第六話「安置へ」
「こんな状況だけど自己紹介まだだったね。私は花幡百合。ゾンビさんは名前言えないよね?」
「(琉導だよぉ〜柊琉導って名ですぅ〜)」
ただ佇んでいるだけのゾンビを前に微笑んではいるが冷や汗で若干百合は焦る。
「何か名前が書いてるものとか持ってない?」
「(小学生じゃないんだよ。俺百合さんよりまあまあ背高いよ?)」
「まあ、分かってからでいっか。君とは会話できないけど、頼りにたせてもらうね。」
正直にこちら側が頼りにしなければならない。ここからは百合から始まり、ある程度の人間が意思のあるゾンビだと信じてもらえるところまでいってようやく人間に戻る方法を探す旅に発展できる。鍵は花幡百合ただ一人。
「(でも今俺はいつ百合さんを噛むかわからない。マウスピースか何か欲しいな。)」
琉導は歩き出す。ひとまず血を備蓄したりするためにバッグを探そう。救急バッグは単純に忘れた。この階でいい感じのものを探さないと。そう考え、琉導は歩き出した。百合はしっかりついてくるがあたふたした顔でいた。
「服とか、、大丈夫そ?」
ハッとした。確かに今まで服は着替えていない。すぐに服を見たが想像以上にボロボロだ。家着だったのもあるだろう。何より大怪我し過ぎていたのが大きい。
「何か必要?取りに行くよ?」
「(いや、ダメだ。男として女性に力仕事は、、)」
琉導は腕を見る。動かせる。手を見る。動かせない。
「(不甲斐ねぇ〜。見つけても百合さんに細かいことしてもらわないといけないのかぁ〜。)」
ひとまずバックはあった。部活用のカバンだろう。想像以上にいいカバンだ。
「バッグ欲しかったんだ。目の前のことで私頭一杯になっちゃってた。」
琉導はカバンを腕を振り下ろして叩いて物を入れろと言わんばかりの行動をした。
意外にも百合の察する能力は高く。洗浄瓶以外の物を入れた。
「私が持つよ?」
「(いや、持たせるわけにはいかない!)」
琉導はカバンの紐を持ち上げた百合の逆側から腕と頭を入れ強引に取った。
「ひゃぁ、、?」
「(これでよし。後は、、)」
琉導は歯をガチガチと鳴らし、合図した。
しかし、百合は洗浄瓶を口に向けて血を注いだ。
「(違う違う違う、マウスピース探したいのよ、)」
「何かわからないけど、、とりあえず外出よっか?」
「(そういえばそうだった。)」
ここを出ないと何も始まらない。ひとまず窓から外を見る。駐車場の方がゾンビがほとんどいないため、逃げる方向はこっちしかない。ならやるべき事は一つだ。
琉導は呻き声を上げながら腕を駐車場方面に上げた。そしてカバンを腹に置き、体を使って壁を乗り越え、落下した。
「え?え?え?何してるの?」
琉導は雑な落下の衝撃で全身に重傷を負うが完璧に治る。
「(さあ来い!俺が受け止める!)」
琉導がカバンを体の外に置いて大の字になった事で察する。クッションになってくれている。
「ふふっ、信じるよ?」
百合は琉導めがけて落下した。2階からの落下なのにもっと長く感じる。勇気があったわけじゃなかった。だからこそ空中の時間がとても怖くなる。だが、信じたことを考え直す事はできない。
「(完璧。)」
百合はしっかりと琉導の上に落っこちた。百合には目立った外傷は無さそうだ。
「だ、だ、だ、大丈夫?ごめんね、痛かったよね?」
「(ちょ、仰向けだと起き上がれない、、)」
琉導が腕を伸ばしたのですかさず百合がその腕を掴んで持ち上げる。
「さっき落下した時も動いてたけど頑丈だね君。、、、あの、本当に大丈夫、、?」
琉導は腕を持ち上げ、丸を作ろうとしたが手が動かずハートのような形になった。
「その形だとどういう意味かな?OKかな?」
百合は微笑みながら琉導のそばにいる。二人はゆっくり歩き出す。やはりここら辺はゾンビが少ないようだ。歩きやすい。
「あ、思い出した!マウスピースか何かつけないとだったね。スポーツショップ行こうよ!ちょっと歩くけど山道歩いたらゾンビにそんなに出会わないかな?」
いい提案だと思う。ゾンビと出会わないのは一番重要な事だ。琉導は百合について行くことにした。
「私ね、ちょっと前まで家にいたの。近くにゾンビが来たって言われて急いでみんないるあの病院に行ったの。」
道中で話しかけてくれた事はこのゾンビ侵食世界の絶望そのものだった。
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少し前まで百合は病院内でいろんな人と身を潜め、過ごしていた。患者も多く、体の不自由な年の人もたくさんいた。ここでは百合の明るい存在が希望に見えていた。
「おーい!大人で男の方!車椅子の方が来た!運ぶのを手伝ってくれ!」
こうして数人が毎日やってくる。そろそろ手狭になってくる。幸い、ここの病院はコンビニ、飲食スペースが多く取られている施設のため、食べ物は安定している。
ここからが地獄の始まりだった。ある人が入ってくる時、後ろにゾンビがいた。中の人々が開けるか戸惑う中、外の人が無理矢理ドアをこじ開けて侵入してきた。そこからゾンビが中に入ってきたのだった。
「百合ちゃんは逃げろ!40にもなるおっさんが時間稼ぐから!どこかの部屋に早く!」
「ほら早く!おっちゃん!カート投げ捨てるから右に避けて!」
「患者は奥に避難して!子供達は上に!」
「ごめん、みんな、、こんな私を救って、、」
百合は子供の中で最後まで残るが、この渾沌には何も手出しできない。階段を急いで転んで怪我をしながら上がった。
音が無くなった時、百合は全てを察したのだった。
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