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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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6/10

秘密の果実と世界樹会議

『ここがペルシャ村だよ!』


ようやく到着したらしい。


道中、フィアからこの世界について一通り話を聞いた。


この世界の名はアルヴェリア。


剣と魔法の世界だけあって、魔法の存在は当たり前らしい。


人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族。


他にも様々な種族が存在しているという。


種族ごとに生活様式も異なり、


フィアたち猫人族は世界各地に小さな集落を作って暮らしているそうだ。


ちなみに先ほどまで歩いていた森は[ルピナスの森]というらしい。


正直、話だけ聞けばゲームや小説で何度も見たような世界だった。


『まずは村長に挨拶しに行かないと!』


「おっ……おう。」


俺はある事を思い出していた。


ルピアの実。


そう。


さっき食べたアレだ。


美味かった。


実に美味かった。


だが――


村の掟を破って食べてしまったらしい。


理由はまだ聞いていない。


『神聖な儀式で使う実なんです』


とかなら、怒られるだけで済むだろう。


だが――


『村の外で食べると死にます』


とかだったらどうしよう。


転生して初日から死亡。


流石にシャレにならない。


……いや。


流石に怒られるだけやんな?


『ついたよ!ここが村長のお家!』


『……って、どうしたの? 顔色悪いよ?』


「いっ……いや、何でもない。」


俺は不安を押し殺しながら建物の中へ入った。


どうやら村役場のような場所らしい。


ついに村長と対面だ。


「失礼します。」


『誰だ貴様は。』


低く太い声が響く。


視線を向けると、そこには大柄な獣人の男が立っていた。


立派な猫耳。


太い尻尾。


筋肉質な体格。


どう見てもデカい猫だ。


「やっぱ猫なんや。」


思わず口から漏れた。


『誰が猫だ!』


「うわぁ!?すみません!すみません!」


俺は慌てて頭を下げた。


どうやら声に出ていたらしい。


「あっ、いや、ホントすみません!」


「今日が初めて獣人を見た日なので、改めてびっくりしてしまって……」


『村長!ただいま!』


フィアが元気よく手を挙げる。


『コラッ!フィアット!』


『こんな時間までどこをほっつき歩いてたんだ!』


『ちょっとこっちへ来なさい!』


マヌルは怒った様子でフィアを別室へ連れて行った。


『キミはそこに座って待っとれ!』


「あっ。はい。」


俺は入口近くの椅子に腰を下ろした。


そして数分後。


マヌルが部屋へ戻ってくる。


先程までの怒りは消えていたが、その表情は真剣そのものだった。


『事情はフィアットから聞かせてもらった。』


『単刀直入に聞こう。』


『君はルピアの実を食べたんだな?』


「はい。」


「すみません。」


俺は素直に頭を下げた。


そして、その真剣な眼差しを見て不安がさらに大きくなる。


『……はぁ。』


マヌルは深くため息を吐いた。


『食べてしまったものは仕方がない。』


『ルピアの実は経験値と魔力を得ることのできる特殊な果実だ。』


『だが、その価値が外へ漏れれば話は変わる。』


『村の者だけでは守りきれん。』


『最悪、この村そのものが滅ぶ。』


俺は思わず息を呑んだ。


『だから頼む。』


『ルピアの実については他言無用にしてほしい。』


『もし約束を破れば――』


マヌルの目が鋭く細められる。


猫特有の鋭い目だ。


『その時は分かっているな?』


俺は胸を撫で下ろした。


良かった。


どうやら死ぬわけではないらしい。


「もちろんですよ!他言なんてしません!」


安心したせいだろう。


気付けば頬が緩んでいた。


『貴様。本当に分かっているのか!?』


マヌルが机を叩く。


その声には明らかな怒気が混じっていた。


まずい。


完全に誤解されている。


「ち、違います!」


「約束を軽く見てる訳じゃないんです!」


「ただ、もっと恐ろしい事を想像していたので……」


『……ほう?』


「もちろん約束は守ります。」


俺は慌てて姿勢を正した。


『なら良い。』


マヌルはそう言うと腕を組んだ。


『それで君は翔斗と言ったか?』


「はい!只野翔斗といいます!」


『して、その恐ろしい事とは何だ?』


「いや、その……」


少し言いづらい。


だが聞かれた以上は答えるしかない。


「村の外で食べたら死ぬとか思ってました。」


『誰がそんな事を言った!?』


「いえ!誰も言ってません!」


「完全に僕の妄想です!」


『妄想でそこまで不安になっていたのか……』


マヌルは呆れたように額へ手を当てた。


『安心しろ。』


『ルピアの実にそんな毒性はない。』


「良かったぁ……。」


思わず全身の力が抜ける。


『だが村を滅ぼしかねん秘密である事には変わりない。』


『そこだけは忘れるな。』


「はい。」


今度は真面目に頷いた。


『村長?話終わった?』


奥からフィアが顔を覗かせていた。


『おう!フィアット!こっちへおいで!』


するとフィアは尻尾をぴこぴこと振りながら駆け寄ってきた。


『フィアット。』


『はーい!』


『今後は勝手に森の奥へ行くな。』


『はーい!』


『返事だけは良いな……。』


マヌルが呆れたようにため息を吐く。


その時だった。


バンッ


ドンドンドンッ


ガヤガヤ


奥から何か激しい物音と怒鳴り声が聞こえてくる。


『だから……樹に違いない!』


『……馬鹿な話…るか!』


『だが実際……。』


ハッキリとは聞こえないが何やら揉めているようだ。


「奥で何かあったんですか?」


『いや、君には関係のない事だ。』


マヌルはそう言うと首を横に振る。


『こんな辺境の村まで来た旅人に。』


『これ以上迷惑はかけられん。』


「迷惑だなんて思いませんよ。」


「もし力になれる事があるなら協力させてください!」


ここで村長に恩を売っておけば、今後この村で動きやすくなる。


そう思った俺は奥の部屋へ向かった。


『ちょっと君!待ちなさい!』


マヌルの制止も聞かず扉を開く。


『あれは災害の前触れじゃないのか!?』


『ワシは見たことがある!世界樹に違いない!』


『ですが、あんな速度で成長するなんて聞いた事がないわ!』


『だからこそ異常事態なんじゃないのか?』


俺は固まった。


いやいやいや。


まずいまずいまずいまずい。


恩を売るつもりで入ってきたのに、話題の中心が完全にアレだ。


心当たりしかない。


『ん?誰だね君は。』


ヒョウ柄の獣人がこちらを見る。


すると部屋中の視線が一斉に集まった。


まずい。


逃げたい。


だが今さら逃げたら余計怪しい。


あーもう!


こうなったらヤケだ!


乗り切るしかない!


「あのー、初めまして。」


「この辺りを旅していたらルピナスの森に迷い込んでしまいまして。」


まずは自己紹介。


そして簡単に事情を説明する。


「それで……その大きな木の近くも通って来たんですが。」


全員が息を呑む。


「少なくとも僕が見た限りでは危険な魔物とかはいませんでしたよ。」


「むしろ周囲の森も普通でした。」


『それは本当なのか?』


ヒョウ柄の獣人がそう言うと周りがざわつき出した。


『皆落ち着きなさい。』


マヌルが口を開く。


『この男の言っていることは本当だ』


『現に森が騒がしいとフィアットが様子を見に行き、この男を見つけて連れて帰ってきた。』


『少なくともルピナスの森を通ってきた事だけは間違いない。』


するとヒョウ柄の獣人が口を開いた。


『だがそんな旅人のことなど信用して宜しいので?』


『翔お兄ちゃんは嘘ついてないよ!』


『村に戻る途中助けてくれたし、ルピアも食べたもん!』


すると村人達がざわつき始めた。


『村長生かしておいて宜しいのですか!?』


『これこれ。物騒なことを言うでない。』


『私が釘を刺しておいたんだ。問題ないだろう。』


『村長がそう言うなら。』


『それで君はアレの事をどう思う?』


「皆さんの話を聞く限り、誰も世界樹を詳しく知らないですよね?」


「なら、かもしれないって段階で怯えたって仕方ないでしょう?」


「商売と同じでかもしれないって時はいつでも対応できる準備をするんです。」


「つまり今アレをどうこうじゃなく様子を見て異変があった時にすぐに動ける準備をする。」


「誰も正体を知らない物に怯えていても答えは出ません。」


「なら今やるべきは議論じゃない。」


「見張りを置く。」


「避難経路を決める。」


「何かあった時にすぐ動けるよう準備する。」


「それが一番現実的じゃないですか?」


『…確かにそうだな。』


『監視班を作るか。』


『何かあれば鐘を鳴らそう。』


『それで良いだろう。』


こうして会議は幕を閉じた。


『いやー、翔斗といったか。実に助かった!』


マヌルがそう言いながら僕の肩を叩く。


「いえいえ!助けになればと思っただけですよ!」


『いやー、助けられたついでだ!』


『今日は夜も遅いし行くあてもないだろう!』


『恩人を野宿させるほど我々は薄情ではない。』


『この後村人総出で歓迎会を開いてあげよう!』


『今日はここで泊まって行きなさい!』


よし。


タダで宿確保。


転生初日だが悪くないスタートだ。


いや。むしろ良い。


この世界の通貨すら知らない俺にとっては。


「ありがとうございます!」


『よし!フィアット!』


『みんなに歓迎会の準備を伝えてきてくれ!』


『今夜は宴だー!』


『やったー!それじゃー行ってくるー!』


フィアは勢いよく飛び出していった。


その姿を見ながら俺は小さく呟く。


「異世界って優しいなぁ。」


異世界初日。


世界樹を生やし。


獣人の村へ辿り着き。


気付けば歓迎会まで開かれる事になった。


――波乱万丈すぎへんか?


そしてこの時の俺はまだ知らない。


この歓迎会で――


死ぬほど酒を飲まされることを。


第六話を読んでいただきありがとうございます!


ようやくフィアの村に到着しました。


そしてルピアの実問題も無事(?)解決です。


次回は歓迎会!


ペルシャ村の住人達との交流や、翔斗の宿問題、そしてある変化が……?


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