第十話 劫火
-2ヶ月目
「作戦を説明する。」
「接近するベータは二型が迎撃する。火炎放射による面制圧だ。」
「死角には、地雷を敷設して補う。」
「しかし、二型の連続射撃と地雷の数には限界がある。」
「そこで、諸君らは一型と三型で遊撃してもらう。」
「我々の後ろには250人の民間人がいる!我々が鋼鉄の壁となり、敵を防ぎ止めるのだ!」
現在
「オワァ?!なになに?!」
目が痛い。耳鳴りもする。何が起きてるんだ?!外で!
「アッ!...ッック!」
角に! 足が! ……痛っ!
とにかく外に――
「ガッ……!」
今度は頭をぶつけた。痛い!
平衡感覚と視界を失って、少し赤くなったおでこを抑えながら窓の外を見る。
「なんだよ...これ...」
窓一枚先から地平線のかなたまで燃えている。照明弾も打ちあがっていて、まるで夜に朝が来たみたいだ。何がどうしてこうなった!
「あ、あれは...」
劫火の中心に何か居る。二門の砲と切られた無限軌道に、何重にも張り付けられた装甲板が目を引く。見たことがある。
「二型だ!花火に使ったやつだ!」
あれは単調な動きしかできないはずだが、なんでこう燃やして...そうだ、ナイトメアが来てるんだった。
廃墟の向こうか走ってくる死神達。見た目は多種多様で、動物型もいれば、図形のような抽象的な見た目もいる。まさに百鬼夜行だ。
地上に大きな影が差す。空を見上げ、正体を確かめる。そこには吸い込まれてしまいそうになるほど、黒く巨大な羽を持つ冒涜的な何かが空を舞っている。羽には、複数の目玉のような模様が入っており、時折こちらを覗いているようにも感じる。
「なんだよ...これ...」
ニ型は気づいていない。あんなにも大きいのに何で。それに、地上のナイトメアが、わずかに隆起した地形を利用して近づいてきている。ある程度近づかれたなら、強めの一発で地形ごと貫いているけど...。
「あんなに撃って大丈夫かな...」
突然、何かがつぶれるような音がし始めた。耐えられなかったのだ。
「_過負荷状態_緊急冷却_」
耐えきれなくなった銃身は真っ赤に染まり、蜃気楼が昇っている。下側に付いている予備の銃身ごと一回転させることで切り替える。次の瞬間、鈍い音と共に銃身が輪切りにされる。それと同時に、隠れていた敵が一気に動き出した。
「ずるい!ちょっとくらい待ってくれてもいいじゃないか!」
「...いや、地団駄を踏み文句を言ったって意味はないか。見ているだけじゃなくてできることをしないと。」
まずは逃げる準備だ。必要最低限の道具と、ニコを運ぶために一型か三型を使おう。
「...一型と三型が無いぞ?」
外が爆発する。今までのと比べるとあまりにも小さい。もしかして?
「あんなところに!」
ニ型を守っている!手りゅう弾を投げ、戦線を首の皮一枚でつなげてる!だが、火力があまりにも足りない。もし、両方を失ったら逃げられなくなっちゃう。
「どっちか来て!お願い!どっちか来てよ!」
駄目だ、爆音で声が届かない。
「ニコと一緒に逃げないと!ニコ!あれ...ニコが...いない?」
「ねえねえ!た、い、せ、つ、な!話があるよー」
誰だろう......わからないけど、とてもやさしそうだ。どこか懐かしい。
「この作戦でいろんな人が死んじゃうかもしれないと知ったら...どうする?」
うーん......頑張って死なないようにする!
「......そ、う、だ、ね!それが一番だね!じゃあもう一つ質問です!もしいろんな人たちを死なないようにするために、自分の命が必要だったら?」
死なない方法を探す!絶対だったら...自分の命を使おうかな。
「うーん...私もそうだね!お揃い!」
「だからね......私が死んだら、琴音をよろしくね。」
え?
「あなたも大切だから死んじゃだめだよ。」
「じゃあね...行ってらっしゃい!」
玄関に板を張り、椅子を掛けてバリケードを作る。どれだけ持つだろうか。
「診断完了。ニ型の火器管制装置並びに、銃身に異常あり。戦闘の継続は困難です。」
「そんなのわかってる!逃げ道を探すんだよ!」
「地形データによると、ベータの進行ルートの反対方向は海です。エラー、衛星通信ができません。」
うえだろうね。もしかして空のナイトメアが通信だったりを阻害しているのかな?そうじゃなくても上見られてるか逃げようがない。
「どうすれば...うん?地震か?最悪。あれ?ナイトメアが離れてくぞ?」
そこでようやく気付く。震源地はここだ。そしてこの揺れは自然のものじゃない。だんだん外が明るくなってゆく。それが見えた時、ようやく自身の正体に気づく。
「空が...落ちてくる!何が起きているんだ!」
「識別確認。06」
風穴があいた空のナイトメアと、上りゆく朝日を背後に、赤い女性になったニコが立っていた。
「琴音...今、助けるよ。」
その瞳は、真っ赤に燃える。
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