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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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3/10

初めての魔法 〜なんか思ってたんと違う〜

『いやぁ……やっちゃったなぁ。』


白い空間で天使が頭を抱える。


『本当は翔斗さんに神の加護も付ける予定だったのに……』


『無限魔力を選んじゃったからなぁ。』


天使は困ったように頬を掻いた。


『あのスキルだけだと、ちょっとなぁ……』


『まぁ翔斗さんなら何とかなる?…』


『……いや、運の数値も低かった気が。』


しばらく考え込む。


そして――


『まぁいっか!』


ーーーーーー


意識が浮上する。


身体が重い。


まるで何日も寝続けた後のような感覚だった。


「……いてて。」


ゆっくり目を開ける。


そこに広がっていたのは見知らぬ景色だった。


空は白い。


木々は高く大きい。


鳥のような鳴き声が聞こえる。


嗅いだことのない甘い香りも漂ってくる。


そして――


見たこともない植物がうねうねと動いていた。


「……は?」


数秒固まる。


もう一度見る。


やっぱり動いている。


「なんやここ。気持ち悪っ。」


辺りを見回す。


森だ。


どこを見ても森。


木。


草。


森。


以上。


「てかホンマに赤ちゃんちゃうやん!」


少し肩を落とす。


「あー、おっぱいに満ち溢れる俺のおっぱいライフが……」


鳥の鳴き声だけが響く。


「……」


「って一人で言うてても誰も拾ってくれへんねん。」


そうだった。


あの騒がしい天使はもういない。


俺は本当に一人らしい。


「ほんで着いたはええんやけど、どないしたらええんや?」


何の説明も無いまま放り出された俺は、ステータスの確認方法すら知らない。


「ステータスってどないして見るねん。」


「魔法は?」


「そもそも使えんのか?」


「ほんで何で転生先が何もないジャングルやねん!」


兎にも角にもステータスを確認したい。


「ステータス!」


何も起きない。


「ウィンドウ!」


何も起きない。


「オープン!」


何も起きない。


「メニュー!」


何も起きない。


「ヘルプ!」


何も起きない。


「設定!」


何も起きない。


「どないすんねんもー!」


思わず両手を振り下ろした。


その瞬間――


ヴゥォン


目の前に半透明の画面が現れる。


「ん!?」


一瞬喜ぶ。


そして気付く。


「……」


「もしかして今の手の動きか?」


俺は恐る恐るもう一度両手を振る。


ヴゥォン


画面が消えた。


「マジか。」


少し考える。


「……ちなみに片手やと?」


右手を軽く振る。


ヴゥォン


再び画面が現れた。


「流石に片手でええよな。」


毎回両手をブンブン振り回していたら怪しすぎる。


森の中だからまだ良い。


街中でやったら完全に変な奴だ。


想像したら少し笑えてきた。


「さて、ステータスはと……ん?」


俺は画面を見て固まった。


【只野 翔斗】14歳


「若返っとる!?」


思わず声が出る。


確かに子供として転生する事も出来るとは言っていた。


だが十四歳は予想外だ。


「あの天使いけずやなぁ。」


「14歳の体にしてくれるなら赤ちゃんとして産まれる所からええやん。」


絶対わざとや。


あの天使ならやりかねん。


俺はそう確信した。


ーーーーーー


『くしゅん。』


珍しくクシャミが出た。


『誰か噂してるのかな?』


天使は首を傾げる。


そして指を鳴らした。


パチン。


目の前に映像が映し出される。


そこには森の中で文句を言っている翔斗の姿があった。


『あー。』


『やっぱり翔斗さんでしたか。』


映像を見ながらクスッと笑う。


『えっちな事ばっかり考えてる翔斗さんには良い薬ですね。』


『ふふっ。』


ーーーーーー


そして俺は慌てて視線を下へ移す。


Level:31

種族:人間

職業:元酒場マスター


━━━━━━━━━━━━━━━


体力:35

魔力:Error


「Error!?……は?」


一瞬理解できなかった。


もう一度見る。


体力:35

魔力:Error


やっぱり変わらない。


「Error!?」


「ちょい待て。エラーってなんやねん!」


無限魔力やから測定不能なんか?


∞って記号が無いからErrorになってるだけとか?


「いや、そんなわけ……」


首を傾げる。


だが他に思い当たる理由もない。


「バグってんのか?」


「まさか壊れてるんか?」


ふと転生前の事を思い出す。


――本当に良いんですか?


――その能力は――


天使が最後に言いかけた言葉。


そして。


『あっ、やっちゃった』


『まぁいっか!』


「天使のやつ……」


嫌な予感しかしなかった。


「これハズレスキルちゃうやろな。」


「なんか記憶書庫も欠陥品やったし、ミスったか?」


念のためその下の全ステータスも確認する。


━━━━━━━━━━━━━━━

筋力:42

耐久:57

敏捷:24

器用:81

知力:73

精神:46

魅力:82

運:33


━━━━━━━━━━━━━━━


スキル

接客 Lv.8

交渉 Lv.MAX

話術 Lv.9

経営 Lv.7

危機察知 Lv.9

人心掌握 Lv.MAX

酒知識 Lv.8

計算 Lv.8


━━━━━━━━━━━━━━━


ユニークスキル


【慧眼】


相手の些細な表情や仕草から

感情・嘘・本質を見抜く。


観察力が高いほど精度上昇。


【無限魔力】


魔力保有量の上限がなくなる。

更に魔力酔い、魔力欠乏症にならない。


━━━━━━━━━━━━━━━


能力の説明欄にはこれ以上のことは書いてない。


「んー。とりあえず魔法使ってみるか。」


俺は右手を前へ突き出した。


異世界と言えば魔法だ。


魔法と言えば炎。


つまり――


「ファイアー!」


何も起きない。


「……」


「ファイアボルト!」


何も起きない。


「ファイアランス!」


ダメだ。


「ファイアストーム!」


小鳥の囀りが聞こえる。


「いや、どれかは出ろや!」


思わずツッコむ。


バカにするように鳥の鳴き声が聞こえてきた。


「なんや。バカにしとんのか。」


何も知らされないまま放り出されたのだ。


イライラするなという方が無理だった。


「すぅーーー。ふぅーーー。」


深呼吸をして気持ちを整えて考え方を変えてみた。


「詠唱が要るんか?」


少し考える。


そしてそれっぽく右手を掲げた。


「我が名は只野翔斗――」


「我が深淵に潜む地獄の業火よ――」


「って、いや知らん知らん!」


自分で言ってて恥ずかしくなった。


「いや、もうええて。」


「ステータスの次は魔法の出し方かい。」


思わず頭を抱える。


ふと現世の記憶を辿る。


アニメ。


ゲーム。


漫画。


異世界ものだけでも山ほど見てきた。


「魔法って詠唱だけちゃうよな……」


炎を思い浮かべる。


火。


焚き火。


ライター。


ガスコンロ。


とにかく燃えている物を頭の中に並べる。


「魔法ってイメージじゃ無いのか?」


すると――


右手の先に赤い光が集まり始める。


「……え?」


次の瞬間。


ドォォォォォン!!


轟音と共に視界が真っ白に染まった。


凄まじい熱風が吹き荒れる。


「えぇぇぇぇぇ!?」


「うわぁぁぁぁ!?」


俺は思い切り後ろへ吹き飛ばされた。


ーーーーーー


「アイタタタッ……」


頭を抑えながらゆっくり起き上がる。


そして目の前を見た。


「………」


数秒固まる。


「ってなんやこれ。あたり一体更地なってるやん。」


「木はどこ吹っ飛んでん。」


辺りを見回す。


さっきまで森だった。


間違いなく森だった。


だが今は違う。


木がない。


一本もない。


目の前には見渡す限りの更地が広がっていた。


「いやいやいや。」


「火イメージしただけやぞ?」


「隕石落とした覚えないんやけど?」


「ちょい待て。ちょい待て。魔法ってこんな威力なんか!?」


しばらく更地になった森を見つめる。


そして一つの結論に辿り着いた。


「異世界怖っ。」


思わず本音が漏れる。


「こんなん魔法最強やん。」


「剣士とかコレ食らったら死ぬやろ。」


そこまで言って気付く。


「……待てよ?」


俺は自分の身体を見る。


さっき俺は爆発に巻き込まれた。


吹き飛ばされた。


だが――


生きている。


「待て待て待て……」


「ここは異世界や。」


「俺も死んでへんし。」


「現世の常識で考えたらアカンわ。」


勝手に納得する。


そうだ。


ここは剣と魔法の世界。


魔法がこれくらい強いのも普通なのだろう。


にしても危険すぎる。


「さすがに焚き火も出来へんし。」


「こんなん街中で使ったら終わりやろ。」


俺は更地になった森を見渡した。


「属性魔法は封印やな。」


少なくとも使い方が分かるまでは。


逆に回復魔法とかはどうなんやろ?


治すだけなら安全そうやし。


「ヒールとかか?」


俺は何となく右手を自分へ向けた。


回復。


病院。


治療。


塗り薬。


飲み薬。


手術。


色々とイメージしてみる。


そして――


「ヒール!」


ボゥフゥゥゥゥッ!!


突風が吹き荒れた。


「………!?」


思わず目を閉じる。


草が揺れる。


土が舞う。


木々が軋む音が辺りに響く。


そして次の瞬間。


辺りが急に薄暗くなった。


「なんか急に暗なったなぁ。」


ミシミシミシッ――


「……ん?」


どこからか妙な音が聞こえる。


木が軋むような音だ。


嫌な予感がした。


恐る恐る後ろを振り返る。


「………」


森だった。


いや、森ではある。


だが何かがおかしい。


木がデカい。


明らかにデカい。


さっきまで俺の腰ほどしかなかった草が、いつの間にか頭上まで伸びている。


木の幹も一回りどころではない。


明らかに密度が濃い。


「いや、治りすぎやろ。」


「てか、治った言うより成長してへんか!?」


「回復魔法やんな?」


「俺間違えて農作業してた?」


首を傾げる。


まぁ細かい事はええか。


結果として森は元気になった。


それだけや。


「にしても魔法って便利やな。」


「異世界すごいわ。」


俺は感心しながら、目の前の更地へ視線を向ける。


「せっかくやし。」


「こっちも治しとくか。」


そして何の疑いもなく右手を突き出した。


「ヒール。」


ボォォォォォォォッ!!


地面が揺れ始めた。


「えっ!?ちょっ!?待って!?ストップストップ!」


次の瞬間。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォッ!!


更地だった大地を突き破り、巨大な幹が姿を現す。


木だ。


木なのだが。


デカすぎる。


「えっ!?」


幹は止まらない。


空へ向かって伸び続ける。


伸びる。


まだ伸びる。


まだまだ伸びる。


「ちょっ!?」


「待って待って待って!?」


気付けば空の彼方に突き抜けていた。


目の前には空を貫く一本の巨木。


まるで神話に出てくる世界樹みたいな代物が堂々とそびえ立っていた。


「………」


数秒固まる。


「治し方下手すぎひん?」


思わず巨木を睨む。


すると頭の奥がズキリと痛んだ。


「痛っ……?」


何かが一瞬だけ頭の中へ流れ込んできた気がした。


文字のような。


情報のような。


だが読み取る前に消えてしまった。


「……なんや今の。」

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