第一話 謎めいた帰還
ーー『永久凍土』それは世界の謎が隠された場所の一つでもあり、古代生物の発見に貢献され、謎を解明していける場であり、最悪『死』を招く場、天国と地獄の融合地点だ。だが世界は『永久凍土』という禁忌の地に触れすぎてしまった。それは古代の病原体の復活。人々はそのウイルスを映画にちなみ『ゾンビウイルス』と名付けた。誰しもがこれで理解したであろう今後の地獄。それが日本に到達するのは時間の問題であった。どんどんと国が侵略されている中、世界は食糧と土地の取り合いで常時小国同士の戦争状態のようだ。そして現在、日本にいる柊 琉導はゾンビに追われる日々を過ごしている。
「はぁ〜。この安置に来てまだ1日も経ってないんだけどなぁ、、詰みの予感がする。」
琉導は今、マンションの一角に身を潜めていた。都会では食料争奪による抗争が起こっているらしく、比較的協力的なこの地で安全な場を探すことになっていた。正直、食料が尽きるより早くゾンビに追い込まれるとは思わなかった。
「ここのドア、見た目からして頑丈だろ、、なんで瀕死状態なんだよ」
窓から逃げようにも琉導は三階。もし打ちどころが悪かったらゾンビの餌になることになるとわかっている。その恐怖が、琉導の足を止めている。
「いっそ自殺すればよかったな。もっと高い部屋に逃げ込めてたらなぁ。楽に死ねたのに、、」
眉間にシワがよった顔つきになっていたが、どことなく諦め、笑ってしまっている表情だった。その時だった。扉の方から鈍い音と呻き声が同時に響き渡った。命のカウントが始まった。
「どうする、、潔く死ぬか、一か八かで飛び降りるか!?」
そんなことを考えている間にどんどんとゾンビは琉導の元へ近づいている。足は窓へ向かうことを勧める。が、心は躊躇いと諦めで埋め尽くされていた。
「俺は漫画の主人公じゃないんだ。勇気なんて、希望なんて、もうとっくにねぇや。」
そう言った琉導はゾンビに噛まれ、倒れた。ーーー
「、、、、ん? 俺、なんで意識、、天国か?ここは、、、、」
そう言いながら起き上がった琉導はぼやけた目で周りを見渡した。そこはついさっきまで大量のゾンビに襲われた場所だった。這いずり回ったような後もしっかりついている。辺りを捜索している内に目に入ったのは自身の手だった。その手は若干腐敗し、変貌しかけている。まるで侵食されているようだ。恐怖感で襲われた時とは違い無我夢中で琉導は急いで洗面台へ向かった。そこで見たのは紛れもなく自分自身だった。ただ少し、目の色素が薄く、全身に青筋のあるだけの、、、。
「は、、?はぁぁぁぁぁ!?なんで!?何がどうなって!?噛まれて、なんで、、、」
そんなことを言い、焦る琉導の背後にゾンビが現れた。咄嗟に振り向いたが、ゾンビは襲おうとする気配はなく、しばらくして外へ出て行った。この瞬間はっきりとわかった。というより理解せざるを得なかった。ゾンビになっていると。ーーー
「、、、どうしよ。外出は自由にできそうだけどなぁ。マシンガンでゾンビ駆除してる奴とかいたら終わるな。、、ん?つか俺もしかして言葉使えるんじゃね、、、?今までゾンビを警戒して声出すの控えてたし、とびきりの大声を出してやる!」
そう考え『ゾンビ人間だぁー!』と叫んだ。
「ゔぁああゔあゔあゔぁぁぁ」
あたりに響きわかったのは言葉にならない呻き声だった。琉導は言語での対話という手段を無くされ泣き崩れてしまう。
「いや、まだだ!文字を書ければ、、、」
そう考え、ペンを掴むように握り、地面に『あいうえお』と書こうとした。だが、かけたのはとても大きく、大雑把でとてもあ行を丁寧に描きました!とは言い難いものだった。ほぼ岩の切れ目である。
「だったら、、、」
そうして琉導の思いつく連絡手段を試して行った。ケータイ(タップ不可)、モールス信号(知らないんで無理)、物を並べる(手先が動かしにくく腹が立って辞め)、電話(うまく番号を押せない)、、、
こうして最後に手にしたのが笛だった。吹けれさえすれば、なんとか知能のあるゾンビという認識はされると考え、口にゆっくりと運んでいった。
「頼む、、」
そのまま吹こうとした時、琉導は笛を落とした。口に力が入っていないのだ。噛む力はある。肉のほうが動かない。
「何すれば目覚めると思うよ俺。、、あーなんか落下した時にビクッてなって起きることあったなぁ。どっからか落下するか?」
琉導の頭の中で一瞬よぎる死ぬ勢いで落下すること。でもこれは夢と断定した時にしかできない。死ねば元も子もないから。
「痛いのは嫌なんだよなぁ。」
そう言いながら顔はこわばるが手は徐々に包丁の元へ伸ばされている。ペンの時と同様に持ちづらかったが、なんとか持ってこれた。
「手の甲ならまぁ傷ついても問題ないか。じゃあ、3、、2、、1、、、」
切った。確かに切ったさ。でも感覚がしないんだ。どうやら痛覚がないらしい。よくよく考えれば手が動かしづらいのもそうだ。神経がもう逝ってしまってるのかもしれない。いや、若干麻痺しているという方が正しい。だか血は出ている。そんな感覚がある。そう思い傷をつけた左手を見ると、血はなく、傷もついていなかった。何が何だかわからない。何故再生しているのか。
「どういうことだよ、、もう、何もわかんねぇよぉ、、」
夢じゃない。そうわかっても夢としか思えない光景。何もかもが理解不能でうまくいかない。これが琉導の精神を打ち砕こうとしていた。
が、ヒビが割れるにはまだ浅い。
「まだ、俺みたいなゾンビがまだいるかもしれない。探して、きっと、内側から、人間を、、救えるのか、、?この地獄から、生き残った人類皆んなを、、。」
夕日に照らされた琉導の死んだような目はまだ希望で覆われていた。それが一過性のものとなるか、永続的なものとなるか。まだ、誰も知る由はない。
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「、、、とりあえず出るか。」
絶望と希望の1日が終わり、日付が変わった。まだ夢に縋る感情はあるが昨日ほどでもない。今も現在進行形で感染の進む世界で本当に自由に出歩けるのか。それさえできればなんでもできるだろう。
そんな希望を胸に、ゆっくりと階段を降りた。不思議とゾンビも人も見えなかった。昨日が嘘みたいだ。そう思いつつマンションから出たその時だった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ほぼ100%ゾンビに襲われているであろう悲鳴。ここぞとばかりに琉導は走った。ただ少し左右に大きく揺れる大振りな走りだった。
辿り着いた頃にはもうカオス状態だった。男たちが様々な武器と色々な物を使って即席で作られたであろうバリケードで応戦している。すぐではないが突破されるだろうとわかる。だとしてどうする?下手にゾンビの群れに突っ込むとゾンビに襲われるか人に突き刺されて死ぬかもしれない。
「こっからどうしろって、、、?」




