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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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16/18

静かな狼人族の村

三日後に取引を控えた俺は直接世界樹へ向かった。


予想通り、周囲には大量の薬草が自生していた。


しかもその品質は、ウラン村で見た物より遥かに高い。


俺は採取した薬草を持ってウラン村へ向かう。


『これは……見事な薬草だな。』


村長フォックスが感心したように呟く。


こうして俺は薬草を引き渡し、約束通り調味料を受け取った。


初めての交易は無事成功である。


『交渉成立したか!』


『なら坊主も立派な商人だな!』


「ホンマにありがとう!」


報告を兼ねてウィンガルに酒を奢る。


『次はどこへ行くんだ?』


「狼人族の村いくわ!」


『ほう。』


『なら気ぃ付けろよ。』


『あそこの連中は少々気性が荒いからな。』


「それは聞いたことあるで!」


「まぁ商談やしな。」


「殴り合いにはならんやろ。」


酒場を後にした俺は、村の入口付近で待機していた護衛二人と合流した。


『どうでしたか?』


「終わった終わった。」


「無事に商談成立やわ!」


俺がそう言うと二人は目を丸くした。


『本当ですか!?』


『あの狡猾で警戒心の強い鳥人族相手に?』


「まぁ色々あったけどな。」


苦笑しながら答える。


そして荷物を背負い直した。


「ほな次の商談に向かいたいんやけど。」


『次ですか!?』


「狼人族の村や!」


二人は顔を見合わせた。


『あんな危険な連中と商談なんて……』


『危険ですしやめといた方が良いですよ。』


「そういうわけにもいかんやろ。」


「だって行商人こんからしばらく衣類とかもどーにもならんやろ?」


『まぁ確かにそれはそうですが。』


「これから寒くなったら衣類は必要なるやろし!」


「なんせ俺が住む村やから問題無くしたいしな!」


『それは心強いですが本当に気をつけてください。』


「それは前にも聞いたから知っとる!」


「戦闘集団なんやもんな!」


「けど狼人族も完全自給自足は無理やろ!」


「やから商談でどうこうはならんと思う!」


『それならペルシャ村経由で行きますか?』


「ん?」


『ペルシャ村経由なら今から約5時間くらいで狼人村につきます。』


なるほど。


だが俺は首を傾げる。


「ちなみに経由せんかったら?」


『森を真っ直ぐ抜ければ約4時間ってところですかね?』


『ただ狼人族の縄張りのエリアが近いんで、あんまりオススメはしません。』


一時間違うなら十分大きい。


俺は即決した。


「ほな直接行こかな!」


『即決ですか!?』


「商売は時間も大事や。」


「一時間短縮出来るなら早いにこした事ない!」


二人は苦笑していた。


しばらく歩く。


流石に遠い。


世界樹付近も通る。


そして二時間ほど進んだところ。


近くの岩場に腰を下ろした。


「ちょっと休憩や。」


護衛の二人も同じように腰を下ろす。


『そういえば調味料って実際どうなったんですか?』


一人が尋ねてきた。


俺はニヤリと笑う。


「定期的に仕入れられるようになった。」


『えっ!?』


『じゃぁ行商人に頼らなくても良くなるんですか?』


「そういうことになるな!」


「俺が今後ペルシャ村で安定して調味料売れるようなると思う。」


二人は目を見開いた。


そして顔を見合わせる。


『ようやく安心出来ます。』


『ホンマに良かったです。』


その反応に少し驚く。


「そこまで安心するん?」


『当たり前ですよ。』


護衛の男が苦笑する。


『月一になった時から村人たちは不安でしたからね。』


「ちなみに販売価格どーしよかな思ってんねんけど。」


「ウラン村側も無料で入手出来ると思わせてるけど、俺も実質無料で調味料入手したんよな。」


『無料!?』


護衛2人が大きな声で驚く。


「まぁその反応はわかるわ!」


『知ってますか?塩も香辛料も王都からだと随分高いですよ?』


「ウラン村も輸入やから高い言うてたわ。」


「やし販売価格を調味料ひとつ銅貨3枚とかどうやろ?」


『そんな安くて良いんですか!?』


『家計的にかなり助かります。』


もう一人も頷く。


『ここまでしてもらって翔斗様には助けられてばかりです。』


『行商人からだと高価な調味料が今や来ないんですから。』


『みんな高額だから最低限しか買ってないんですよ。』


そう言われてみればそうや。


俺は商売のチャンスばっか考えてたけど、村人からすれば生活そのものの問題やねんから。


「そっか。」


「ほな頑張った甲斐あったわな。」


自然と笑みが零れた。


休憩を終え再び歩き出す。


さらに一時間ほど進むと景色が変わり始めた。


木々の幹に鋭い傷が増えていく。


一本や二本ではない。


あちこちに深い爪痕が刻まれていた。


「うわっ……。」


思わず声が漏れる。


「これ全部狼人族?」


『恐らくそうだと思います。』


護衛が平然と答える。


平然と答えるな。


俺はかなりビビってんねん。


一撃で木を抉るような連中と商談するんか。


戦闘になったら終わりやな。


「やっぱ帰ろかな……。」


『今さらですか?』


『もう遅いですよ。』


「そうやな……。」


さらに進む。


すると先頭を歩いていた護衛が足を止めた。


『……何かおかしいな。』


「何が?」


『いや。妙に静かなんですよ。』


そう言われて耳を澄ませる。


確かに静かや。


風の音しか聞こえへん。


『いつもならもっと騒がしいんですよ。』


『狼人族は声も大きいですし。』


『村の近くまで来たら嫌でも気付きます。』


もう一人も眉をひそめる。


『確かに変ですね。』


嫌な空気が流れた。


やがて森を抜ける。


『ここから先が狼人族の村です。』


護衛の一人が前方を指差した。


『俺達はここまでになります。』


『この辺りでまた交代で待機してるので、終わったらここに来てください。』


「ありがとな。」


『気を付けてくださいね。』


二人と別れ、俺は一人で歩き出した。


しばらく進むと村が見えてくる。


高い石柱で外周を囲われた村。


想像していたより遥かに立派だ。


ペルシャ村と変わらないか少し大きいくらい。


だが。


「誰もおらんなぁ……。」


違和感があった。


見張りがいない。


村の周囲にも人影もない。


護衛達の話では普段なら大量の狼人族が見張っているはずだった。


俺は警戒しながら村へ入る。


重い。


空気が重かった。


人の気配はある。


だが活気がない。


まるで村全体が張り詰めているようだった。


「何があったんや?」


とりあえず情報収集するか。


俺は村の中を歩き始める。


すると。


「おっ!あれが狼人族か!」


向こうの方に一人の狼人族の少女がいた。


やはり獣人の年齢は正確にはわからないが10代か20代だろう。


耳と尻尾がピクリと動く。


「あの。」


俺が声を掛けると少女は爪を剥き出し振り向いた。


『誰!?人間?』


相当警戒しているようだ。


「ちょっと聞きたいんやけど。」


「なんでこんなに人がおらんの?」


すると少女は手を下ろし爪をしまい答えた。


『みんな戦いに行ってるの。』


「戦い?」


『魔獣。』


『グリズリーホーン。』


俺は目を瞬かせた。


グリズリーホーン。


聞き覚えがある。


というより戦った。


転生してすぐの時に。


『本来この辺りには出ない。』


『なのに最近何度か現れてるの。』


『もう何人も怪我してる。』


少女は不安そうに俯いた。


俺は少し考える。


正直、戦闘はしたくない。


だが。


「場所教えてくれる?」


『え?』


「力になれるかわからんけど。」


「グリズリーホーンとは一回戦ったことあるし。」


少女の目が見開かれた。


『本当に?』


「まぁ何とかなるやろ。」


多分。


恐らく。


きっと。


やけどあの時の勝ち方って崖から落としてやしな。


まぁ戦闘集団がこれだけあるしサポートくらいは出来るやろ。


案内された方向へ向かう。


村を抜け。


さらに森を進む。


一時間ほど歩いた頃だった。


「……マジでおった。」


木々の隙間から見えた光景に思わず息を呑む。


数十人の狼人族達。


全員が爪や牙や武器を構えている。


緊張感が異常だった。


そして。


地面には数人の狼人族が倒れていた。


血を流しながら。


「案内ありがとう!」


「危ないから気付かれん内に君は村に戻りな!」


『うん!君も気をつけてね!』


そして狼人族の少女は村へ戻って行った。


「よし。とりあえずサポートやな。」


ピーピピッ。


スキル発動【慧眼】


【グリズリーホーン】

Level:274


種族:熊族

ダンジョンや洞窟を拠点に生活する熊族。

マナに反応して獲物を狩る。

あまり拠点から外には出ない。


――。


一瞬固まった。


えっ……。


俺は言葉を失った。


高い。


高すぎる。


レベルーー274!?


手に負えへんって。


てか見んかったら良かった。


レベル高すぎん?


怖すぎん?


これをガルドと2人で逃げながら崖下に落として倒したん?


そりゃ10くらいサクッとレベル上がるわ。


俺あの時よう生きてたな。


今さら怖なってきた。


戦闘集団の狼人族が束になって戦ってるやつやで。


逃げよかな。


いや。


アカンアカン。


一旦冷静にサポートだけすれば良い。


「まずは回復させなアカンな。」


俺は両手を前方に向ける。


「ヒール!」


すると目の前が光に包まれる。


そしてーー


『あれ!?痛くないぞ!?』


『おっ!治ってる!』


『誰だ!?治してくれたのは!?』


狼人族達が一斉にこちらを見る。


よし。成功や!


「あのー、俺です。」


「実は用があって来たんですが困ってると聞いて……」


『見知らぬ御人だが助かった。』


『この借りは返す。』


そう言ってみんな戦闘に戻っていく。


「さーて。こっからどーするかな。」


ーーLevel:274ーー


それだけがどうしても頭から離れない。


その時だった。


グリズリーホーンが大きく吠えた。


空気が震える。


風が吹き荒れ。


森がざわめく。


「……ん?」


嫌な感覚が背筋を走る。


あいつ、こっち見てへんか?


いや。


正確には俺を見ていると言うか、俺の方向を向いてる。


「ちょい待て。俺の魔力に反応しとんか?」


そういやこんな事も書いてあったよな。


ーーマナに反応して獲物を狩る。ーー


慧眼で見た説明文が頭をよぎる。


まずい。


非常にまずい。


グリズリーホーンは狼人族達の包囲を無視し、ゆっくりとこちらへ身体を向ける。


『おい!こいつの意識が急に逸れたぞ!』


『何をしてる!こっちだこっち!』


狼人族達が慌てて前に出る。


だが魔獣は止まらない。


巨大な角をこちらへ向け、地面を削る。


突進の構え。


「ちょ、ちょーっと待って。」


俺は思わず一歩下がる。


サポートだけのつもりやった。


目立たず回復だけして、あとは戦闘集団に任せる予定やった。


やのに。


「なんで俺が狙われてんねん!」


次の瞬間、グリズリーホーンが地面を蹴った。


轟音。


巨体が一直線に迫る。


逃げ場は――ない。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


無事に初めての交易が成功し、翔斗は次の商談相手である狼人族の村へ向かいます。


しかし村では思わぬ問題が発生しており……。


次回から狼人族編が本格的にスタートです!


面白いと思っていただけたら


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それではまた次回!

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