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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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8/10

交易路崩壊そして最大の危機

【神の加護】

天使より与えられた特別な加護。

保有者の安全を最優先とするため、危険と判断された行動や能力の使用を自動的に制限する。


この一文を見た瞬間、俺はあることを思い出した。


転生直前。


天使が何かを言いかけ、途中で誤魔化したあの時のことを。


「おい天使野郎!」


「無限魔力が暴走するって知っとったやろ!」


「しかも『まぁいっか!』とか言って、この加護つけ忘れとったなぁ!」


「下手したら俺ホンマに魔法の練習で死んどった可能性あるやんけ!」


思わず誰もいない部屋で叫んでしまう。


だが、説明欄はまだ続いていた。


加護の成長に応じて制限の一部が緩和され、新たな恩恵が解放される。


「いや、だからどうやったら成長すんねん!」


「あのアホ天使!転生前に説明しとけよ!」


ひと通り思いの丈をぶちまけた俺は、大きく肩を落とした。


「はぁ……まぁ今さら何言うてもしゃあないか。」


そう自分に言い聞かせながら、俺は眠りにつくことにした。


翌朝――


『おはよー! お兄ちゃん!』


「ぐふぇ。」


フィアが俺を起こしに来た。


それも勢いよく俺の腹の上へ飛び乗って。


「フィア……苦しい。起きたから降りてくれ。」


『お兄ちゃんって起こしたらすぐ起きるね!』


何を言うとんやコイツは。


あれだけ勢いよく飛び乗られたら誰でも起きるやろ。


「あぁー……頭いてぇ。」


昨日の酒のせいか、頭が重くズキズキする。


完全に二日酔いだ。


調子に乗り過ぎた。


「ヒール」


俺は自分の頭に向かって回復魔法を唱えた。


「凄っ! マジで治った。」


神の加護のことなどすっかり忘れていた俺は、痛みから逃れるようにヒールをかけた。


「あっ、てか昨日の晩……」


そこでようやく思い出した。


「神の加護って、制限というより魔力制御装置みたいなもんなんか?」


「やとしたら属性魔法も封印せんでええやん!」


「けど流石に街中で何かあったらアカンし、後で試すか。」


『何一人でブツブツ言ってるの? 頭おかしくなっちゃった?』


「誰が気狂いや! 頭おかしくなってへんわ!」


『それなら良いんだけどね!』


『それより、お兄ちゃんも集会所に来て欲しいってマヌルが言ってたの!』


「俺も? なんでやろ?」


「まぁええわ。すぐ行く。」


俺は軽く身支度を済ませると、フィアと共に集会所へ向かった。


朝のペルシャ村は既に活気に満ちていた。


畑仕事へ向かう村人。


朝から家事をこなす女性達。


子供達は元気よく走り回っている。


「みんな朝早いなぁ。」


『当たり前だよ!』


『朝から動かないと食べるもの無くなっちゃうもん!』


「なるほどな。」


やはり自給自足の村らしい。


そんなことを話しながら歩いていると、集会所へ到着した。


中へ入ると、昨日会議をしていた面々が既に集まっていた。


『おっ! 翔斗来たか!』


マヌルが手を上げる。


『急に呼び出してすまんな。』


「いえ、大丈夫ですよ。」


『実は少々困ったことになっていてな。』


昨日の続きだろうか。


それにしても昨晩より集会所の空気が重い。


『どうすんだよ。この状況。』


『どうするもこうするも、来ないものは仕方がないでしょう。』


『塩も残り僅かだったわよね。』


『冬まで持たんかもしれん』


『それはわかってるわ。でも来ないなら来ないで何か対策を……』


バンッ。


ガルドが勢いよく机を叩いた。


『そんなことはわかっている。』


『だから今考えているんだ。』


『少し静かにしてくれ。』


集会所が静寂に包まれる。


『聞いての通り、なかなか案が出んのじゃ。』


『旅人の知恵として、翔斗から何かないか?』


マヌルに問いかけられたが、話の大筋が全く読めない。


「そんなこと言われても、何の話かわからなかったら出せるもんも出せませんよ。」


『あー、それはそうじゃな。悪かった。』


そう言ってマヌルはことの経緯を話し始めた。


『……というわけで、行商人が来ないのじゃよ。』


話をまとめるとこうだ。


この村は基本的に自給自足で生活している。


だが、どうしても村だけでは手に入らない物もある。


それらを行商人から仕入れ、逆に村や森で採れた果実などを売ることで生活していたらしい。


しかし、三か月ほど前から行商人が月に一度程度しか来なくなってしまった。


原因を聞いたところ、交易路が閉ざされてしまい、大きく迂回しなければならなくなったそうだ。


「つまり閉ざされた交易路とやらをどうにかすれば良いんでしょう?」


するとガルドが静かに口を開いた。


『貴様に何がわかる。』


『閉ざされた交易路というのは、断崖を渡る橋のことだ。』


「なら、その橋を架け直せば良いじゃないですか。」


『人手も木材も足りん。』


『ましてや工具や重機などあるはずもない。』


「原因はわかってたんですよね?」


「今までは何か対策とかしてこなかったんですか?」


『橋を架け直す技術があるなら、既に取り掛かっている。』


『技術も人手もない。』


『だから待つしかないという結論になったんだ。』


「なるほど……。」


俺はしばらく考え込んだ。


「逆に、村で手に入らない物を取りに行くっていうのは?」


『誰がそんな旅に出る。』


『外には魔物も多く出る。』


『旅に出られるとしたら、私を含め数人程度だ。』


『その者たちが村を離れれば、誰が村を守る。』


ガルドは鋭い目で俺を見た。


『所詮、貴様の考えもその程度か。』


『その程度の案なら、既に議論は済んでいる。』


俺のことを警戒しているからか、随分な物言いだ。


「なるほど。」


「つまり、橋を架ける技術もない。」


「旅に出せる人手もない。」


「ましてや王都へ買い出しに行くことすらできないと。」


「……それって完全に詰んでないですか?」


『貴様、さっきから何を聞いていたんだ。』


『だから、その対策案を考えているのだろう。』


『何もできないなら貴様も黙っていろ。』


『おい、ガルド! そんな口を利くでない!』


マヌルが慌てて制止する。


『申し訳ございません。』


『翔斗は今しがた事情を知ったばかりなのだ。』


『我々のように何日も議論してきた訳ではない。』


『ですが村長――』


『ガルドよ。お前の言いたいこともわかる。』


『だが、翔斗はワシが協力を頼んだ客人じゃ。』


『……失礼しました。』


「いや、ガルドさんの言うことももっともです。」


「すみません。俺の方こそ事情も知らず好き勝手言い過ぎました。」


「でも、完全に詰んでるなら発想を変えるしかないですね。」


『発想を変える?』


「はい。」


「技術がないなら技術者を呼ぶ。」


「人手がないなら増やす。」


「まぁ、どちらも依頼するためには王都へ出向く必要がある以上、現状不可能でしょうが。」


「無理なら別の方法で交易するのはどうです?」


「今までと同じやり方にこだわる必要はないでしょう?」


『確かにこだわる必要はない。』


『だが、別の方法とは何だ?』


「例えばですけど、この村の周辺に他の村や町はないんですか?」


『あるにはある。』


「そこにはペルシャ村に必要な物資があったりしませんか?」


『近隣の村や町の事情まではわからん。』


『それに最も近い二つの村は私達と性に合わない。』


『利己的で憎たらしい鳥人族と、立場ばかり重んじる狼人族だ。』


「なるほど……。」


やっぱり地理も現場も見ずに考えるのは無理があるな。


「その崩れた橋って見に行っても良いですか?」


『……見に行くのか?』


ガルドが怪訝そうに眉をひそめた。


「現物も見ずに案を出すのは流石に難しいですね。」


「商売でも物の良し悪しや事実確認は必要なんで。」


集会所が静まり返る。


『それもそうじゃな。』


マヌルが腕を組みながら頷いた。


「村長もガルドさんも村に残っていて大丈夫ですよ!」


「ただ場所がわからないので、案内人だけ一人ついて来て欲しいんですが。」


『貴様は馬鹿か?』


『それはガルドの言う通りじゃ!』


『翔斗が旅に慣れているとはいえ危険すぎる!』


「魔物ってそんな危険な奴が出てくるんですか!?」


『貴様は旅をしていて、この辺りに迷い込んだのだろう?』


『凶暴な魔獣と出くわしていないのか?』


あっ。


そういえば俺、旅人って設定だったな。


『貴様はそれほどまでに強いのか?』


『私にはそうは見えんのだが。』


「あっ、いえ。運良く出くわしていないだけかと……」


『ならば最低でも五人程度で向かうべきだ。』


『ガルド。案内を頼めるか?』


マヌルがそう言うと、ガルドは小さく頷いた。


『承知しました。』


『どうせ私も今一度現場を確認するつもりでしたので。』


『なら俺も行くぜー!』


『私も付いてくわ!』


若い獣人の男女が二人、手を挙げる。


『よし。ならガルド、お前は二人を連れて翔斗の案内を頼む。』


『待ってー!』


勢いよく扉が開いた。


するとフィアが元気よく入ってきた。


『私も行くー!』


『駄目じゃ。』


マヌルが即答した。


『えぇー!?』


『危険だ。お前は村で大人しくしておれ。』


『嫌だもん!』


『翔お兄ちゃんまた迷子になるかもしれないじゃん!』


「いや、流石に案内役おるんやし迷わんやろ……たぶん。」


『たぶんって言った!』


『ほら!やっぱり私が一緒にいないと!』


集会所の空気が少し和らぐ。


『……はぁ。』


マヌルは大きくため息を吐いた。


『絶対にガルドの側を離れるなよ?』


『やったー!』


フィアは尻尾をぶんぶん振り回しながら喜んだ。


『待ってください! 村長。』


『外は魔獣も多く危険です。私とて、フィアットを守りながらでは……』


『お前もフィアットが一度言い出したら聞かんのはわかっとるじゃろ。』


『無理に引き留めでもすれば一人で勝手について行きかねん。』


『その方が危険だ。』


『それは……わかりました。』


こうして俺は、ガルド、フィア、それに護衛部隊の二人と共に、崩れた橋へ向かうことになった。


冒険の準備をするため一時解散した俺は少し考え事をしていた。


「旅人設定どないかならんかな?」


「いや、まぁ別にええっちゃええねんけど。」


「実際のところ初めての旅やし、何を準備したらええかわからん。」


転生直後で鎧なども持ち合わせていない。


「まぁ、神の加護とかいう絶対防御みたいな能力もあるし、大丈夫やろ!」


心の準備だけ終えた俺はみんなのところへ向かった。


道中、フィアは相変わらず元気よく村の外を案内してくれた。


対照的にガルドは終始無言。


時折こちらへ鋭い視線を向けてくる。


どうやら警戒はまだ解いていないらしい。


そして村を出てしばらく歩いた頃――


『見えてきたぞ。』


ガルドの言葉に顔を上げる。


その先にあった光景を見て、俺は思わず言葉を失った。


「……これは。」


そこには無惨にも崩れ落ちた橋があった。


「さすがに酷いなぁ。」


向こう岸までは数百メートルほど離れていて、さらには断崖絶壁になっていた。


恐る恐る下を見下ろすが地面が見えない。


「これどーやって橋かけたんや?」


さらに周囲を見渡す。


周囲には森林。


少し先には川。


奥には洞窟。


「んー……使えそうな物もなさそうやなー。」


想像していたより、ずっと厄介そうだ。


俺は崩れた橋を見つめながら、深く息を吐いた。


「さて……この状況、どうやって解決したもんかな。」

第8話を読んでいただきありがとうございます!


遂にペルシャ村の問題が見えてきました。


橋が崩れて交易路が使えない――。


さて、戦闘より商売が得意な主人公は、この問題をどう解決するのでしょうか。


次回は現場調査です!


引き続き応援していただけると嬉しいです!

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