第五話「人とゾンビ」
ここからは琉導が人語を話せていないことがわかるようにセリフは「()」の形になっております。
「ひぇぁ、、」
目の前で扉を閉めるゾンビを目の当たりにした彼女は花幡百合という名前だ。今は恐怖、希望、絶望、混乱などで頭が回らない。
「(はぁ、はぁ、何があった、、なんで戻れたんだ、、。)」
琉導は目を倒れている女性の方へ向ける。少し崩れた長い黒髪を持ち、薄オレンジ色のカーディガンとロングスカートを履いていて、少し泣きかけているが可愛らしい顔立ちだとわかる。
「(、、、手ぇ怪我してるのか、、、俺この子喰う瞬間に血ぃ飲んでたか、、?)」
琉導は元の仮説(血を飲む事で意識が戻る)が正しいかの根拠がわからない。一旦彼女の血を飲むのはなんとなくしたくない。それに、せっかく持ってきた輸血パックがある。それを利用することにしよう。
「(いくつか動きにくいところあるけど動かせるところはあるんだよなぁ)」
琉導は歯を使い上に持ち上げて無理矢理血を飲んだ。琉導からしたらひと段落済んだので、そこにいる女性とコンタクトをとることにする。
「ゔゔぁあゔゔぁゔぁゔゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁ(俺の言葉理解できてる?)」
自身で言っててわかる。彼女の目が戸惑いの目になっていて伝わってないことが。
「、、、私を、噛まないの?」
「、、!!」
チャンス!!と琉導は思う。ここで人間としての意思があることを示すときだ!琉導は返事をしようと首を動かそうとする。だが、同時に肩ごと縦に振る。
「あぁ、ぇえ、え?」
「(そうだよなぁ、、!俺がなんか落ち込んだ感じで戸惑うよなぁ、、、!)」
この叫び声は彼女には響かない。琉導は次のフェーズに進む。大量に垂れ溢れている血(血液パックから溢れたもの)を何度も踏んでアピールした。
「ん、え?血液パックが欲しいの?」
ここで琉導は首を振らず、膝を利用して綺麗に垂直な体全体での縦振り(擬似頷き)をした。
「そうってことでいいかな、、?」
「(そうだよ、、もうそういうことでいいよ!俺は血を欲しがってるゾンビだ!)」
「じゃ、じゃあちょっと待ってて、」
彼女は手でストップのサインをし、床に落ちていた洗浄瓶を拾い、まだ少し残っている血液パックをその中に入れた。
「これでいつでも飲めるけど、、これ持てる?」
琉導からしたら案の定、百合からしたら的外れな結果だ。百合の手から琉導の手に渡る瞬間、力が入らず落とした。
「私が持つかぁ、か、噛まない?」
「(したくないよ?でも血を飲まなくなったら体が勝手に噛もうとするのよ、、)」
空間が沈黙で覆われる中、ふと百合は怪我をしていた左手に違和感を覚える。まだ痛かったのだ。琉導はこれを察知し、近寄って肩からかけている救急バッグを近づける。
「え、、?救急バッグ?、、、包帯ってある?」
さっきやったのと同じように疑似頷きをした。百合は少し微笑んで右手で消毒液と包帯を見つけ出し、左手を消毒し、ぐるぐる巻きにした。
「これでよし!ありがとう。なんでこれ持ってるの?」
琉導は首を右に傾ける。
「あ、わからないのね。、、、ととと、とにかくここから抜け出さないと!それと噛まれるのも他の人噛むのを見るのも嫌だし、、、マウスピースとかも見つけないと、、」
この状況でよく冷静に考えれるものだ。琉導が喋れないため、コミュニケーションが取れていないのと同義だ。それに加え、この世界だ。誰もが生きるために争う環境でゾンビを信じているんだ。少し申し訳ない。
「(俺はそのまま出ても問題ない。けど人間である以上、この人は救えない、、!なら逃げ道は一つしかない、、)」
琉導は窓に近づき腕を窓に向けて振る。
「窓、、」
「(そうだ、あんたはこっちから逃げてくれ!俺はでが不自由だからそっちから行けない、、その間に俺は内から会いに行く!)」
百合の手はまだ痛む。が、ゾンビが与えた希望が痛みを和らげる。一番角には階段がある。その間にゾンビがいるかはわからない。一階にまで行くとゾンビに気づかれる。
「2階に来て。必ず、会おうね。」
百合の背中を見届け、琉導は体を使い、扉を開け、ゾンビの群れを掻き分け、階段をふらつき、倒れながら降りた。
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2階に着いた。あたりにはゾンビがいない。なぜか上に行くほどゾンビのいる謎の病棟はセーフゾーンが2階のみのようだ。
「(あの人は無事か、、?とりあえず緊急出口みたいなところは、、あった!あそこであってるはず!)」
琉導はそこに頭突きする。するとガチャ。という音と共に彼女が出てきた。
「あ、大丈夫そう?血いる?」
そう言いながら口元には既に洗浄瓶の先を備えている。
「(欲しい。君を喰らいそうで怖い。)」
そう思い「ゔぁ、」と言うと百合はビクッと驚き、そのまま手に力が入り、琉導の口に血が注がれた。
「(ご、ごめん。脅かすつもりはつもりなかった、、)」
琉導の顔が微かに悲しげな顔になる。それだけ見分けがつかない変化だが百合は気づく。
「悲しいの、、?」
その言葉で嬉しさが込み上げてくる。貴重な進歩であり、未来が見えてきたからだ。
「え、いや、?なんとなくそう思っただけだから
、間違ってたらごめん、、」
琉導は重い腕を持ち上げ、ハグする。
『ゔぁゔゔぁゔぁ』
琉導からすると「ありがとう」といっているつもりだが、伝わらない。泣きたいくらいの喜びを本能は許すが肉体が泣くのを許さない。それでも行動は時に言葉にも匹敵する。百合はゆっくりと話す。
「私、あなたとちゃんっと話してみたい。探そうよ。人に戻る方法。」
琉導はその言葉で再度喜びだけを噛み締めた。




