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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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17/18

捨てるには価値があり過ぎる

ガァァァァァァッ!!


森を揺らす咆哮。


突進してくるグリズリーホーン。


逃げ場は――ない。


そう思った次の瞬間。


『退けぇぇぇぇぇ!!』


轟音。


横から飛び出した巨大な影がグリズリーホーンへ突っ込んだ。


ズドォォォン!!


鈍い衝突音が森中に響く。


グリズリーホーンの巨体が数メートル吹き飛んだ。


「ほえぇぇぇぇぇ!?」


思わず変な声が出る。


何や今の。


人が吹き飛ばされたんちゃう。


魔獣が吹き飛ばされたんやぞ?


それもコイツ5mくらいあるやろ。


俺は恐る恐る視線を向けた。


そこには一人の狼人族が立っていた。


2メートルを超える巨体。


白銀の毛並み。


全身に刻まれた無数の傷跡。


そして。


圧倒的な存在感。


『お前ら何をしている!』


『戦闘中だ!ぼさっとするな!』


周囲の狼人族達が一斉に頭を下げる。


『申し訳ありません!』


『村長!』


村長。


その言葉に俺は目を見開いた。


こいつが。


狼人族の村長か。


ピーピピッ。


スキル発動【慧眼】


【ガロウ】

年齢:42

Level:459

種族:狼人族

職業:村長


「42歳でレベル459!?」


思わず口から漏れた。


いや。


どんな成長速度やねん。


鳥人族の村長フォックスが、62歳でレベル376やったぞ?


狼人族怖っ。


てかよくよく考えたら俺カスやん。


それよりもグリズリーホーンの倍近くあるんか。


そら吹き飛ばすわ。


『おい!兄ちゃん!』


狼人族の男が叫ぶ。


『何ぼさっとしてんだ!』


『来るぞ!』


「え?」


左を振り返ると。


グリズリーホーンと目が合った。


ガァァァァァァッ!!


「うわっ!?」


巨体がこちらへ向きを変える。


狼人族達の顔色が変わった。


『マズい!』


『囲め!!』


即座に動く。


まるで長年訓練された兵士のような連携だった。


強っ……。


流石は戦闘民族。


レベルだけちゃうわ。


動きそのものが洗練されとる。


だが――


グリズリーホーンも化け物だった。


狼人族の斬撃を受けても止まらない。


槍が刺さっても構わず暴れる。


その巨体だけで十分脅威だ。


『ぐはっ!』


一人の狼人族が吹き飛ばされた。


『一度引け!』


『左右に散れ!』


仲間が叫ぶ。


だが間に合わない。


グリズリーホーンの爪が振り下ろされる。


その瞬間。


「ヒール。」


淡い光が狼人族を包んだ。


狼人族達が目を見開く。


傷がみるみる塞がっていく。


『えっ!?』


『なっ…治ったぞ!』


『誰がやった?』


「俺です。」


翔斗が手を挙げる。


『誰だかわからないが助かった!』


『だがここは危険だ!』


『早くどこかへ逃げなさい!』


「いえ!サポートだけですが手伝います!」


それから十分ほどの激闘の末、グリズリーホーンの討伐に成功した。


『いや、兄ちゃん!随分助かった!』


『この後時間あるか?』


『出来れば礼がしたい!』


「はい!時間は大丈夫です!」


そうして狼人族の村、フウガ村の作戦室にやってきた。


『さっきは助かった!改めて礼を言う!』


『ありがとう!』


「いえいえ!」


『それでお前さんはこんな辺境に何しに来たんだ?』


『普段人が足を踏み入れるのを躊躇う地域だぞ?』


「あっ、実は村長にお話があって…」


『俺に話か?何の話だ?』


「実は交易をしたくてですねぇ。」


『コウエキ?何だそれは?』


「つまり毛皮類を仕入れたいんです。」


『毛皮?』


『まさか狼人族を狩るつもりじゃあるまいな?』


空気が凍りつく。


「ちゃいます!ちゃいます!」


「さっきもサポートに専念してたわけですけど戦闘がからっきしダメで。」


「獣の毛皮とかの魔獣の毛皮なんかが欲しいんですけど狩が苦手で…」


「戦闘民族の狼人族の方なら強いし協力してもらえないかな?と思いまして。」


『ガハハハ!』


『そう言うことか!誤解してすまない!』


何とか誤解が解けたようだ。


やけどどんな勘違いやねん。


『毛皮なら腐るほどあるから礼としてやろう!』


「本当ですか!?」


『ただ礼ついでに一つ頼まれ事を引き上げてくれんか?』


「何でしょう?」


『実は最近魔獣が多すぎてなぁ。』


『まぁ獲物には困らんのだが必要以上に多すぎる。』


『おかげで処理に困っとってなぁ。』


『毛皮をやるついでに肉や骨も何とかしてくれんか?』


「なるほど。」


『お前さん魔法が得意そうだし何とか出来るだろ!』


余った魔獣の残骸をどうにかしろってか。


この村長も中々難しいことを要求するなぁ。


「少し時間もらっていいですか?」


「後、直接その残骸を見せてください!」


『おー!構わんよ!』


『村の真ん中にデカい倉庫があるから見てくれ!』


『最近は入りきらず広場にも溢れとるわ!ガハハ!』


こうして村の中央へ向かった。


「いやー、めちゃくちゃあるなー。」


そこには魔獣の死骸が山積みになっていた。


『これを消し去ってくれたら助かる!』


「消しちゃうんですか!?」


『倉庫の中は日々の食料だから良いんだが溢れてるもんはすぐ腐るからなぁー!』


「なるほど。」


山積みの死骸。


魔獣の肉は食料として食べている。


だが多すぎて保存ができない。


倉庫の中にも解体された生肉や残骸が、仕分けされて置いてあるだけだ。


どうしたもんかなー。


「魔獣が出たらすぐ倒しちゃうんですか?」


『まぁ暴れ回る個体はすぐに狩っているな!』


「なるほどー。」


『まぁ宜しく頼むわ!』


『俺はこの後も村の周りを見て回らにゃならんのでな!』


「わかりました!」


それにしても厄介ごとを押し付けられたなー。


まぁ毛皮がこうもあっさり手に入るや。


何とかしたるしかないかー。


「それにしても消してしまうのは簡単やとして、勿体無い気もするなー。」


いや違う。


商売人から見れば、これ全部金やねんなー。


肉も。


骨も。


毛皮も。


捨てるには勿体なさ過ぎる。


だが俺は動物を捌いた事は無い。


「あのー。」


『どうしました?』


「この山積みの死骸解体してくれませんか?」


俺は近くにいた狼人族に解体を頼んだ。


『良いけど倉庫に入んないんだよ?』


「それなら逆に倉庫の肉使っちゃって良いですか?」


「魔獣の解体した事なくて…」


『それならお安い御用だ!』


こうして広場の死骸を解体してもらうことにした。


「とりあえず試しに魔法で干し肉にでもしてみるかー。」


俺は倉庫の肉を一切れ出して試してみる。


「乾燥!」


すると肉から水分が抜け、硬く締まった乾燥した肉へと変わる。


一口食べてみる。


「おおー!ジャーキーやん。」


「美味い美味い!」


「これなら保存効くし消さんでええやん!」


そして俺は倉庫の肉を半分ほど出して干し肉にした。


「後半分くらいかぁ。」


「干し肉ばっかりやと飽きるよなー。」


「狼人族は、焼くか生のどっちかで食うらしいし。」


しばらく考えた俺は現世の事を思い出した。


「そういやコンフィって保存できたんちゃうっけ?」


現世の雑学好きがここで活きるとは。


「確か油で煮て冷ますのがコンフィやったよな?」


俺は狼人族から小鍋を一つ借りて試してみた。


「まずは使えなさそうな肉から脂を抽出しよか。」


傷みかけている肉から脂の部分だけを抽出する。


「分離!」


油を作るのはうまくいった。


「これで煮て冷ますと。」


「コンフィ!」


すると白く濁った塊が出来た。


「これ完成か?」


試しにコンロを借りて、そのまま火にかけてみる。


「めちゃくちゃ油のええ匂いするやん!」


脂が溶け中の肉が姿を現した。


食べてみる。


「うんまー!なんやこれ!」


「カリッとジューシーで肉汁と言うか脂の暴力や!」


どうやら作った事のないコンフィにも成功したらしい。


そして狼人族から寸胴をいくつか借り、残り半分をコンフィにする。


「これで倉庫ある程度空いたけど。」


「まだ骨と毛皮が大量やなー。」


「毛皮は全部もらうとして……」


「ちなみに骨はどうしてるんですか?」


近くの狼人族に尋ねてみる。


『武器や道具に加工してるぞ。』


『だが使い切れる訳じゃない。』


「やっぱ余るんか。」


少し考える。


「よしここまで来たら骨スープでも作るか!」


そして大量の骨を魔法で砕いてして煮込む。


「粉砕!」


「溶解!」


こうして魔獣骨スープが出来た。


香りは独特だが悪くない。


「後は持ってる調味料で味整えてと。」


「骨スープの完成や!」


「ここに肉入れて煮込んだりしてもええやろ!」


こうしていろんな料理をしていると気付けば狼人族が集まってきていた。


解体作業をしていた者。


見張りを終えた者。


訓練帰りの者。


皆、鼻をひくつかせながらこちらを見ている。


『何してるん?』


『ええ匂いさせとんのー!』


『肉を焼いてるだけじゃないぞ。』


『腹減った……。』


『さっきから気になって仕方ねぇ。』


どうやら匂いにつられて集まってきたらしい。


まぁ丁度いいか。


俺は完成した料理を並べながら声を上げた。


「良かったら食べてみます?」


その瞬間。


狼人族達の耳がピクリと動いた。


『本当に食っていいのか?』


『毒とか入ってねぇよな?』


『入ってたら兄ちゃんが最初に死んでるだろ。』


『確かに。』


狼人族達が笑う。


すると人混みを掻き分けながらガロウが現れた。


『何の騒ぎだ?』


『村長!』


『兄ちゃんが変な肉作ってる!』


「変な肉言うな。」


『なんだこれは!?』


『俺はこの辺の死骸を消して欲しいと依頼したはずだが。』


あたりの死骸は随分と少なくなっていた。


「あっ、倉庫にある程度入れましたよ!」


「後倉庫の外の壁沿いにも寸胴並べてるんですけどあれも肉です!」


『なに!?』


ガロウが倉庫を確認する。


縮んだ肉が吊るされてある。


まだ肉を入れるスペースもある。


骨も少し減っていた。


『これは一体何をしたんだ?』


「まぁここに並んでる料理に変えましたよ!」


「とりあえず食べてみてください!」


言われるがままガロウは干し肉を渡される。


ガヌチッ。


もぐもぐもぐ。


『美味い!なんだこれは!?』


『噛めば噛むほど肉の旨味が出てくる!』


「これが干し肉ってやつです!」


「保存にも便利なんですよ!」


『なるほど!』


『これはなんだ?』


鍋を指差し聞いてきた。


「これはコンフィって言うんですけどこのまま火にかけると。」


実演して見せてみた。


『白いのが黄色い液体になってきたぞ?』


「これが液体になったら中から肉が出てきます!」


『おおー!見えてきた!』


そして食べさせてみる。


『うぉー!美味い!美味すぎる!』


「これも白い状態のままだと保存が効くので便利ですよ!」


最後にスープも出す。


『この液体はなんだ?』


「これは骨からとった出汁のスープです!」


『骨?ダシ?なんじゃそりゃ?』


恐る恐るすする。


『なんだこれは!美味い汁だぞ!』


『こんなん食うた事ないわ!』


「お口にあって良かった!」


『お前さん凄いなぁ!』


『俺の依頼をこんな形で解決するとは!』


『やっぱりお前さんに頼んで正解だった!』


「良かったら全部やり方教えましょうか?」


『是非聞きたい!』


「では会議室にて商談をお願いします。」


『うむ。わかった!』


『このスープ持っていってええか?』


「それは好きにしてください。」


「皆さんは食べて片付けだけお願いします!」


こうして会議室でガロウと直接商談の場を設けることが出来た。


元々は毛皮だけの取引のつもりだった。


だが気付けば。


俺の手元には料理の知識があり。


狼人族の手元には、俺が欲しいものがある。


さて――商談の時間だ。

第17話を読んでいただきありがとうございます!


今回は狼人族編の導入と、


翔斗らしい「商人としての問題解決」を描いてみました。


戦うよりも、


価値を見つけて利益に変える。


そんな主人公を書いていけたらと思っています。


次回はガロウとの商談回!


狼人族との本格的な取引が始まります。


面白いと思っていただけましたら、


ブックマークや評価をいただけると励みになります!


それではまた次回!

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