第二話「ゾンビの習性」
「刺せ刺せぇ!ゾンビは脳天貫いたら動かなくなるぞ!頭狙え頭ぁ!」
指揮をとりつつ最前線にいる男が大声で叫んだ。彼らは先ほど叫んだであろう女性を救うべくバリケードの外へ出たようだ。琉導はゾンビの群れの後ろで見ていた。隠れてはいるが男たちは目の前のことで目一杯で、琉導を見ることはないだろう。ひとまずゾンビたちの前に行ってどうなるかを検証することにした。丁度よく遅れて人間の元へやってきたゾンビが来た。こいつは都合がいい。一旦10歩くらい空いている状態で横にいるが反応がない。
「もっといけるか?一歩、二歩、三歩、、、」
恐る恐るゾンビに近づいて、とうとう目の前まで来た。が、反応がない。やはりゾンビは敵対してこないようだ。これでようやく自由が保障された。ここからが問題だ。どうやって人を助ける?それが一番の目的であり、難題でもある。しかもこの間に女性をバリケード内に連れ込もうとしているところだ。
「う、うわぁぁぁぁぁ!!手がぁ、手にぃぃ!!」
一人の男がゾンビに噛まれた。見るからに侵食が始まっているため、残念ながら助かりそうに無いだろう。
「ちっ、おい、真田をバリケードの外へ出してくれ!もう手遅れだ。」
そう命じられ、その真田という男は外へ出された。案の定ゾンビとなり、また仲間の肉を喰らおうとしているが、無慈悲にも突き刺されてしまった。刺した男は嘆き悲しんだ。
「お前はもう下がれ、無理はしなくていい!」
指揮を取る男は元友人を刺した人を奥へ行くように言った。次第にゾンビは減っている。この判断は正しいだろう。が、琉導にとっては時間がなくなっている証だ。
「早くあの人たちが奥側に行くまで時間が無い!!突っ立っている場合か!行動しないと、、助けるんだろ、、?」
まだ焦らなくてもいい場面であるが、琉導はプランも無しに咄嗟の判断でゾンビの群れに向かうことにした。男たちの近くに辿り着いたその時だった。突然、空腹が琉導を襲った。腹は鳴ってない。ただただ人を見て腹が減る。
「一口、、食う、喰らってやる、、、!」
突如脳内に流れ込んできた飢餓の感情。食すことしか考えれなくなってしまった琉導は目の前の人間を『生きた肉』としてでしか判断できなくなってしまった。だが、琉導は異例の存在。脳が侵食されてはいるがかろうじて意識はあった。
「くそ!(食べたい)ダメだダメだ!(喰らいつきたい)こんなとこで終われない!!だから頼む!動けぇぇぇぇ!!!」
琉導の声は虚しく届かなかった。ただ人間の前に進んでいく。その光景をずっと見ることしかできない。視界はだんだんと暗闇に染まっていく中、とうとうバリケード前まで来てしまった。目の前にはスコップを鋭利にした武器を持つ男がいる。
「く、来るんじゃねぇ!!」
琉導の脳天に武器が突き刺さる寸前だった。
「死んでたまるかぁぁぁ!俺は!人を!救いたい!!!」
琉導は急に肉体を動かせるようになった。琉導は咄嗟に体を後ろにずらし、攻撃をかわした。
「な!?かわした!?」
男は驚きの表情でゾンビ琉導を見つめる。琉導は勢いよく後ろに行き過ぎた結果ゾンビの死体が地面となっているため、バランスを崩してしまった。どうやら飢餓に自我が勝ったらしい。琉導は倒れながら考えた。
「もう人の近くに行くのは危険すぎる、、これからもっと考えて、人と距離を置きつつでどう助けるかを。」
そろそろゾンビが一掃されるころだ。もう、ここで行動するのはよそう。チャンスはまだあると考えよう。ついに、最後のゾンビが倒された。人々は安堵してバリケードを強化しつつ、退散した。
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「腹がへってんのかなぁ、」
琉導は誰もいなく、比較的に綺麗なコンビニを発見し、そこで飢餓を乗り越えることができるか考えた。
「手に力は入りにくいし袋は開けれねぇな、、、」
琉導は手に力を入れずに食べれるものを探していると、レジの方向に目が行った。肉まんが飾られている。
「えぇっと、俺は体が再生して、歯の方は動かせるから、、、」
考えた上で、琉導は豪快に顔を肉まんの方へ突っ込ませた。勿論ガラスはついている。琉導はガラス付きの肉まんを食べたが、味はあまりわからない。
「うっ、味がなんか無いからやべぇな、吐くかも、、、ゾンビって吐けるのか?」
不思議と吐き気はすぐに無くなる。これも再生するのか?と驚くとともに、食べることで飢餓をなくすことはできなそうだと考えた。
「ん〜。流石にあの状態の対策は取らないとだしな、何がゾンビにとって有効なんだ、、?」
琉導はゾンビについて考え始める。今のところ判明してるゾンビの習性、特徴はこうだ。
・人を噛むとその人をゾンビにする。
・人の近くに行くと人の肉を噛もうとする。
・基本歩きだが、人を見つけると早歩きより少し遅いくらいで歩き出す。
・脳が弱点
ひとまずこんなところでいいだろう。やはり、無意識に人を噛もうとすることが気がかりだ。謎なのは人のみを狙って噛もうとする点。噛んだらそれ以上が無いこと。『噛む』に何かの関係があるのか、『人の新鮮な肉』の方に関係があるのか。噛むことは試せない。だから、肉の方で考える。
「肉じゃない、血か?噛んで血を飲んでやめているのか?だとしても微量すぎる。噛みちぎろうとしないのはなんでなんだ。」
だが、考えるだけでは答えは出ない。自身が他者をゾンビにせず血をとることが何よりも難題だ。
「病院、病院なら血液パックがまだあるかもしれない、、、!なら行こう!行くだけ行ってなければまた考えればいい。」
情報が出回らない世界で歩き回ることは何よりも重要で最も危険だ。だが、琉導はその危険を考慮しなくていい存在。考察だけでは解決できないことは直接試しに行けばいい。琉導は近くの病院を目指す。
「ん?血で意識戻るならなんかゾンビじゃなくてヴァンパイアっぽくね?」
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ここは病院の一角。とある女性が隠れている。彼女の名は花幡 百合。彼女のいる病棟ではたくさんのゾンビに囲まれて、脱出できそうにない。おまけに左手を怪我している。その絶望的な状況で彼女は小さな声で願った。
「助け、、て。」




