魔力:Error
【只野 翔斗】
Level:31
「Level:31って歳やん。」
思わずツッコんでしまった。
『そのまま反映されてますからね。ふふっ。』
「そんなもんなんか……」
視線を下へ移す。
体力。
筋力。
敏捷。
どれもまぁ普通だ。
いや、むしろ低い?
「弱くない?」
『一般成人男性としては平均ですね。』
『……まぁ、三十一歳男性としては少し情けない数値ですが。』
天使がニヤッと笑う。
「なに笑ってんねん!」
『ごめんなさい。つい…』
「つい…やあれへんねん!最低か!」
笑いが止まらない天使。
さらに下を見る。
魔力。
「魔力!?魔力ってなんや?地球にもそんなんホンマにあんのか!?」
『ありますよ!』
『ただ地球はマナが薄いので使えないだけです。』
「なるほど。」
「ガソリンはあるけどエンジンが無いみたいな感じか。」
『そんな感じです!』
「いや、例えたけどどんな感じやねん!それ!」
「まぁええわ!んで、この魔力117ってのはどーなんや?」
『可もなく不可もなくと言う所ですね。』
『むしろLevel:31にしてはこの世界では低い方かなと。』
「結局低いんかーい!魔力だけ3桁やし、マシなんかな思ったやろ!」
『基本ステータスは次の世界だと100前後が平均ですね。』
「ほな標準ちゃうんか!?」
『いえ。基本ステータスに限りです!』
『魔力や筋力や敏捷なんかは、職業によっては300くらいが最低条件ですね!』
「ほなめちゃめちゃ低いやんか!え!?なに?俺は子供と同じゆーことか!?」
『まぁそーなりますねぇ。』
天使が笑う。
いや、笑い事やないで。
ホンマに転生してうまく行くんかいな。
そしてさらに下を見る。
そこには見覚えのある文字が並んでいた。
交渉 Lv.MAX
人心掌握 Lv.MAX
「……ん?」
思わず二度見する。
『どうかしましたか?』
「あっ、いや……」
借金取り。
酔っ払い客。
問題児のキャスト。
面倒事なら山ほど相手してきた。
常連さんには救われたし、借金取りに来る奴とも関係が悪い訳では無かった。
だがまさかスキルになるとは思わない。
さらに視線を下へ移す。
そこに表示されていたのは――
ユニークスキル
【慧眼】
「なにこれ?」
『貴方が人生で最も磨き上げた才能ですよ。』
『相手を見る能力です。』
俺は思わず黙り込んだ。
確かに昔から人を見るのは得意だった。
嘘をついている人間。
焦っている人間。
裏で何か企んでいる人間。
そういうのは何となく分かった。
『どうです?』
『悪くない能力でしょう?』
「んー。いや、まぁ……」
俺はステータスを見つめる。
力もない。
魔力もない。
派手さがカケラもない。
だが――
「まぁ……俺っぽい能力ではあるな。」
「子供並みのステータスは気になるけど。」
『そーですね!地球だと平均ですね!』
「地球でもやっぱ平均程度なんかい!」
『でも安心してください。』
天使がニヤリと笑う。
『まだ能力を選んでませんから。』
「……あ。」
そうだった。
俺にはまだ――
一つだけ好きな能力を選ぶ権利が残されている。
「ちなみに選べる能力ってどんなんがあるん?」
『例えば【剣聖】』
『剣技の習得速度が飛躍的に向上します。剣士を目指される方には最高峰の能力です。』
「いや、このステータスで剣聖とか無理やろ!」
『無理じゃ無いですよ!筋力とかもアップしやすくなりますから!』
「異世界行ってまで筋トレはしたないわ!」
『あら、だらし無いですねー。』
「なんやねん!別に標準体型やしええやろ!」
『まぁ別に私は筋肉ムキムキより普通の方が良いとは思いますけど…』
「ほなええやないか!」
天使が咳払いをする。
『でしたら他には【未来視】』
『数秒先の未来を見ることができます。戦闘において非常に強力です。』
「まぁチート級の能力っぽいけど…」
『ではコレにしますか?』
「いやいや、流石に早計すぎるわ!」
「そもそも敏捷も子供並みやのに未来見えてもやろ!」
『いえいえ!走り込みすれば良いだけです!』
「俺は異世界転生して陸上選手にでもなるんか?アホか!」
『あっ、また天使に向かってアホだなんて!ひどい!』
「もう泣き真似はええから他教えて!」
『何なんですか?貴方は。天使に向かってそんな態度ばっかり。』
『もー嫌んなっちゃうわ。』
天使がそっぽを向いてしまった。
他も知りたいから早よしてくれよ。
『ふーんだ。そんな人には教えませーん!』
すっかりヘソを曲げてしまった。
機嫌とらんと先進まんし、しゃぁないか。
「いや、天使様が良い反応してくれるから、俺もついツッコミに熱はいってもて。」
「ホンマにすみません。転生出来るのワクワクするし感謝してるんですよ!」
こちらに向き直る天使。
『それ、ほんとぉですかぁ?』
「マジマジ!ホンマに。」
「だって見たことないくらい可愛いし!綺麗やし!」
「見た目年下の可愛い子がこんな良い反応してくれたら、そりゃからかいたくなっちゃうよ!」
天使が機嫌を直したようにニコニコし始めた。
……いや。
あれはニコニコじゃない。
完全にニヤニヤだ。
『もう。そんなに言うなら教えてあげますね。』
ずっとニヤニヤしている。
「お願いします!」
『オホン!それでは一気に見せるので気になった能力を私に聞いてください!』
天使が指を鳴らす。
パチン。
天使が指を鳴らした瞬間、目の前に半透明の画面が現れる。
そこには大量の文字がずらりと並んでいた。
【獣王】【経験値共有】【契約王】【鍛冶師】
【精霊の友】【早起き】【幸運】【無限魔力】
【収納庫】【記憶書庫】【美声】【鑑定眼】
ん!?二度見する。
「ちょい待て。早起きってなんやねん!」
『朝に強くなります。』
「は!?それだけ?」
『まぁ…はい。それだけですね。』
「そんなん能力って言うてええんか!?」
『まぁこのスキルを得ると体力や精神が比較的高くなりやすくなりますからね!』
「なるほど…」
スキルとしては何とも言えないが、
ステータスが変わるならスキルと言っても良いのか。
更にもう一つ気になるのがあった。
【美声】
「ちなみにコレはどんなスキルや?」
『歌がお上手になります。』
「やろーな!それだけか?」
『はい!』
「何でニコニコしてんねん!」
『まぁ、早起きと同じく器用と魅力が上がります!』
『後は魔力も少しだけ上がりやすくなりますよ!』
魔力も上がるなら、早起きよりかはマシか。
いや…マシなだけやねんけど。
ほんでこの中であと一つ気になるのがー
『何が気になりますか?』
「幸運や」
『いや、違うでしょ!』
「ちゃう事ないよ!」
「チートみたいな能力の中ハズレみたいな名前の能力なんなんや。」
『まぁ、確かにある意味で気になりますか。』
「ほんでどんな能力なん?」
『少しだけ運が良くなります。……少しだけです。』
「少しってなんや!今までステータス上がるからってなんか理解出来たけど。」
『まぁまぁ。選ぶ訳じゃないですよね?』
「選ぶかぁ!こんな能力!」
『だったら良いじゃないですか!』
「まぁそれ言われたらそーやけど」
「ほな一覧もそこそこの能力だけに絞ってくれよ!」
『カラオケ置いてたお店経営してたら美声とか憧れるかなーなんて。』
「いや…異世界でまたガルバ経営はせんやろ!」
『でも街で歌ってたら目立ちますよ?』
「ちょい待て!いつ誰が目立ちたい言うた!」
『違うんですか?』
「ちゃうちゃう!むしろ目立ちたくないわ!」
『そーなんですか。それは残念。』
えっ、なにが!?何が残念!?
俺の歌聴きたいとかある?
意味わからんて。この天使。
そして改めて能力に目を通す。
どれも気になる。
【経験値共有】
【契約王】
【獣王】
【精霊の友】
【鑑定眼】
どれも捨てがたい。
だが一際異彩を放っていた能力がある。
【無限魔力】【記憶書庫】
どちらも一目でチート級だとわかる。
【記憶書庫】
記憶を収納し、検索・閲覧できる能力。
パッと聞くと大した事は無さそうだがーー
一度見た物を忘れない上に
相手の記憶まで閲覧できるらしい。
流石にとんでもチート能力だが…
『記憶書庫が気になりますか?』
「流石にチート過ぎないか?」
『まぁ…実はその能力使いこなせる人いないと思うんですよ。』
「ん!?能力に使いこなすとかあんの!?」
「そう言うの先言うてくれんと!」
『実は過去にも記憶書庫を取得した方がいて…』
『皆さん壊れちゃいました…』
『テヘッ♡』
「テヘッ♡じゃねーよ!てか怖すぎやろ!」
『まぁそもそも脳への負荷が大きいです。』
『あと精神力が低いとダメみたいで…』
『皆さん壊れて廃人になっちゃいました…』
「何やその能力。欠陥品やんか。」
『まぁ出来る事が書いてあるだけなので。他の能力も似たような物ですよ。』
「ほな美声とかもか?」
『いえ!美声は歌が上手くなるだけです!』
「なんやそれ!結局それだけかい!」
やっぱり剣と魔法の世界やしこれ一択か。
正直、俺は剣なんか振った事ない。
鍛冶も出来へん。
精霊なんか会った事もない。
でも――
魔法だけは違う。
何となくやけど。
これがあれば何でも出来る気がした。
【無限魔力】
説明を読み終えた瞬間。
俺の心は決まっていた。
「これやな。」
『本当に良いんですか?』
天使が珍しく真面目な顔になる。
「何や。なんかあるんか!?」
『その能力は――』
天使が言い淀む。
『いえ。何でもありません。』
「何やねん。」
『では決定ですね。』
白い光が溢れ出す。
「いや、ちょい待て!何でそこ何も言わんねん!」
『只野翔斗さん。』
『新しい人生を楽しんできてください。』
白い光が俺を包み込む。
身体が浮き上がる。
意識が遠のいていく。
「ちょっ……待っ……」
最後に見えたのは、
楽しそうに手を振る天使の姿だった。
『あっ、やっちゃった』
『まぁいっか!』
そして俺は――
新たな人生へと旅立った。
ーーー
【只野 翔斗】
Level:31
魔力:117→Error
「Error?」
ーーー
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回からいよいよ異世界編です。
どうやら天使が何かやらかしたようですが……。
引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!




