第十一話「狂屍」;石動視線
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場面は変わり、石動視線へ。琉導たちが身を潜めている間、石動、芹生、氷鉋は活発に動き回っている。
今回街へ出向いたのは食料確保、人命救助、ついでに資材回収だ。主に刑務所から外出する際には石動を筆頭に力のあるもののみで構成され、出発している。
今回は特に遠出する事も無いため3人で出発している。
「、、、なんか、、気まずいような、、」
車内には静かな、ピリッとした外と似た空気が漂っている。基本的に静まる空気の理由は芹生が寝ているからである。
芹生は起きるとハイになり、車酔いになると思った瞬間すぐ寝るのだ。安全を手に入れてから気が楽になり、素が出始めたのだろう。
「音楽でも流そうか。」
「あ、はい、」
そう言いながら石動が車のモニターをぽちぽち押す。が、音楽はならない。
「さらに気まずくなった、、、!」
車内には昼なのに夜のような静かさとクーラーによる寒さで気まずいを超えて吐きそうになっている。
「もうそろそろ街だ。芹生を起こしておいてくれ。」
確かに目に見える程度近くなって来ている。大きな公園、高い建物、商店街。賑やかそうな場とは違い、気持ち的には緊張感が高まっていく。
「うっす。りょーかいっ、、と。起きろー芹生、、」
氷鉋は芹生をゆさゆさと揺らすが起きない。
「そいつに揺さぶりは効かないぞ。」
「起ぉぉきろ!芹生!」
氷鉋がビンタして芹生が夢から引き摺り下ろされる。
「いぃぃぃっってぇぇぇぇ!!!」
起きた芹生には右頬に痛みが残った。自身の目の前に手を伸ばしていた氷鉋を確信犯と見て氷鉋を怒る。
「おぉい!何やってんだよ氷鉋くん!!」
「揺さぶっても起きなかったんだもん!これ以外思いつかなかったんだよ!」
氷鉋は焦りが止まらないが空気は静寂から和やかに変わっていっている。
「もぉ〜!せっかく飴細工で風船再現してたのにぃ〜!」
「なんだよその夢のセンスは!」
この雰囲気になっても未だ石動は笑いも話しかけもしない。前だけに集中している。
だが石動はゆっくりと淡々とした言葉でこのおふざけ合いに急に割り込んできた。
「狼煙だ、、!」
一瞬で3人の視線が街の方へ向く。確かに街のビルのような高い建物の一つから煙が出ている。それも煙がずっと上がっているわけではなく、小さく固まった煙がポツポツと上がっている。
「あそこずっといたのかなぁ〜?早くしないと食料持たないんじゃな〜い?」
芹生の言う通り、もう食料が尽きて数日経っていてもおかしくないのだ。早く煙の場所まで登る必要がある。
「なるべく安全な道を作りつつ、最短で動くぞ。」
そう、石動が言葉を放った瞬間だった。
ドォォドドォォォォン!!!!!
という音と共に花火のような色が煙のそばから見えた。
「っっ、、!馬っ鹿!そんな爆音じゃゾンビが、、!」
氷鉋の予想通り、建物内、裏路地など様々なところからゾンビが出て来始めた。
「降りたら狂屍に気をつけろ。」
石動はトラックで道路の右側を塞ぎ、これから来るであろうゾンビを右のみ封じることにした。
「武器持って降りろ。ここからは徒歩での潜入だ。噛まれるなよ。」
3人は勢いよく左へ出る。が、既にゾンビが大量に来ており、内部にも何体もいるのがよく見える。
「これどうするよぉ〜石動さぁん。」
ほぼ四面楚歌な状況では3人だと不利でしかない。なんとかして数を減らさないといけない。
「芹生、氷鉋。耐えれるか?」
「はい?」
「俺が注意を引く。狂屍以外は多分だが退けさせることができる。だからそれまで耐えろ。」
ここまでの戦闘はほぼ全て石動の力による功績だ。残る二人には不安が残る。
それでも信頼されたからには、救ってもらっているからには、やらなければならない時はその世界でいつでも起こりうることだ。
「石動さん。どんな手を使っても生き残りますよ。」
「そうだねぇ。死ななければいいんだもんねぇ。でも急いでよぉ?石動さぁん。」
二人の信念は確かなものだ。死なないという信頼が確かに見える。たった数日の仲だがそれを感じさせない火を灯した眼差しだ。
「託した。」
そう言い、石動はトラックの上に登って、隣のビルの窓を蹴破り、戦場を後にした。
途中、何体かのゾンビと出くわすが、体術のみで倒し、かわし、勢いを殺さず突き進む。
「近くにあった広場にスピーカーがあった。あれは防災行政無線。あれからアラートなどの音さえ出せば、最低でも残骸たちを引き離せれる!狙うは市役所、、!」
この街のことは先に頭の中にある程度入れていた石動にとって、市役所までは既に把握済みだ。
「急げよ。もうこれ以上殺させはしない!」
そう思う石動の背中側から爆発音が聞こえる。
「まずは一気に倒さないとねぇ!」
芹生がダイナマイトを使ったのだ。それはトラックに積んでいた石動も知っていたため、何も心配は要らなかった。
「オラオラ!かかってこいよぉ!一旦数減らしといてやるからぁ!」
芹生が立て続けに3個のダイナマイトを起爆させる。序盤のゾンビの勢いは消えてゆく。
「そんなにハイになるなよ芹生!油断禁物!冷静に!」
氷鉋は狼煙のあった建物の一階のゾンビたちを相手にしている。こちら側は爆弾など使えないため、一体ずつ対応しなければならない。
「いやぁ〜、数減ってるしい〜いだろ?音もどぉせ花火でほとんど集まってんでしょぉ」
芹生の右手には前回の時とは違い、ゴルフバットから少し大きめの包丁に変わっている。一体ずつしっかり脳や心臓、首を狙っている。
が、急に横から芹生目掛けて走ってくるゾンビが現れた。
「、、!来たぁ、、」
すぐに危険を察知した芹生は後ろにずれてかわして、背中から心臓部位目掛けて刺す。
「氷鉋くん!狂屍紛れてるよぉ!気をつけてね!」
そういうとすぐに芹生の前に拳を握り締め、芹生の元へ歩いてくるゾンビが来た。
「怪しいけどねぇ、一様こいつも狂屍カウントかなぁ。」
一方で氷鉋は急激な焦りを覚える。
「なんでこいつら急に、、俺を襲わなくなった、、!?」
すると突然、ペタペタと足音が2階から聞こえる。
「、、はぁ!?ゾンビ!?」
2階から降りて来たゾンビは呻き声を上げながら腕を右に出す。
すると一部のゾンビが出入り口側へ向かい、立ち止まった。
「!!?閉じ込められた!この狂屍、、知性がある!しかも司令塔、、だとしたら」
異例の狂屍が氷鉋の頭に最悪な可能性を想像させた。




