
人類軍の斥候か? 何人かが姿を見せ、慌てて引き返していく。
しばらく待つと人類軍が続々と現れ、こちらの布陣を見て自分らも展開していく。
その背後に見知った顔が現れた。
脳筋ジャンヌだ。
内通者……が誰なのか知らないが、いつもその情報は正確だ。
こんなんまで優秀なんだから……そりゃ魔王軍が毎回圧勝するのは当たり前だよな。
俺は馴染みの顔を見て、はぁぁぁ……と深々と溜息をついた。
脳筋ジャンヌは虚を突いたルートで来たつもりがもう待ち構えるように魔王軍に取り囲まれていることに気付き、少し焦った表情をしていた。
後続の人類軍がぞくぞくと続き、その隘路から溢れ出るように即席の布陣を形成していく。
相変わらず砲もなけりゃ、魔術師みたいなカッコをしたヤツもいない。
ただ大きめの盾を持ったヤツがその板盾を地面に突き刺して、先陣としている。
身軽さ故の神速を尊ぶ、と言えば言えなくもないが。
まぁ。相変わらずの、いつもどおりの虐殺される体勢。
俺の眼差しが歪み、溜息が深くなる。
砲とかないんか? 魔王軍側にはあるのだが。ただ重いから、今回は山道混じりの進軍経路だから持ってこなかった?平地戦でも用意がないけどな。
魔法使い、人類軍側にはいないんかな? こっちに三バカマゾ女魔法騎士とかがいる以上、魔法が無いわけじゃ無いハズなんだけどな。魔王軍にも三バカマゾだけでなく他にもちょいちょい魔法で戦うヤツはいるし。
首を傾げるばかりだ。こっちこそ内通者、さらに言えば協力者が必要だ。
これで三バカ解放して先討ちさせりゃ、先手など取り放題ではないか。
どこの橋頭堡から崩していくか、滅していくか、選び放題ではないか。
素人が考えたってそう思いつく。
はぁぁぁぁ……。
圧倒的すぎる。毎度毎度ながら。
「いくぞ!神の戦士達! 名誉ある天界は間近だ!」
脳筋ジャンヌが、ぞろぞろと配置している人類軍に撃を飛ばす。
間近だって、さ……それ、あと少したったら死ぬぞ、と言う意味なの?
あともう少したったら全員で一緒に死ぬぞ、と言う宣言なの?
どんなカルト宗教だよ。
しかしこちらにも頼りになる戦力が増えた。
俺の肩に座り、まだですか?まだですか?と、期待に瞳をきらきらさせている。
超逸材サヤカちゃんだ。
ここは一つ!サヤカに頑張ってもらうほか!
「サヤカ!全軍に通達!カラダの大きなミノタウロス!獣人は後方十ヤード、後退して待機!二陣を形成させろ!復唱!」
「え、え、えっと……全部の……軍?に!ミノタウロスと……ドワーフ!は!後方……下がってぇ……下がる!待機!ですねっ!」
うん。ほどよい間違い方。それでいい!
「よし!いけ!」
「はいっ!」
気合いの入った可愛い声を一つ残して、サヤカが相棒の黒い鳥の背中に乗って飛んでいく。
辿り着いた軍陣から混乱していく。右往左往している。
せっかく完璧に配置されている連中が下がったり上がったり。よしよし。
混乱の極みに。よしよしよし。優秀。俺の意図的に。
三軍を回ってぐちゃぐちゃにしていくサヤカ。その途中で誰かに怒鳴られている。
そこからなぜか、人類軍側に飛んでいく。
え。方向まで間違えるの?
え。大丈夫か? ま、伝令ごときには手を出さないだろう……とは思うが。
見た目は小さな女の子だし。
人類軍の誰かに半泣き半怒りになりながらなんか大声で伝えている。そんなこと言ったっけ? 何伝えてるんだ?
それはさっぱり判らないが、なぜか人類軍が動揺している。右往左往し始めた。
負けが込んでるから些細な情報でぐらつくのだろう。
脳筋ジャンヌが必死に声を荒げて、陣内を落ち着かせようとしている。
もうスゴい。敵も味方も大混乱! 対情報戦最強兵器なのだ。やるなサヤカちゃん!ブラボー!サヤカ!
なんで人類軍側に伝令してるんだ? さっぱり判らないがイイぞ!それだぁ!
混乱のさなか、あちこちで怒鳴られたらしく。泣きながら帰ってくる。
ひぃーん……とか言いながら。
馬鹿野郎。ウチのサヤカをいじめるなっ。
飛んできた黒い鳥ごとどすりと胸に抱きしめる。
「えっく……えっく……あちこち……と、飛んでるうちに……伝えること忘れちゃいましたぁぁ……」
ぐすぐすと小さく泣いているサヤカに満面の笑みで話しかける!
「いいぞ!攪乱作戦だったんだよなっ」
「え……」
「そうだよな!よくやったぞサヤカっ!」
心から真っ直ぐに褒めたくる。ここだけは。
ナチュラルカウンターインテリジェンスエキスパート!NCIS!流石だっっ!
えへ……えへへ……と、戸惑いながらも褒められて泣き顔が嬉しそうに変わっていくサヤカなのだった。半泣きでふっくらと微笑んでいく。
もう可愛すぎるだろ。素直なイイコなのだ。鳥頭だが。




