第七話「蠢く」:石動視線
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ここは車の中。運転席には琉導が病院に行く道中で見た男3人がいる。後ろには途中乗せたであろう人も含まれている。
「なあなあ石動さあ〜ん。戦い過ぎですよお〜。こんな血まみれになって人救ってえ〜養えるんすかあ〜?」
「芹生、いい加減大人しくしたらどうだ。」
運転席の凛々しい短髪の青年の石動が一度たりとも横を見ず会話する。
真ん中にいるのはツンツンとした髪を持つ気怠げな顔をしている青年の芹生はガムを膨らませて退屈そうにする。
「・・・石動さん、俺も待ち遠しいんだけど、」
助手席に座るウルフカットの髪を持ち、頬杖をついて欠伸をしている青年の氷鉋が石動の方を見ている。
「氷鉋、無駄な情報はいらないだろ。疲れているなら寝ても構わない。」
「・・・了解っす。・・交代で、寝る?」
氷鉋が少しおどおどしている理由はこの空気感だ。芹生という人がいながら石動の放つオーラに気圧されている。
「それ石動さん寝れねえじゃ〜ん」
「・・あ、」
静寂という名の微妙な空気が少しの間3人の周りで流れた。
「俺は寝なくても問題ない。気の使い過ぎは精神を削るぞ。」
「その言葉、そっくり返してあげたいけどお〜氷鉋くん寝てなよお〜」
芹生が横を見ると既にスヤァっと寝てしまっている氷鉋がいた。
「うん、いつ寝た?(気絶か、、?)」
「芹生は寝ないのか?」
「寝るわけないでしょお〜?いい加減言ってくれないかなあ。どこ行ってるの?」
芹生の最後の言葉は少し不満気で、空気を完全にひりつかせようとするものだった。
「どこと言われると返答に困る。」
「なんでよお、じゃあど〜いうとこお?」
「安置」
芹生はこの返答にとても嫌な顔になりながらガムを膨らます。当たり前だと言わんばかりの顔だ。
「安置って何かの施設でしょお〜?まさか野原を安置とか言わないよねえ?」
「どうやら話す暇をくれないようだ。」
芹生がすぐさま周囲を確認する。彼らは今街中をトラックで運転している。大通りに沢山のゾンビがバリケードのようになっている。
「氷鉋くん起きて。」
この緊迫した状況ではどれだけ眠かろうと素早く起きてしまう。
「・・・ゾンビだけしかいないであってる?」
「ああ、それに"残骸"だけだろう」
石動の言う『残骸』とは、動きが単純で、歩くことしか移動方法のないゾンビのことである。彼らがゾンビを集めていた時、このタイプのゾンビを集めていたのだ。
逆に残骸とは違い、行動に一貫性のない奇行種を彼らは"狂屍"と呼ぶ。
「じゃあ銃は温存した方がいいよな?」
「ああ。」
「だ・よ・ねえ〜。こっちの時の方が骨が折れるんだよお〜。」
石動はサバイバルナイフ、芹生はゴルフバッド、氷鉋は長い鉄パイプの先を尖らせたものを手に持った。
彼らはあっという間にゾンビを全滅させる。特に石動はまだ息切れをしていない。他二人はスタミナ切れのようだ。
「はあ〜死ぬ死ぬ。もう無理これ、だるい、鬼畜、不満。」
「ほお〜んと、重労働だねえ俺たち。」
「お前たち、休んでもいいんだぞ。氷鉋は今日筋肉痛だったろ。」
「いいよそんなに気を使わなくても。」
そんなことを言っているとトラックの荷台側の上につけておいた出入り口から一人男が顔を出した。
「お、終わったのかい?」
「ああ。終わった。今から出発させる。」
「お前さん、ずっと言ってないがどこへ行ってるんだい?」
芹生と同じ質問をされ、また戸惑ってしまっている。本当に説明しづらいところだというのか。
「俺は今から刑務所に行く。」
「言ったあ〜!?なんでなんでえ?」
「刑務所と言われ、最初にどんなことを思う。」
「ああ〜そゆことお〜」
芹生は囚人と一緒に避難することに不満を持つ人が多いと思い、いうのを躊躇っていたと考える。それでも自身と氷鉋には言って良かったんじゃ無いかとも考えた。
「ここの全員に今告げる。刑務所は完全な安置だ。俺が保証する。内部では、俺たちを信じろ。」
「俺たちも含まれるんだ、、。」
氷鉋は驚いた表情で石動を見る。彼の目は信頼させるような力があるように思える。
気がつけば目的地に着いていた。もう夕暮れだ。ここからは警備員が巨大な門の裏側から監視している。そこへ石動がスタスタと足早に向かう。
「石動だ。色々な人を運んできた。ゾンビに噛まれた形跡も無いのは確認済みだ。」
警備員たちは驚いた顔をしながら石動を見る。
「驚いた。あれから結構経っていたからてっきりゾンビになってしまったのかと思ったよ。」
「生きてて何よりだよ。石動くん。」
この状況を見て芹生と氷鉋は目を合わせる。
「石動さんってここから来てたの、、?」
「あの人さあ〜警察じゃなくて自衛隊じゃなかったっけえ?」
トラックごと中に入るとそこには沢山の人が避難していた。中には自衛隊の服を着た人、警察の服を着た人と様々だ。
きょろきょろとしながら彷徨く芹生と氷鉋に石動が声をかける。
「ようこそ。そしてよろしく頼む。これから彼らを養いつつ、ゾンビを全滅させる。これから自給自足できるものを探さないとなのだが来るか?」
二人は声を揃えて言う。
「もちろん」
「お供させてもらいますよお〜石動さあ〜ん。」
「遠出はやめて欲しい。怖いから、、!」
「今更じゃ無いか?氷鉋。」
この和やかな雰囲気は刑務所のみで味わえる贅沢だ。彼らが琉導たちと会うのはそう、遠くはないだろう。




