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しがないただの商人です。~借金1000万オーバーのガールズバーオーナー異世界転生~  作者: 憂記ュゥ


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13/16

異世界マイホームと商売の始まり

その夜。


宴会が終わり、宿に戻った俺は、報奨金の入った革袋を机の上に置き眺めていた。


「……とりあえず、中身確認するか」


口紐をほどき、そのまま机の上へひっくり返す。


ジャラジャラジャラ――


中から転がり出てきたのは、金色、銀色、銅色の硬貨だった。


「おぉ……よくアニメとかで見るやつや!」


「すげぇ……なんか一気に異世界って感じすんな!」


思わずテンションが上がる。


とはいえ、眺めているだけでは始まらない。


まずは数を確認することにした。


「金貨が……一、二、三……八枚」


次に銀貨を十枚ずつ束にして数えていく。


「にー、しー、ろー、はー……おぉ、五十枚か」


そして最後に銅貨。


「銅貨、多いなぁ……」


同じように十枚ずつ束を作りながら数える。


「にー、しー、ろー、はー……」


何度も数え直し、最後の一枚を置いたところで、思わず息を吐いた。


「はぁ……疲れた」


結果は、金貨八枚、銀貨五十枚、銅貨二百枚。


合計、二百五十八枚。


「そりゃ、こんだけ入ってたら重たいわ。」


ただ、問題はここからだった。


「……で、これって結局なんぼなん?」


この世界の金銭感覚が、まったくわからない。


金貨と言われても、銀貨と言われても、それが高いのか安いのか判断できない。


しばらく硬貨を眺めていた俺は、ふと思いついた。


「てか、慧眼で価値わかるんちゃう?」


俺は机の上に並んだ硬貨をじっと見つめる。


ピーピピッ。


ユニークスキル【慧眼】発動。


【金貨】

アルヴェリア王国で広く流通する高額硬貨。

価値:銀貨十枚分。

目安:一般的な村人の一週間分の生活費に相当。


【銀貨】

アルヴェリア王国で広く流通する標準硬貨。

価値:銅貨十枚分。

目安:一般的な定食の一食分に相当。


【銅貨】

アルヴェリア王国で広く流通する小額硬貨。

価値:日常的な買い物に使われる。

目安:パン一つ、果実数個、野菜数個に相当


「いや、円換算ちゃうんかい!」


思わず一人でツッコんでしまった。


ピーピピッ。


〔慧眼の熟練度上昇〕


〔追加項目を獲得〕


ん?


何が見れるんや?


もう一度慧眼を発動させる。


【金貨】

地球価値:一万円相当


【銀貨】

地球価値:千円相当


【銅貨】

地球価値:百円相当


【保有資産】

金貨:八枚〔八万円〕

銀貨:五十枚〔五万円〕

銅貨:二百枚〔二万円〕

地球価値:十五万円相当


「おぉー。ってサラリーマンの初任給か!」


思わずツッコむ。


が冷静に考えてみる。


「一日魔法で橋直してサラリーマンの初任給。」


「それは流石にデカいか。」


「日当十五万ってことやもんな?」


「って多くないか!?」


そして慧眼で見た金貨一枚の目安も思い出した。


「金貨一枚で一週間。」


「ってことは十五週間分か?」


「四週で一ヶ月として……約四ヶ月。」


「いや。ちょい待て。」


「橋一本直しただけで約四ヶ月分の生活費!?」


「しかも家付き!?」


「待て待て待て待て。デカいわ。」


「橋一本サクッと魔法で直して一日で四ヶ月分の生活費。」


「しかも家付き。」


「異世界って全然ブラック企業より待遇ええやん。」


「もちろん死にかけたりもしたけど。」


「てかマヌルなんか家安いみたいな言い方やったなー。」


「いや、普通に考えたら家の方が報奨金より高そうなんやけど……。」


「この世界の価値観どうなってんねん。」


翌朝。


『ほれ、ここじゃ。』


マヌルに案内された先には、一軒の木造家屋が建っていた。


そこはフィアに村案内された時に見た古い家屋だった。


「おぉ……。」


思わず声が漏れる。


近くで見ると思っている以上に、遥かに立派だった。


「これ、ほんまに使ってええん?」


『構わんよ!』


『村のために働いてくれた礼じゃ。』


『使わん家を放っておく方がもったいない。』


「それもそうか。」


「ほな、ありがたく使わせてもらうわ。」


そう言いながら中へ入る。


家具はベッドとデスクと棚がいくつかのみ。


少し物足りないが雨風は防げる。


思っているより中も広く、一人で住むには大きすぎるくらいだった。


今の俺には十分すぎるくらいだ。


さて今から掃除でもしようかと思ったその時だった。


『ところで翔斗よ。』


『村を救ってくれたお主に改めて相談なんじゃが。』


『今から集会所に来てくれんか?』


「またか!」


「今度はなんやねん!」


またも召集される事になった。


集会所にて。


『橋が直ったのは良いが行商人が今日もこないぞ。』


『俺たちはどうすれば良いんだ?』


またも会議が開かれていた。


聞くところによると行商人が来ないようだ。


そりゃそうやろ。


行商人も王国も、橋を勝手に直してるなんか知るわけないんやから。


「あのー。少し良いでしょうか?」


『なんだ!?また貴様か!』


ガルドは連日の問題、会議続きでムシャクシャしているようだ。


『ガルドよ!村の救世主になんて口を聞きよる!』


マヌルが仲裁してくれる。


『申し訳ありません。つい。』


ガルドが深呼吸をし冷静になる。


『それで何か言いたいことがあるんだろ?』


『行ってみろ!』


「王国も行商人も橋を村人側で勝手に直してるなんて知りませんよね?」


「ましてや直せるなんて思ってもない。」


「そりゃ橋が直っても来やしませんよ!」


『確かに。』


『そりゃそうだよな。』


村人達が次々に声を上げた。


『だが報告するにしても王国まで行くとなると帰るまで二日はかかる。』


『警備を手薄にするわけには…』


ガルドが頭を抱える。


「大丈夫ですよ!ちゃんと考えてます!」


俺は得意げに言ってやった。


「最初にこの近くの村はあるか聞いたでしょ?」


『何をするつもりだ!?』


「交易ですよ!」


「そもそも交易するつもりだったんで任してください!」


『しかしあやつらとは険悪な仲なのだ。』


『我々の交易に応じるわけがない。』


「この村と近隣村が交易するんじゃないんです!」


「俺がここの近隣の村と交易するんですよ!」


「それなら村同士で揉めることはないでしょ?」


『それは確かにそうだが。』


『村相手に一個人、ましてや旅人が交易など可能なのか?』


「心配しないで任せてください!」


「必ず成功させてみせますから!」


「どのみち報告には行けないわけだし、確認を待つしかないでしょ?」


「ならただ待つだけじゃなく俺に賭けてください!」


『偉く自信があるようだな。』


『やはり翔斗に相談して良かったわい!』


マヌルが嬉しそうに口を開いた。


『よし!皆の者!翔斗に身を委ねようぞ!』


『翔斗がダメでもそのうち確認にも来よるわ!』


『ガッハッハッ!』


マヌルが笑いながら出ていき会議は幕を閉じた。


その後俺は新居に戻り掃除をしていた。


ドタドタドタドタッ


バターン


勢いよく扉が開く。


『おにぃーちゃん!』


やっぱりフィアだった。


「どうしたんだ?今掃除してるんだけど。」


『お兄ちゃんが村に住むって言ったからフィアがお世話しようと思って!』


「俺は子供か!」


『お兄ちゃんも子供じゃないの?』


はっ、とした。


俺は中身は31歳だが、見た目は14歳だった事を忘れていた。


「おっ…おう。だがフィアより年上だからな?」


『そうだけど一人じゃ大変でしょ?』


『それに村じゃ新人さんだもん!』


「まぁそれはそうだけど。」


『だからフィアがお手伝いするのー!』


「手伝ってくれるのは助かるけど。」


「じゃぁまずは掃除を手伝ってくれるか?」


『まっかせて!私掃除とかは得意だから!』


そう言って一緒に掃除をすることになった。


それにしてもフィアは掃除の手際が良い。


みるみる綺麗になっていった。


数時間後。


『おーわり!』


「思ったより早く片付いた!」


古い空き家とは思えないほど綺麗になった。


「随分見違えたな!」


『でしょでしょー?』


フィアが嬉しそうに尻尾を振っている。


俺は頭を撫で褒めてあげた。


「すごいなぁ!フィア!」


「ありがとな!」


『えへへ』


『次は何するの?』


「俺はこれから近隣の村に行く!」


『なら私もついていくー!』


「フィアはダメ!お留守番!」


『やだやだやだぁー。』


『私も一緒に行くのー!』


『にゃー。』


フィアが不機嫌そうに威嚇してくる。


こう言う時はどうしたもんか。


「違うねん。フィア。」


「俺はこれから村の人のために仕事に行くんよ。」


「どれくらいで戻って来れるかわからんし…」


「やからフィアが俺の家を守ってくれへんか?」


「せっかく綺麗になったのに放置してたらまた汚れてまうやろ?」


『にゃぁ……確かにそうだね。』


少し残念そうだが納得したようだ。


『わかった!じゃぁ毎日私がお掃除して待ってるね!』


『お留守番だからお兄ちゃんのお家にいるからね!』


「おっ、おう。」


どうやら俺がいない間は俺の家で寝泊まりするらしい。


まぁ納得してくれたからこれくらいは許してやろう。


「わかったわかった!」


「ほな荷物まとめたら行ってくるし留守番頼むな!」


『はぁーい!行ってらっしゃい!』


こうして俺は適当に荷物をまとめて近隣村に向かう事にした。


「まずは調味料の問題やな。」


「よし。北の鳥人族の村に行くことにしよ。」


『待て。』


向かおうとしたところでガルドに呼び止められた。


『今から向かうのか?』


「そうやけど。」


『ならこいつらを連れて行け。』


そこにはグリズリーホーンとの戦闘で一緒だった護衛隊の男女二人がいた。


『よろしくお願いします!』


二人が声を揃えて頭を下げた。


「いや、別にええって。」


「北向いて歩いてたらそのうち着くやろ?」


『魔獣が出たら一人では危ない。』


「けど今から向かう村とは仲悪いんやろ?」


『あぁ。だから村の手前まで護衛を連れていけ。』


『鳥人村の近くで日替わりで野営を焚いておく。』


『帰りも心配はいらんからな。』


『村の恩人に何かあっては困る。』


「恩人か!恩人やもんな!」


ニヤニヤしながらガルドに近づく。


「やっぱり俺のこと見直したんやんかー!」


『貴様はすぐ調子に乗る。』


『それをやめろ!』


そんな会話をしながら村を旅立つのであった。


この時の俺はまだ知らなかった。


橋を直すよりも。


魔物と戦うよりも。


この世界で最も厄介なのが、


商人だということを。




そしてこの鳥人族との出会いが、

後に世界を巻き込む商売の始まりになることを。

以上が第13話でした!


ここまで読んでいただきありがとうございます!


橋を直して終わり……ではなく、ここからが翔斗の本領発揮です。


戦闘より商売。


剣より交渉。


そして魔王より厄介かもしれない商人達。


次回から鳥人族の村へ向かいますので、ぜひお付き合いください!

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